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おすすめできる本

2018年に読んでおくべきおすすめ本10冊

更新日:

 

何かおすすめの本教えてください。

 

私、読書会を定期的にやらせていただいているのですが、読書会をやっていることもありましてよくおすすめの本を聞かれます。

その時、色々と紹介をするのですが、この度一本記事を書くことにしました。

 

今日は本好きな方向けに2018年に読むべきおすすめの本を紹介できればと思います。

前置きをしますと、「稼ぐ力」「手帳のうまい使い方」「本を速く読む力」など即効性のある本は一切ありません。

自己啓発書やビジネス書しか断固として読まないという方は別のサイトで紹介されているものをお読みいただければと思います。

 

この記事内では、下記の3つのジャンルからおすすめの本を紹介いたします。

  1. 政治(3冊)
  2. 経済(3冊)
  3. 思想(4冊)

 

一見即効性のないように見えるジャンル分けかもしれませんが、我々の思考の根底を変え物事の認識をひっくり返すほどの力を持っている本ばかりです。

 

例えば、私の紹介する政治についての本は政治についての見識を深められるだけではありません。

我々の日常の価値判断を大幅に変えてくれる「真の自己啓発本」となりえます。

 

ですので、とにかく一度手に取っていただければ幸いです。

 

 

 

■目次

政治
エドマンド・バーク『フランス革命の省察』
シャルル・ド・モンテスキュー『法の精神』
アレクシ・ド・トックビル『アメリカのデモクラシー』

経済
ジョン・メイナード・ケインズ『雇用、利子及び貨幣の一般理論』
カール・ポラニー『大転換』
マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

思想
ハンナ・アレント『人間の条件』
ギルバート・チェスタートン『正統とは何か』
マイケル・ポラニー『暗黙知の次元』

■政治

自己啓発本やビジネス書しか普段読まないという方々からするとおそらく「政治」というジャンルに分類される本ほど縁遠いものはないかもしれません。

 

それはアーレントが述べたように「政治」が我々から遠く離れたところに行ってしまったからかもしれません。

 

ただ、政治とは「価値判断をする職業」と聞くと馴染みがわきませんか?

 

決められた方程式がない中である方向に行くべきか行くべきでないかということを政治では常に求められます。

つまり「優れた」と言われる政治に関する本というのは我々に「真っ当な価値判断」をする導きをもたらしてくれます。

 

価値判断をしないで生きている人などいません。

それは例えばこの「本を読む」という行為においても言えることです。

 

「どの本がおすすめなのかなと考えること」これ自体も価値判断です。

 

 

個人的には「人生で成功したい」といった形で本を読み漁っている人ほど政治に関する本を読んでいただきたいところです。

タイトルだけ見ると惹かれないかもしれませんが、中身は本物です。

 

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■エドマンド・バーク『フランス革命の省察』

「いかにもタイトルからして読む気が起こらない」という感じでしょうか。

まあ待ってください。2018年にぜひ読んでいただきたいおすすめの本であることを私は撤回しません。

 

このエドマンド・バークという人は何がすごいのかを一言で言います。

バークは、市民が起こしたフランス革命で王朝を倒し歓喜に湧いている民衆を見ただけで、この革命がデタラメであり、いずれ恐怖政治につながり最終的には軍事独裁に繋がると予想した人です。

つまり、ロベスピエールの登場とナポレオンの登場を予想していたわけです。

 

 

こういった先見性から多くの政治を学ぶ人から愛読されています。

では、彼はなぜそこまで見通せたか?

 

ここが今の我々にとって大いに学べる箇所がありおすすめの本として推薦できるポイントです。

バークの思想の根幹でもあるのですが、「現状をとにかく否定する姿勢からはろくなものが生まれない」ということ彼は貫徹しました。

にもかかわらず諸君は、あたかもフランスがずっと未開の野蛮国であったかのように、全てを新しく仕切り直した。自国のあり方を全面的に否定して改革に走る、これは出発点からして間違っている。元手もないのに商売を始めるようなものではないか。

『フランス革命の省察』エドマンド・バーク(2011)PHP研究所

「日本はだめだアジアに打って出ろ!」

「日本は終身雇用を守っているからだめなんだ!この既得権益を打破しなければ!」

「構造改革!規制緩和!」

 

昨今は「破壊的イノベーション」だの「成果主義の徹底」だのいろいろ「変化」を起こそうとしている連中がたくさんいます。

しかし、彼らの言っていることが本当に我々を幸福に導くものなのか疑いましょう。

 

