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【決定版】20代でぜーったいに読むべきおすすめの本

更新日:

「20代は本を読みなさい!」

 

そう人生の先輩なる人から言われることが少なくないらしいですね。

私もそういう人に出会ったことがあります。

 

 

そこで、「何を読むのがいいのか?」と聞いた時にどういう本が返答としてかえってくるか調べてみました。

 

下記のような本がかえってくるそうです。

  • 金持ち父さん貧乏父さん
  • 7つの習慣
  • 夢をかなえるゾウ
  • 永遠のゼロ
  • ユダヤ人大富豪のおすすめ
  • 自分の時間を取り戻そう

 

こういう本が20代で読むべきおすすめの本らしいです。

驚いたことにネット上でもこういう本をおすすめの本としてあげているブログが多くある一定の合意形成ができているのかもしれません。

 

私も実は本を読みたてで右も左も分からない頃勧められて上の本を読みました。

 

 

その時は「みんなおすすめって言ってるしすごいんだろう」と思ったものですが、最近いろんな本を読むうちに思ったのが「そんなに持ち上げる本なのか?」「20代でなんとしても読まないと後悔するだろうか?」ということです。(めっちゃ上から目線に思われるかもしれませんが、そう思ったものは仕方がありません。)

 

 

 

別にこれらの本を批判したいというわけではないのですが、繰り返しになりますが、20代で絶対に読むべき本とまで正直思いませんでした。

 

なんというか一言で言いますと「何度も読もう」とか「考えが180度転換した」みたいな衝撃はなかったんですよね。

 

別にちょっと読んでみなよ的な感じで勧められるならいいのですが、「20代で絶対読んだほうがいい」と厳かに言われるものですからどんなものだと構えた私としては拍子抜けなわけです。

 

今日はですねそんな上から目線でインテリぶりたい私が、まだ20代の分際で「偉そうに」20代におすすめの本をご紹介したいなと思います。少なくとも私には電流が走りました。

 

■目次

 ▶ソースタイン・ヴェヴレン『有閑階級の理論』

 ▶サミュエル・テイラー・コールリッジ『方法の原理』

 ▶ハンナ・アーレント『全体主義の起源』

 ▶フリードリヒ・ハイエク『隷属への道』

 ▶幸徳秋水『二十世紀の怪物 帝国主義』

 ▶福田恆存『保守とは何か』

 ▶福沢諭吉『学問のすゝめ』

 ▶岡倉天心『茶の心』

 

■ソースタイン・ヴェヴレン『有閑階級の理論』

ウェヴレンは私も最近まで知らなかったのですが、社会学者として有名な方らしくちょくちょく有名な論文でも引用されている方みたいです。

 

まあそれはさておきこの『有閑階級の理論』は20代に「ぜーったいに」おすすめの本なのです。

特に『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んで感銘を受けているあたりの「ちょっと意識高い系」「起業したい系」「金持ち父さんになりたい系」あたりにはもってこいです。

 

一言で言えば「金持ち父さん」みたいな(ごまかしてますが畢竟労働者を馬鹿にしているような)生き方をなぜ「羨ましい生き方」「人生を謳歌している生き方」と世間が考えるようになったのかについて歴史をひもときながら一つの仮説を投げかけているのです。

 

ちなみにタイトルにある「有閑階級」というのはいわゆる労働者階級とは異なる貴族階級のようなもので生きるために働くいわゆる「労働」をなんらかの形で逃れていた人たちです。(金持ち父さんに近い。)

ヴェヴレンはこの「有閑階級」の価値観を分析し、そして暗に批判的な考察を加えてくれています。

 

一読すると価値観が変りますほんと。

有閑階級という制度は、ある職業は尊敬に値し、ある職業は尊敬に値しないという、初期の職業間の差別化から派生したものである。

『有閑階級の理論』ソースタイン・ヴェヴレン(2015)講談社

 

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サミュエル・テイラー・コールリッジ『方法の原理』

大学で英文学を学ぶと出会うのがこのサミュエル・テイラー・コールリッジです。

それ以外の人はお初かもしれません。

 

