経済

あまりに単純すぎるデフレ脱却が無理な理由①

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「デフレ脱却」

 

少なくとも5年は叫ばれてきた言葉です。

こちら安倍政権が発足当初から至上命題として叫んできたスローガンでもあります。

「どれだけ真面目に働いても暮らしがよくならない」という日本経済の課題を克服するため、安倍政権は、「デフレ※からの脱却」と「富の拡大」を目指しています。
これらを実現する経済政策が、アベノミクス「3本の矢」です。

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/sanbonnoya.html

 

さて、安倍政権はデフレ脱却へ導けたのでしょうか。

確かに安倍総理は2016年に「もはやデフレではないという状況を創り出すことができた」と述べたことを示すように消費者物価指数が2014年以降上昇しています。

 

しかし、このインフレは通貨安によって生じた単なる「コストプッシュインフレ」であり国民をむしろ窮乏化させるインフレでしかありませんでした。(それは実質賃金指数の低下から読み取れます)

 

つまり、彼が本来目指していた需要増大が導く(ディマンドプル)インフレは未だ起きておらず、「デフレ脱却」は真の意味では果たされていないのです。

そのことは彼の「残念ながらまだ道半ばで、デフレ脱却というところまで来ていない」という先ほどとは倒錯した言葉を述べてしまっているところに現れているでしょう。

 

前置きはこれくらいにしてなぜ「デフレ脱却」と叫び続けていて、その周辺に頭のいい人がたくさん集まっているはずなのに「デフレ脱却」が実現しないのか知りたくないですか。

 

その理由は、エリートが自分たちのことしか考えなくなったというのがこの記事の論旨です。

さて、今回「デフレ脱却」をテーマにエリートの凋落ぶりを3回に分けて書かせていただきます。

 

デフレ脱却が無理なのは当然とも言える租税政策

第一回目は、デフレ脱却が無理な背景の一つに誤った租税政策を上げます。

 

租税政策はあまり意識されていませんが、国家権力が行使できるものの中でもおそらく最大の権限です。

(だから財務省は最強官庁とも言われています。)

 

租税政策次第で明日からの国民の暮らしぶりは180度変わるものとも言われています。

つまり、誤った租税政策をやり続ければ国民の窮乏化、ひいては国を滅ぼすと言っても過言ではないことが起こり得るのです。

 

 

さて、改めてですがその租税政策を誤っているのが安倍政権です。

デフレ脱却と言いながら自分たちでむしろ総需要不足を加速させ、デフレ促進をしたいのかと思わされるほど逆行したことをやっているのです。

 

もちろん、安倍政権に限らずこれまでの政権もすでに類似の行動を取っていましたが、安倍政権はそれを今まで以上に加速させている政権です。つまりデフレ脱却をより無理なものにしようとしているのです。

 

 

一口に租税政策と言ってもいろいろあるのですが、ここではわかりやすいという観点から「消費税増税」と「法人税減税」というものを例にその問題を指摘しましょう。

 

デフレ脱却したいのに「法人税減税」

まず、企業の利益に課税する「法人税」について。

こちら2013年に安倍政権就任後段階的に政府が引き下げを行っています。

 

2013年は37%程度あったそうですが、2016年に29%に下げられました。

そして、2017年には20%程度まで下げようという検討も始まり、現体制にとって「法人税減税」は非常に重要視されている政策だと言えます。

思想としては、減税をすることでたくさんの企業に集まってもらったり、今いる企業が海外に出て行ったり国内回帰することを願って行っているとされています。

 

 

実際、安倍総理は「日本をシンガポールのような国にしたい」という趣旨の発言をしていましたので総理肝いりの租税政策なのだと考えられます。

ところで、この法人税減税というのは「経済」の語源でもある「経世済民」という言葉に照らした場合真っ当な政策なのでしょうか。

 

 

もちろん一部では浮いた利益を賃金に回すから国民に利益があるという「一見もっともらしい」ことが語られています。

しかしながら、法人税減税後の各種データを参照するとこの租税政策が国民の多くを占める労働者に還元されるものではないことは明快です。

 

 

冷静に考えればわかるのですが、会社の賃金決定のプロセスに法人税減税が噛むというのは論理的に説明が困難です。

むしろ、法人税が減税されることで労働分配率を下げて利益を出し株主に還元するという流れができやすくなります。

 

 

因果関係はともかくとして、法人税減税後に労働分配率はむしろ下がり続けています。

 企業の利益のうち、労働者の取り分を示す「労働分配率」が低水準になっている。財務省の法人企業統計から算出した2015年度の労働分配率は66.1%で、リーマン・ショック前に企業の利益が膨らんだ07年度(65.8%)以来の低さとなった。一方で企業の利益の蓄積である内部留保は4年連続で過去最高を更新した。

『労働分配率66.1% 低水準に 昨年度、内部留保は最高』 日本経済新聞 2016年9月3日

https://www.nikkei.com/article/DGXKASFS02H5D_S6A900C1EE8000/

 

要するに政府は言葉をごまかしていますが国民ではなく(国民を犠牲にして)「経団連を筆頭に投資家に喜ばれる政策をした」ということなのです。

そして、ここから次の話に移るのですが、投資家様に還元するために減らした税収を国民に補填させるという無茶苦茶な租税政策をしているのが安倍政権です。

 

デフレ脱却したいのに「消費税増税」

最近「社会保障の財源がないから消費税増税」という流れがより強まっています。

具体的には安倍政権はすでに一度消費税を引き上げていますが、来年の2019年にはさらに2%引き上げることを表明しています。

 

これは一見、「国民が安心して暮らせるために痛みを伴うがやむなくやっている」と好意的に受け取ることもできますが、それは嘘です。

「需要拡大によるデフレ脱却」という目標に対して、消費税増税で消費者に負荷をかけるというのはありえない発想です。

 

