衆議院の解散が決まりましたね。
そして10月の中旬以降に順次投開票されるそうです。
争点はいろいろあるでしょう。
ただ、一つ確実に争点となってくるものとして安倍晋三という政治家への評価があります。
早速、直近の世論の評価はどのようなものだったのかを確認してみましょう。
9月26日付けのものがありましたので見てみます。
産経ニュースが報じたところによると、支持率は一時期の低迷期から大きく回復し5割へ戻したようです。
菅義偉官房長官は19日の記者会見で、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が16、17両日に実施した合同世論調査で内閣支持率が50・3%になったことにこう答えた。5割を回復したのは5月以来4カ月ぶりだ。
『内閣支持率が5割回復 解散・総選挙決断の後押しに 安倍晋三首相不信の払拭は「?」』2017年9月26日付
http://www.sankei.com/premium/news/170926/prm1709260006-n1.html
産経系列は安倍内閣の支持率がいつも高めに出る傾向がありますから多少下駄を履かせていると考える必要はありますが、安保法案時の3割前後を推移していた時よりは格段に支持率は「上がった」と言っていいでしょう。
さて、そんな支持率を高めている安倍総理ですが、本当に素晴らしいのかを今こそ検証する必要があります。
最近はメディアの報道や専門家の違憲もおかしなところが多いと感じた私がいろいろと調べてみました。
何回かに分けて検証したいと思いますが、一回目は保守系論壇人や保守系メディアが安倍晋三総理を評価するポイントである「安倍は外交ではよくやっている」というものです。
安倍晋三総理は外交ではうまくやったのでしょうか。
私の見解は「どこがどう良かったのかが一向に分からない」というものです。
さて、代表的な売国ニュースをチェックしましたので、ご確認ください。
■目次
■韓国との外交
まず韓国との外交についてですね。
本年度のトピックとしては、慰安婦問題に対しての日韓合意がなされたことが大きな出来事といえるでしょう。
結構前のことですので少しだけ概要を説明します。
一言で言うと、2015年に日本と韓国は日本軍と慰安婦に関わる問題を最終かつ不可逆的に解決することを合意したのです。
日本政府(安倍総理)はそれを履行するにあたって、10億円を手打ち金として拠出し、元慰安婦女性全員へのお詫びの気持ちを表明したのです。
慰安婦問題をめぐる日韓合意に従い、韓国政府は元慰安婦の支援を目的とした財団を1年前に設立し、日本政府の予算で10億円が拠出された。合意時に生存していた元慰安婦47人のうち36人(約77%)が1人当たり約1億ウォン(約1000万円)の現金を受け取り(申請も含む)、故人199人の遺族らのうち65人が約2千万ウォンを受け取り済みだ(同)。
また、日本政府は合意で、安倍晋三首相による元慰安婦の女性全員への「おわびと反省の気持ち」を表明した。首相のおわびと資金拠出の「着実な実施」を前提に、韓国政府は慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。日本政府は韓国との合意を守り着実に履行してきた。
『慰安婦はもはや韓国の国内問題 日本は着実かつ誠実に履行』
http://www.sankei.com/world/news/170724/wor1707240034-n1.html
これで韓国との慰安婦問題に関するものは解決したと安倍政権は言ったわけですね。
確かにそれであれば多少の金銭は痛いものの外交上の成果かもしれません。
しかしながら、この日韓合意というのが突っ込みどころが多すぎるとんでもないものなのです。
結果としては10億円ぼられただけとも言っていい状況です。
批判のポイントは、大きく分けると2つあります。
- 真偽が怪しい河野談話の踏襲
- 書面での取りかわしなし
まず一つ目ですが、河野談話を安倍晋三総理が踏襲し、国として信憑性が疑わしいものを正当なものと認めたことです。
この河野談話は朝日新聞がネトウヨに叩かれる格好の餌となった事件なのですが、何が問題があったのかを私もあまり詳しくなかったので改めて調べてみました。
結論から申しますと、河野談話の問題点は、日本が慰安婦を「強制連行した」というところを認めたところにあります。