現状に恩を知らない人間から出てくる発想にロクなものはないということをバークから学んでいれば惑わされないでしょう。

詳細はぜひ手に取ってみてください。

 

 

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■シャルル・ド・モンテスキュー『法の精神』

モンテスキューというと教科書でも取り上げられるほどに『法の精神』は有名です。

あらかじめ、タイトルからも誤ったイメージを持たれている方も多いので少しだけ補足します。

モンテスキューは『法の精神』において「実定法」について語ったのではありません。

彼の言う「法」というのはもっと広い意味で使っています。

 

その上でこの著書を2018年に読む意義を少しだけ書きます。

彼は語るのですが、我々の行動原理の多くはどのようにして決まるかを下記のように述べます。

 それらは、国土の自然条件、気候の寒冷、暑熱、温暖、国土の地味、位置、大きさ、民族の生活様式、・・・と関連したものでなければならない。それらは、政体の許容しうる自由の度合い、住民の宗教、その性向、富、数、交渉、風俗、習慣と見合うものでなければならない。最後に法律は、それらの相互間の関係を持つ。法律は、それら自体の起源、立法者の意図、それが制定された基礎となる事物の秩序と関係している。法は、まさにこれらすべての観点において考察されねばならない。

『法の精神』シャルル・ド・モンテスキュー

「多すぎる」というのが率直な感想ですよね笑

実定法すらも我々の伝統や慣習におうているところにあると彼は述べています。

 

ただ、「多すぎる」という感想だけで終わらせてはいけません。

何気なく通り過ぎましたが、ここには自己啓発書やビジネス書が1万冊束になっても勝てないほどの真理が書かれています。

 

これからの時代をより賢明に生きていきたいのであればまずは我々がすでに生まれながらにして負うている伝統や文化を学べとということが書かれているんです。

 

 

我々の行動する法則は「実定法」だけではなく、上のような習慣が作り出したものがほとんどです。

その我々が無意識にどう行動するのかについての理解を深める重要性をこの本は教えてくれます。

 

他にも読みどころも多数ありおすすめですのでぜひ手に取ってみてください。

 

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■アレクシ・ド・トックビル『アメリカのデモクラシー』

続いてはこれまたタイトル的に興味をそそられないかもしれません。

しかし、2018年にぜひ読んでいただきたい本なのです。

 

この『アメリカのデモクラシー』というのはトックビルが20代にして書き上げた傑作です。

彼もまた、バーク同様預言者でした。

 

この著書の中でもあるのですが、トックビルはまだイギリス全盛の時代にアメリカに行っただけで「これからはアメリカとロシアによる2強体制になる」と予測したのです。

 

他にも彼が警戒したことが今の世の中で広く現れているのです。

ここでは、民主主義が進み境遇が平等となるにつれ起こる社会の腐敗について取り上げます。

平等は世界にとても良いことをもたらすが、後に示すように、人々に極めて危険な本能を吹き込むことは認識しなければならない。それは人間を互いに孤立させ、誰もが自分のことしか考えないようにさせる。

それはまた人々の心を度はずれなほど物質的享楽に向かわせる。

『アメリカのデモクラシー第二巻(上)』アレクシ・ド・トックビル(2008)岩波文庫

彼は境遇の平等は社会の分断と個人の孤立を生み出すと述べます。

そして、その環境下では誰もが自分のことしか考えなくなるとのことです。

 

この著書を読んでいて思い浮かぶのが大前研一です。

彼は現代のビジネス書で主流的な考え方を普及させ未だに人気は根強いものがあります。

 

しかし彼の著書を五冊くらい読みましたが、書いていることは「日本はダメだ世界に出て行け」「自分で稼ぐ力をつけ世界で活躍できる人材になれ」他いろいろあります。

 

 

ただ、彼の著書を読んでいて感じるのは徹底した「個人主義」で、悪く言えば自分本位です。

自分がまず生き残れ、そしてダメなやつは切り捨てていけということです。

 

何気なく通り過ぎてますが「日本がダメだから海外で稼げ」って他の国なら袋叩きですよ笑

朝日新聞なんかよりも本当の反日だと私は考えています。

 

ただ、残念ながらいわゆるこのネオリベ思想はビジネス書や自己啓発書を読んでいくと非常に主流的です。

ここでは他には名前を挙げますが、彼らからすると「共助」などはダサくて、「弱者救済」というと「左翼だ!」となるんでしょう。

 

できれば一人でも多くの人にこのトックビルを読んでいただきたいそんな思いでおすすめさせていただきます。

(私が話しているところは『アメリカのデモクラシー第二巻(上)』です。)

 

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■経済

経済について書かれた本というのはたくさんあります。

「稼ぐ力」をつけるためにビジネス書を多数読んでいる人もいるでしょう。

 

しかしながら、あなたの読んでいる経済に関する本は偏っていませんか?