ただ、コールリッジは英文学として有名な一方で思想家としても優れた業績を残しています。

その一冊がこの『方法の原理』です。本当に20代で読んでおきたいおすすめの本です。

 

コールリッジの思想が現代において重要な理由は、ショーン・ケイがその本当にいい例でしたが、肩書きさえ付いていれば日本人はころっと騙されてしまう状況だからです。

 

元マッキンゼー、〇〇会社代表取締役、〇〇大学MBA取得、東京大学法学部卒、、、、

 

「何を言っているか」より「誰が言っているか」で今ほど流される時代はありません。

そういった時代の中でコールリッジを読むことは非常に重要かもしれません。

 

彼は、物事を価値判断するにあたって「精神のレベル」で徹底的に納得しなければならないと述べました。

しかしおよそ学問においては、部分と部分の相互の関係、そして部分と全体の関係が、諸部分の観察から抽象化されたり一般化されたりしたものではなく、精神の中に起源を持つ真理によってあらかじめ定められたものであるならば、・・・そこに法則が存在すると私たちは断言するのです。

『方法の原理』サミュエル・テイラー・コールリッジ(2004)法政大学出版局

 

「この数字があるからこうだ。〇〇大学の教授も言っている」と言われたら「ん?この数字はどういう前提でできているのだろう。この大学の教授はどういう立ち位置の人だろう」などと徹底的に疑って書かれということです。

 

いうまでもないかもしれませんが、この結論に至るコールリッジの紐解き方が秀逸なので結論だけ読んで理解した気にはなっていただきたくないところです。

 

 

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ハンナ・アーレント『全体主義の起源』

この著書に付けられたキャッチコピーが「生まれながらの古典」です。

それくらい出た当初から世界を席巻し、今も世界で40カ国以上で翻訳されている名著中の名著です。

 

それだけでも20代が読むべきおすすめの本と言って良いのですが、もちろん中身が素晴らしいの一言なのです。

 

アーレントは「全体主義」という「すべての人が何か一つの事に従うべき」という末恐ろしい現象を世の中一般に周知した人物です。

 

この「全体主義」と云うとナチスだったりスターリンがやはり上がってくるわけですが、それを「昔話」として考え、今はもう起こらないものであるかのように読んではいけません。

今まさに目の前で起きている事だらけなのです笑

この本で書かれている全体主義までの準備段階は現在の日本で誇張抜きで散見される事態でして、読む事でこれからの陰鬱な未来を予感させられざるをえないでしょう。ナツィがすでにずっと前から知っていたことの正しさがわかる。それは、犯罪を行おうと決心しているときには、最大の、最も信じがたい規模でそれを演出するのが得策だということだ。そうすれば、一国の法制の中で規定されているあらゆる刑罰が、不十分な、問題にもならぬものになってしまうからだけではない。犯した罪の途方もなさそのもののために、犠牲者ー彼らの申立真実性は人間の常識を侮辱するーよりもむしろ殺人者ー彼らは偽りの言葉で自分の無罪を誓うーの言葉の方が信じられてしまうという結果になることが目に見えているからだ。

『全体主義の起源3』ハンナ・アーレント(1994)みすず書房

 

全3巻ありますが、まずは3巻目だけを読んでみる事をおすすめします。

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■フリードリヒ・ハイエク『隷属への道』

昨今の知識階層というのは「客観的」と云う言葉を愛好します。

そして、その言葉を使いつつ独善的な理論を展開すると云うのがおきまりの流れです。

 

さてこのフリードリヒ・ハイエクの著書を私が20代の方々におすすめするのは「今の知識人の中心的思想」を生み出した人だからです。

 

「アジアに打って出ろ」

「日本はこれからもう成長しないから海外で稼げるようになれ」

「政府は規制緩和をしてくれれば日本は活性化する」

「道州制を導入して地方を活性化せよ」

「外資規制を緩和して競争を促せ」

 