過去の消費税増税はいずれもむしろ税収を低下させた経験則に学ぶだけでも十分でしょう。

 

まあ、百歩譲ってその増税分を本当に国民に還元するならまだいい方です。

政府与党のここ最近の動向を見ると国民に還元しようなどというつもりすら毛頭ありません。

 

 

例えば、こちらしんぶん赤旗が報じたものですが、「社会保障制度充実のために諸費税増税は致し方ない」が全く嘘だとわかる記事です。安倍首相は社会保障を使途にすると言っていたことを覚えている人も多いかもしれませんが、国民は欺かれたのです。

 消費税率を8%に上げた今年度、増税による増収は5兆円と見込まれています。政府はそのうちわずか1割(5千億円)しか社会保障の「充実」に回していません。

残りの8割以上(4・25兆円)を、政府は社会保障「安定化」のためだといいながら、他の用途に流用しています。つまり、所得税収や法人税収などでまかなってきた既存の社会保障制度の財源を、消費税増税分に置き換えただけのことです。

『政府の消費税宣伝 ウソの“百貨店” 社会保障どこが「充実」?』

しんぶん赤旗 2014年11月11日

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-11/2014111108_01_1.html

赤旗だから信用できないという方は他の記事も探してもらえればと思います。

こちらは広く報道されたもので、社会保障のために使うというのは明快な嘘です。

 

 

「消費税増税と法人税減税」はセットで見るべき

さてこのおかしな租税政策が何故行われているのかの核心に触れていきましょう。

この現政権を始めるおかしな租税政策の根っこを掴む上で私は「消費税増税」と「法人税減税」は常に一体の関係にあるという見方を推奨しています。

つまり、政府は法人税の減税と歩調を合わせるように消費税増税をしてきたのです。

 

下記記事がすごくわかりやすく書いているのですが、消費税増税というのは法人税減税による減収分を賄ってきたものでしかないという記事内の主張はそう思わざるをえないの一言です。

http://shz-haishi.jp/modules/pico/index.php?content_id=15#.W594U5P7TeQ

 

租税政策のパズルをつなげてみると一つの水脈が見つかるわけですね。

要するに「消費税増税」と主張している人と「法人税減税」で喜ぶ人が一致するのです。

 

「役得のある人」というのは例えばその代表例に経団連が挙げられます。

法人税減税によってどれほど彼らはおいしい思いをするかは言うまでもありません。

 

数パーでも数十億、数百億キャッシュが浮きますからね。

経団連が消費税増税を力説し続けているのはご存知でしょうか。

その理由は消費税増税を力説するのは「法人税減税」というご褒美があるからと考えればつじつまが合うのです。

来年10月に予定される8%から10%への消費税率引き上げについて「経済成長を守るため、あるいは(景気へのマイナスの)インパクトを減らすために延ばすという選択肢はない」と述べ、予定通り実施すべきだとの考えを示した。

『消費増税、延期の選択肢なし=政権と率直に意見交換-次期経団連会長インタビュー』

時事ドットコムニュース 2018年5月31日

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018053100042&g=eco

「国民のため」とか「経済成長のため」とか言いながら国民の側に負担を押し付けて自社が利益を上げるという考えを経団連は持っているのだとしたらそれは悲しいものですが、そう考えざるをえないんですよね。

 

義務教育では租税の役割を「資源の最適配分」と考えるように教わりますがこれは半分正解ですが半分不正解です。

 

ウォーラステインの「要するに、課税権こそは、他の集団を犠牲にして特定の集団による資本蓄積過程を援助する、もっとも直接的な手段であったのだ」(『史的システムとしての資本主義』)という言葉が教えてくれる通り、「資源の偏った配分」も租税政策は可能にするのです。

 

なお、経団連を悪の巣窟かのように批判していますが、この団体はもちろん犯罪行為をしているわけではありません。

ですので法的には「悪」ではありません。

 

ただ、それゆえにタチが悪いというのが私の見解です。

彼らはルール自体を変更するということをやっているんですからね。

 

 

デフレ脱却を実現する方法〜中締め〜

では、デフレ脱却を実現するにはどうすればいいのかというと、我々が嘘つきを見破りそれを指摘していくことを積み重ねるしかないでしょう。我々自身がインチキを指摘し、インチキを行うことが無理なように監視の目を強化するしかありません。

 

頭のいいと言われる人が、平気でイカサマをしてくるのが現代社会です。

性善説を捨ててもいいかもしれません。

 

 

おそらく背景には「稼いだやつが正義」という発想があると思われるのですが、それに歯止めをかけられるのは繰り替えしになりますが一人一人がインチキをインチキだと気づく以外にないでしょう。

 

ウェンディ・ブラウンという方が新自由主義の加速で民主主義が滅びるということを指摘した著書の末尾で類似のことを述べています。

良い制度を支持するためには、人民はそれに先立って、良い制度によってのみつくられうる人民になっていなくてはならない。教養教育の生き残りは、教養教育が民主主義にとって価値があるということが広く認識されるかどうかにかかっている。民主主義の生き残りは、民主主義のために教育を受ける人民いかんにかかっており、そのためには、教養教育の制度の新自由主義化、民主主義そのものの新自由主義化に抗わねばならない。

『いかにして民主主義は失われていくのか――新自由主義の見えざる攻撃』ウェンディ・ブラウン(2017)みすず書房

 

このままでは「建前だけの民主主義」がより加速し、裏で出目を知っている連中だけが得をする世界がより固定化するでしょう。

「デフレを脱却します」と言いながらデフレを加速させるのを野放しにしているのは他でもない我々なのですから。

 

 

 

 

 

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