ここで選書した3冊は、いわゆる「主流派経済学」へ何らかの疑義を投げたものばかりです。

 

 

おそらく今正しいと思っていることや素晴らしいと思っていることが反転するかもしれません。

そして、今悪いと思っているものが逆に良いものであると感じるかもしれません。

 

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■ジョン・メイナード・ケインズ『雇用、利子及び貨幣の一般理論』

多くの人に経済学において有名な一冊をあげてくださいと言ったときにマルクスの『資本論』とのちに紹介するウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』に並んで有名な一冊です。

 

昨今「デフレ脱却」だの「インフレターゲット」だの「異次元の金融緩和」だのと政治家が騒いでいますよね。

これほとんどケインズから拾ってきている理論なのです。

 

そういった意味で、昨今の経済政策を知る意味でまずは読んでみるのもおすすめの一冊です。

ただ、ケインズの偉大さは他にもあります。

 

彼のものの見方です。それを学ぶと今現在良いとされているもののおかしさが見えてきます。

では彼は何を批判したのかというと「自由主義」ですね。

 

「自由主義」というのは国によっても解釈が異なりますが、ここでは、「できるだけ政府は介入せず、好きにやらせた方が社会の発展に寄与する」という理解をしていただけると幸いです。

 

これはビジネスリーダーと呼ばれる人々に主流的な考え方で「とにかく政治が介入すると効率が悪いし既得権益だらけになる。だから放っておくべき」と考えている人は非常に多いのです。先ほど挙げた大前研一だけでなく、いわゆるマッキンゼー出身の方などはほとんどこの考えと言って良いでしょう。

 

 

そういう人がビジネスマンのオピニオンリーダーであるという現代社会を踏まえると彼らが仮に間違っていた場合、多くの人が間違いを犯すことになります。

ケインズは何が言いたかったのかというと需給曲線のような「理論」はしばしば現実社会においては成り立たないということです。

 

現実の個々の局面に応じて細やかに政府が整備をしなければ市場は混乱を避けられないと考えたわけです。

理論は現実で起こらないことをしばしば平然と言ってしまうという一例は下記を上げれば十分でしょう。

にもかかわらず、実質賃金を決定すると考えられているのはこのようにして決まる貨幣賃金なのである。こうして古典は理論は、労働者はいつでも自由に実質賃金を切り下げることができ、そうするためには貨幣賃金の切り下げに応じるだけでいい、と想定していることになる。実質賃金は労働の限界不効用と均等になる傾向を持つという公準の裏には、労働者は労働の対価である実質賃金を・・・自らの手で決定しうる立場にあるという想定が潜んでいるのは明白である。

かいつまんで言えば、伝統的理論は、企業車と労働者との賃金交渉が実質賃金を決定する、と主張している。

『雇用、利子及び貨幣の一般理論』ジョン・メイナード・ケインズ(2008)

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■カール・ポラニー『大転換』

続いて紹介するカールポラニーの『大転換』もケインズと趣は似ています。

 

現在ビジネス書などで当たり前のように述べられていることが現実にはありえないことであったり、社会を荒廃させるものであるということを書いている本です。

 

もちろんケインズもポラニーも批判的に読んでもらえればと思いますが、私が彼らの著書をおすすめするのは「現実を見ているから」なんです。理論を愛好するいわゆる「頭のいい人」がないがしろにしていることを彼らはやっていたのです。

 

ポラニーもケインズも読んでいるとわかるのですが、経済については我々一般人の方が大学の偉い先生やオピニオンリーダーなんかよりわかっていると暗に言っています。

実際このような論法こそが、現在残された経済的自由主義の最後の砦である。自由主義の弁護論者は、手を替え品を替えて次のように繰り返す。曰く、自由主義の批判者が主張する制作さえ行われなければ、自由主義はうまくいっていただろう。あるいは、競争システムや自己調整的市場ではなく、そうしたシステムに対する妨害や市場への干渉が我々の時代の不幸をもたらすのである、と。

『大転換』カール・ポラニー(2009)東洋経済新報社

ポラニーを読むことで、現在日本で「アジアにうって出ろ」だの「日本人は一社で勤め上げるという発想を捨てろ」だのと言ったものがそれほど考えられたものではないということを知れるかもしれません。