ハイエクはネオコンと呼ばれるグローバリズム万歳路線の礎でもあり、とにかく国家の干渉を0に近づけ個人がやりたいようにできるだけするのが大事だと考えました。

 

ただ、これを世界的に実践した結果出来上がったのが今のような格差社会です。

誕生背景を考えると多分に同情できるのですが、それはともかくこの思想を学ぶ事で今のビジネス書を書いている人たちのほとんどがこの思想のカルトにハマっている事がわかるでしょう。

 ここで重要なのは、この主張がもっともらしく聞こえるように、自由という言葉の意味を社会主義者が巧妙に変えたことである。政治的自由を追い求めた偉大な先人にとって、この言葉が意味するのは圧政からの自由であり、他人による恣意的な権力行使からの自由であり、上位者の命令に従う以外の選択肢がないような束縛からの開放だった。だが新しい自由が約束するのは、貧困からの自由であり、個人の選択の範囲を必然的に狭めるような外的条件の制約・・・からの解放だった。

『隷従への道』フリードリヒ・ハイエク(2016)日経BPクラシックス

 

この思想は万能ではないどころか今世界中で害悪をばらまいているのです。

ですが、日本の知識層がその考えに乗っ取られている。

 

これが何を意味するかですね。

 

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■幸徳秋水『二十世紀の怪物 帝国主義』

幸徳秋水と云う方をご存知でしょうか。

日本史の授業で一瞬だけ出てきた事を記憶されている方がいるかもしれません。

 

明治期に天皇陛下を暗殺しようと企てた大逆事件の中心人物として死刑にされた方です。

教科書的に見ればよく言って「左翼のアナーキスト」で、悪く言えば「テロリスト」ですね。

 

私もこの本を手に取った時どんな危険思想が書いているんだろうとドキドキしながら読みました。

そうしたら驚きで、めっちゃまともな事言ってるんです笑

 

この本が20代にとっておすすめの理由はもちろん昨今日本の知識層にはびこる「帝国主義的思想」を戒める意味もあるのですが、物事の正体はそれを語る人によって印象が大きく変わるという事ですね。

 

幸徳秋水がテロリストだったというのは当時の処刑した側からの記録なのですが、それが教科書に事実として載っているという恐ろしさはこの本で学べるかもしれません。

 

この事は今も当てはまる事で、アホだと言われていたり少数派で弾圧されている人こそまともな事を言っている可能性があるので幅広く意見を聞いてみなくてはならないという事です。

 自分を愛し、他人を憎め。同郷人を愛し、他郷人を憎め。神の守護する国(日本)や世界の中央に位置する文化国家(中国)を愛し、西洋人や辺境の異民族を憎め。愛すべき者のために憎むべき者を討つ。これを名付けて愛国心という。

 そうだとすれば、愛国主義はあわれむべき迷信ではないのか。迷信でなければ、いくさを好む心である。いくさを好む心でなければ、うぬぼれの強い、思い上がった自国の宣伝である。

 このようにして愛国主義は、専制的な政治家によって、いつも自分の名誉と野心を成就するための手段、道具として利用される。

『二十世紀の怪物 帝国主義』幸徳秋水(2015)光文社

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■福田恆存『保守とは何か』

さて、続いて20代の人が読むことをおすすめしているのが福田恆存さんですね。

あまり名前になじみのない方も多いかもしれません。

 

代表作に『保守とは何か』があるのですが、これが特におすすめです。

その背景を少しだけ書きます。

 

昨今、「イノベイションを起こせ」「新陳代謝が足りない」「既存の価値観を破壊せよ」「日本の経営をアメリカのように合理的に」「若者はアジアに打って出ろ」「日本はもう衰退するから東南アジアに行け」今書いたような意見が知識人の間では主流のようです。

 

そんな中、逆に「昔の価値観を尊べ」とか「日本型雇用慣行はアメリカの経営より数段優れている」などと言えば「化石人類」として叩かれるんですね。

 

 