政府が六月二十日に公表した河野談話の作成過程の検証報告書は・・・こう結論付けている。「一連の調査を通じて得られた認識は、いわゆる『強制連行』は確認できないというものであった」また、報告書は政府が韓国側に対し、「『強制性』に関し、これまでの国内における調査結果もあり、歴史的事実を曲げた結論を出すことはできないと応答した」との記述もある。慰安婦問題にかかわる日韓間の協議の報告を受けた当時の事務方トップ、石原信雄官房副長官がこう発言した場面もある。「慰安婦全体について『強制性』があったとは絶対に言えない」ところが河野氏は、平成五年八月四日の河野談話発表時の記者会見で、この政府の共通認識を独断でひっくり返してしまった。記者に「強制連行の事実があったという認識なのか」と問われ、勝手にこう答えたのだ。「そういう事実があったと。結構です」日本が慰安婦を強制連行して性奴隷にしたという「伝説」に、河野氏が「政府公認」というお墨付きを与えた瞬間だった。現在の政府高官はこれについてこう批判する。「それまで政府は強制連行は証拠がないという一線を守っていた。それなのに、河野氏の発言で強制連行説が独り歩きすることになった。あの記者会見は完全な失敗だ」『暴かれた「河野談話」の嘘』月刊正論2014年9月号
上にあるように政府内で「強制性」について調査中であったにもかかわらず、河野洋平は慰安婦の強制連行を認めてしまったのです。
真偽不確かな状況で河野洋平が行ったことは自国を意図的に貶める行為であり国賊と言われて仕方がないことであるのは間違いありません。
*ちなみに河野洋平が強制性を認めた根拠は後ほどわかったことなのですが、韓国政府が選んだ16名の元慰安婦からの取材のみだそうです。
ただ、それよりひどかったのが安倍晋三という政治家でした。
おかしいとなった河野談話を平然と踏襲したのです。
しかも、この日韓合意の手続きがとても保守政治家とは思えないのです。
二つ目に書いたことですが、文書合意が一切ないのです。
それ故に、韓国は結局大金せしめた上に好き放題やっているのです。
下記は今月のニュースですが、日韓合意など忘れたかのような動きですね。
韓国の女性家族省が国立墓地での慰安婦追慕碑の建立計画を発表したことを受け、河野太郎外相は26日、韓国の李俊揆(イジュンギュ)・駐日大使に「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意の精神に反する」と懸念を伝えた。「日韓関係に水を差しかねない」ともクギを刺した。
『河野外相、追慕碑計画で韓国に懸念「日韓合意に反する」』 朝日新聞デジタル 2017年9月26日
http://www.asahi.com/articles/ASK9V41B5K9VUTFK008.html?ref=newspicks
いわゆる「従軍慰安婦」を象徴する像が、アメリカ・サンフランシスコ市にも設置された。
サンフランシスコ市の公園に設置されたのは、韓国、中国、フィリピンの3人の少女と年老いた女性の慰安婦像で、22日、除幕式が行われた。『「慰安婦像」設置 米主要都市で初』ホウドウキョク 2017年9月23日
慰安婦問題を解決どころか真偽不確かなものを認めることで、積極的に韓国が付け入る口実を日本は与えてしまったわけです。
これは私の所感ですが、日韓基本条約という書面でかわしたものすら反故にする韓国に対して口約束で「約束して10億円握らせたから大丈夫だよー」は外交力の欠如という表現以外にあるのでしょうか。
安倍晋三を保守と叫ぶ自称保守系メディアや保守系論壇人は疑ってかかるべきでしょう。
■ロシアとの外交
さて次は、ロシアとの外交ですね。
こちらは北方領土の問題です。
先ほどの10億円とは桁違いの金額をプーチンに奉納したのが安倍晋三という人間です。
その額3000億円です。
2016年の12月にあった安倍首相とプーチンの会談について以下のように書かれています。
安倍首相がプーチン露大統領との北方領土(クリル4島)談判で敗れた。安倍首相は15日、プーチン大統領を政治的故郷である山口県長門市の温泉旅館に招待し、夕食会を含めて5時間の首脳会談をしたのに続き、翌日には東京の首相官邸で交渉をしたが、領土問題にまともに言及もできなかった。一方、プーチン大統領は3000億円にのぼる経済協力の約束を引き出すなど実益を握った。自民党では「『ロシアに食い逃げされるのでは』という懸念の声が出ている」と、読売新聞が16日報じた。
『安倍首相、ロシアに3000億円経済協力も領土問題進展なし』中央日報 2016年12月17日付
プーチンの訪日にあたって安倍総理は会談をしたわけなのですが、北方領土について何も進展しないどころかプーチンからは3000億円の経済協力の約束を引き出されたとここでは書かれています。