2018年必読です。

 

 

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■マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

経済本最後が世界的な名著でもあるウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』です。

こちらの本は一言で概要を述べると、資本主義という営利を追求する世界において実は大きな影響を与えているのは宗教ではないか?という問題提起をしている本です。

禁欲的で信仰に熱心であるということ、他方の資本主義的営利生活に携わるということと、この両者は決して対立するものなどではなくて、むしろ逆に、相互に内面的な親和関係にあると考えるべきではないか、と。

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』マックス・ウェーバー(1989)

この本は一見するとプロテスタント(キリスト教の一派)だから日本人には関係がないという風になるのですが、学べることが幾つかあります。

 

一つが、「禁欲の精神」を念頭に置くプロテスタンティズムは日本の「武士道」をはじめとした考えと極めて親和性が高いということですね。

そして、もう一つがこれまたこれまでと毛色が似ていますが頭のいい人が語る経済理論は疑ってかかるべしということです。

例えば、下記の需給曲線は理論家が愛好していますが、本当に人間の経済活動をこの曲線だけで説明できるでしょうか。

 

この本に当てはめて言えば、プロテスタントの精神を持った人間を考慮しているでしょうか?

絶対ありえないでしょう。

この曲線は「人間は合理的な行動をする」ということを前提に作られているのですが、そんな人間いません。

 

だけど頭の良い人がいうと正しく感じるものです。

ウェバーの本を読んでバカになりましょう笑

 

 

 

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■思想

なぜ思想に関する書物をあげるかを少しだけここでは前置きします。

まずはすでにご紹介しましたジョン・メイナード・ケインズの『雇用、利子及び貨幣の一般理論』の最後の部分を引用します。

経済学者や政治哲学者の思想は、それが正しい場合にも間違っている場合にも、一般に考えられているよりもはるかに強力である。事実、世界を支配するものはそれ以外にはないのである。どのような知的影響とも無縁であると自ら信じている実際家たちも、過去のある経済学者の奴隷であるのが普通である。権力の座にあって天声を聞くと称する狂人たちも、数年前のある三文学者から彼らの気違い染みた考えを引き出しているのである。私は、既得権益の力は思想の漸次的な浸透に比べて著しく誇張されていると思う。もちろん、思想の浸透は直ちにではなく、ある時間をおいた後に行われるものである。なぜなら、経済哲学および政治哲学の分野では、二五歳ないし三十歳以後になって新しい理論の影響を受ける人は多くはなく、したがって官僚や政治家やさらには煽動家でさえも、現在の事態に適用する思想はおそらく最新のものではないからである。しかし、遅かれ早かれ、良かれ悪しかれ危険なものは、既得権益ではなくて思想である。

『雇用、利子及び貨幣の一般理論』ジョン・メイナード・ケインズ(2008)

 

平たくいうのは、何にも増して我々の行動をコントロールしているのは「思想」だということのようです。

これは政治と経済のおすすめの本を紹介したところでも一貫して述べてきました。

 

ですから、「思想」をいろんな形で学ぶことで、我々の行動の可能性は広がるのです。

今は自由なように見えてとても窮屈な認識をしているかもしれません。

 

思想を変えたり、思想を学ぶことで我々の行動は大いに変わるのです。

最後に2018年におすすめの三冊の思想書を紹介します。

 

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■ハンナ・アレント『人間の条件』

ハンナ・アレントというと『全体主義の起源』が有名ですが、それと並んで有名なのがこの『人間の条件』です。

この本は資本主義社会のアンチテーゼから生まれた本といっても良いものなのですが、「人生において大切なものとは何か」を考えながら読んでみるのがおすすめです。

 

あなたにとって価値のあるものとはなんですか?と聞いた時、なんと答えますか?

  • 時間?
  • 家族?
  • 彼女?
  • 友達?

 

いろいろあると思います。

しかしながら、日々、資本主義社会で生きていく中で我々の価値観は狂わされているとアーレントは暗に伝えています。

平たく言えば、「価値」あるものイコール「金になるもの」「金になる行為」となってきているのです。

 

日本人は元来「金だ金だ」という人間を軽蔑する慣習がありますが、実態としてはそのような考え方をしている人は少なくありません。

これは別に「お金を一切稼ぐな」ということではありません。

二項対立的に考えるのは良くありません。バランスです。

 