日本人というのは長らくアメリカにコンプレックスがあるようでして、今の知識人のほとんどがアメリカに留学し、日本に戻ってきたらアメリカのようにならないといけないと叫んでいます。

しかもそれが「保守派」を自称するのですからもう天地がひっくり返っています。

 

 

日本の価値観を捨てアメリカのようになることが「イノベイション」なのでしょうか。

日本は成長しないから日本は切り捨てて東南アジアに打って出るのがこれからの「活躍する日本人」何でしょうか。

 

そんな奴がいっぱいいるから日本が衰退しているんですよね。

それだけの話です。

保守派がつねに現状に満足し、現状の維持を欲しているといふ革新派の誤解である。戦術的誤解でなければ希望的観測である。日本の保守党すら、明治以来今日に至るまで、たえず進歩と改革を考へてきた。保守派が合理的でないのは当然なのだ。むしろそれは合理的であつてはならぬ。保守派が進歩や改革を嫌ふのは、あるいはほんの一部分の変更をさへ億劫に思ふのは、その影響や結果に自身が持てないからだ。・・・保守的な生き方、考へ方といふのは、主体である自己についても、すべてが見出されているといふ観念をしりぞけ、自分の知らぬ自分といふものを尊重することなのだ。

『保守とは何か』福田恆存(2013)文芸春秋ライブラリー

 

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■福沢諭吉『学問のすゝめ』

おそらくこの中では一番知名度の高い本かもしれません。

福沢諭吉の『学問のすゝめ』を20代おすすめの本にあげたいと思います。

 

この本の楽しみ方はいろいろあるのですが、「学問をしなさいよー」というタイトルで分かるくらいの読後感にならないようぜひ読み込んでもらいたい本です。

 

当時も今と同じように「グローバルだ」「公用語を英語に」「日本人は内向きすぎる」という言葉が飛び交ったのですが、そういった時代の中でいわゆる「グローバリスト」のイメージがある福澤ですが全くもってイメージとは異なる考え方をしていました。

あるものを採用しようとすれば、ゆっくり時間をかけて考え、だんだんとその性質を明らかにしてから、取捨選択をすべきである。なのに、最近の世の中の様子を見ると、中程度以上の改革者たち、一人がこれをいえば、皆それに倣い、およそ知識道徳の教えから、政治・経済・衣食住の細々としたことに至るまで、全て西洋のやり方を慕って、これを手本にしないものはない。・・・ひたすら古いものを捨てて、新しいものを求めているようだ。なんと、物事を信じるのに軽々しく、疑い方の粗忽なことよ。

『学問のすゝめ』福澤諭吉(2009)ちくま新書

 

上を読めば昨今の薄っぺらい知識層とは言ってることが全く異なるとおわかりいただけることでしょう。特に福澤がここで嘲笑している「中程度以上の改革者」ってまさに朝から晩まで「改革」を叫び国を滅ぼそうとしている竹中平蔵氏や大前研一氏みたいな体の低いグローバリストを指しています。

 

まず取り入れる前に熟慮せよと言っているのですが、これは当たり前なのに最近は忘れ去られています。20代の今こそこの本を読み「中程度の以上の改革者」が国を滅ぼそうとすることから守る必要があります。

 

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■岡倉天心『茶の心』

最後になります。長らくお読みいただきましてありがとうございました。

この岡倉天心の『茶の心』を最後に20代におすすめの本としてあげさせていただきます。

 

これはお茶の作法を書いたりお茶の楽しみ方を書いたとも取れるのですが、本質は日本人とは何かを書いている本です。

私たち日本人の住居、習慣、衣服や料理、陶磁器、漆器、絵画、そして文字に至るまで、すべて茶道の影響を受けていないものはない。日本文化を学ぼうとするなら茶道の存在を知らずには済まされない。

『茶の心』岡倉天心

 

そしてこちらも『学問のすすめ』に同じく安っぽい欧米賛美を戒めた一冊となっています。

戦時中思想に利用されたという背景から戦後蓋をされている天心ですが読んでみればなんのことない。全然過激な思想ではありませんのでご安心ください。

 

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