結局4島返還はもちろん2島どころか北方領土は全てロシアのものであるということが再確認されただけで終わったわけです。
おそらく安倍総理を担いでいる自称保守は「フェイクニュースだ!」とかいうわけですが、いえいえ多くのメディアが同じように伝えていますし、これはほぼほぼまちがいないでしょう。
まだ「安倍は外交ではよくやっている」と言いますか。
ちなみにロシアのメディアでは安倍総理が逆に何も求めてこないことに「なぜなんだ?」といぶかしる声が上がるほど外交能力が欠如していたのです。
■アメリカとの外交
最後にアメリカとの外交ですが、これは安保法案を取り上げたいと思います。
安保法案というのはマスコミも盛んに取り上げていましたので人々の関心も上の二つよりとても大きかったように思います。
日本も戦争ができる国になるなどとも言われ共産党などは「戦争法案」というラベルを張っていたことは有名です。
さて、この安保法案の本質的な問題について触れている人が意外に少ないなとNPなどをやっていて感じます。
そして議論が混乱しているなと。ただ、やっていたのは前二つと同じロクデモナイ安倍総理の外交がもたらした結果なわけです。
少しだけ補足します。
これは難しいように考える世論誘導があるため何か難しいことをやっているように見えますが、実はとてもシンプルです。
安保法案というのは「現行憲法の枠内で集団的自衛権の行使容認は良いのか悪いのか」が問題なのです。
下記は安保関連法案の中で集団的自衛権を行使できる条件について記載したものです。
「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」
「平和安全法制等の整備について資料」内閣府 2015年05月14日
これは難しいことを考えなければすぐわかります。違憲なんです。
ここでよく「集団的自衛権が必要か否か」に議論がすり替えられることがありますがそこではないのです。
繰り返しになりますが、憲法改正という手続きを経ずに解釈で集団的自衛権を使えるのかというところが争点なのです。
もちろん違憲です。
「自民党は国民の理解が十分になっていないことを申し訳なく思う」という趣旨の発言をしていましたが、わかりやすく説明したら違憲だとバレるからごまかしているだけなのです。
そもそも個別的自衛権しか憲法の兼ね合いで行使できないと述べてきたのはこれまでの数十年の自民党です。
それを安倍晋三という政治家が勝手にアメリカで約束し、熟議をすることもなく採決してしまったのです。
これがどれほど国にとって害となるかは今はまだわからないかもしれません。
しかし我が国は憲法を最高法規とする立憲主義国家です。
その国体の根幹である憲法をお時々の政権がアメリカとの勝手な約束や外圧を理由に毀損できるとすればもう法治国家とは言えないということはお分かり頂けると思います。中国や北朝鮮と変わりません。
もちろん解釈があるのはわかりますが、自民党がこれまで述べてきたことを180度ひっくり返すことはいかれてると言わざるをえません。そしてその転倒にまともな説明がありません。
さて、この一点だけでも安倍晋三という政治家が保守ではないということは明快です。
ちなみに安倍総理が安保法案の可決で何をしたのでしょうか。
これは、世界の果てまでアメリカのお手伝いをしに行きますという約束なのです。
だからアメリカ議会は大喜びというわけですね。
保守どころか対米追従外交以外の何物でもありません。
ところで、なぜこのようなことができるのかですが、安倍総理は憲法というものへの理解が皆無だからです。
考え方の一つとして、いわば国家権力を縛るものだという考え方がある。しかし、それは王権が絶対権力を持っていた時代の主流的な考え方であって、いま憲法というのは日本という国の形、理想と未来を、そして目標を語るものではないかと思う
安倍晋三内閣総理大臣 2014年2月3日国会答弁にて
2014年2月の国会答弁で立憲主義を否定しました。
憲法が国家権力を縛るものというのは保守思想の根幹なのですが、「理想と未来を語るもの」という理解なんだそうです。
しかも王権時代に立憲制が成り立たないことはよくよく考えなくてもわかるのですが、安倍総理にはわからないようです。
アメリカにスリスリするためには立憲主義すらも破壊しようとするのが安倍首相なのですが、これが果たして保守と言えるのでしょうか。ぜひ自称保守系論壇人には冷静になってもらいたいものです。