少し現代社会は金の話に寄りすぎです。

ご共感頂けたのであれば2018年はぜひこの『人間の条件』を読んでいただき思想を少し修正してみてはどうでしょうか。

近代において労働が上位に立った理由は、まさに労働の「生産性」にあったからである。

その上、スミスやマルクスも、非生産的労働は寄生的なものであり、実際上は一週の労働の歪曲に過ぎず、世界を富ませないから、この非生産的労働という名称には全く価値がないとして、それを軽蔑していた。

『人間の条件』ハンナ・アレント(1994)

 

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■ギルバート・チェスタートン『正統とは何か』

続いてはチェスタートンです。

私は詳しくないのですが、「ブラウン神父シリーズ」で有名の方のようです。

ただ、私が2018年におすすめしたい本は『正統とは何か』という本です。

 

この本は幾つかの短編からチェスタートンの思想が学べるのですが、彼は著書の中で何を述べたか。

まず一つは、ここまで述べてきたような「理論」「理性」への過度な信仰をする現代人への警告です。

われわれはすでに、狂人の最大の特徴が何であるかを見た。無限の理性と偏狭な常識との結合である。ところがこの特徴は、気違い病院の患者の間だけではなく、先生の間にもかなり広がっているように見えてしようがないのだ。

『正統とは何か』ギルバート・チェスタートン(2009)春秋社

 

そして、もう一つが理性が作り出した変な常識にはまるくらいなら長らく親しまれてきた宗教に裏打ちされた「理性」を行使すべきだと彼は述べるのです。

宗教が滅べば、理性もまた滅ぶ、どちらも共に、同じ根源の権威に属するものであるからだ。・・・そして、神によって与えられた権威を破壊することによって、われわれは人間の権威という観念まであらかた破壊してしまったのだ。

『正統とは何か』ギルバート・チェスタートン(2009)春秋社

 

彼ははたから見ると宗教にはまっている人なのですが、彼の言い分を聞けば、「何も信じていない」と思っているやつほど一番やばい人間だということです。

 

信じている宗教がないと感じている日本人ほどおすすめの本なのかもしれません。

 

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■マイケル・ポラニー『暗黙知の次元』

長らく描いてきました2018年に読むべきおすすめの本ですが最後に一冊です。

最後は既出のカールポラニーの兄弟であるマイケルポラニーの『暗黙知の次元』です。

ここまでくればこの本の概要は言わずともわかるかもしれませんが、現代人の物事のとらえ方への警鐘です。

 

そして、我々を暗黙の上で縛っているものをとらえなければ大きな過ちを犯すと彼は述べているのです。

我々を暗黙で支配する主流的な考えが近代が生み出した「合理主義」です。

科学的合理主義は最初に宗教的束縛を打ち砕き、次には道徳的信条の論理的根拠を問いただした。そうすることによって、科学的合理主義が道徳的信条が傷つけてきた話は繰り返し語られている。しかしそうした月並みな説明では、現代の精神が陥っている状況はわからないだろう。

 確かに啓蒙主義は教会の権威を弱体化させ、近代実証主義はすべての超越的価値の正当性を否定してきた。しかし私は、厳密な科学的認識という理念が道徳的信条への信頼を失墜させたとしても、そのことだけではそうした信条が深く傷つけられることはなかったろうと思う。科学的懐疑主義(=無神論)の影響があり、近代人をそれと正反対の方向におし流す熱狂があり、その両者が結合して初めて、近代精神の自己破壊的傾向が現れたのである。道徳的進歩を求める新しい情熱が近代の科学的懐疑主義と一体化されて初めて、近代精神の典型的状況が出現したのである。

『暗黙知の次元』マイケル・ポラニー(2003)ちくま学芸文庫

既出の経済学しかり、我々の価値判断しかり、近代の生み出した功利主義のカテゴリーに無意識に誘導されています。

しかしながら、その暗黙知を分化して考えなくなってきているが故に「アジアに売って出ろ」「英語を勉強しなきゃ」みたいな短絡的な発想になってしまうのです。

 

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以上長々といろいろ書いてきました。

「お金の稼ぎ方がわかる本」「グローバル時代に生きていける本」「人生設計に役立つ本」

 

こういったものを期待していた方からするとストレスフルなものだったかもしれません。

しかし、仮にそのように即効性ばかりを求めているのであればそれこそ合理主義の悪徳に捕まっています。

 

時間をかけて天才と呼ばれる人の考え方を徹底的に学んでみませんか?

このブログに書いたことだけで満足せず、絶対に実際に読むことをおすすめします。

 

何十年何百年と「天才だ」と言われて読み継がれてきた人の本を読まずに生きてくことの方がグローバル時代で「リスク」ではないでしょうか?

 

 

 

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