戦後最長とも言われる政権を担うことになるであろう安倍政権ですが、その支持基盤が確固たる理由やどこにあるのかと考えたときに大きく2つ考えられます。
一つが「アベノミクス」でお馴染みですが、経済方面で安倍政権は成果を挙げているというものです。安倍政権支持層の多くが経済政策を挙げます。
続いて二つ目ですが、今回テーマにする「外交」です。安倍政権になってから外交が安定している。民主党の時は酷いものだったが、安倍政権になってからは非常に安定していると支持層の多くが考えています。
もちろんこれら二つともを支持する人もいるのですが、片方だけの側面を評価して安倍政権支持となっている層は少なくないのです。
さて、安倍政権の経済政策については本ブログでは度々批判を重ねてきましたので今回は外交の方にフォーカスを当てたいと思います。なぜ安倍政権は外交が上手だと思われているのかを書いたうえで、安倍外交の実際について言及いたします。
「安倍さんは外交上手」と言われる理由
さて、突然ですが、政治的立場はともかくとして安倍政権になってから外交であげた具体的な成果と言われて何を挙げられるでしょうか?
最近だとTPPという人が多いかもしれませんが、安倍政権支持層はTPPを発効する前から評価していましたので、これをもって安倍政権が外交上手という全ての因子とはなりません。
では、安倍政権の外交上手という評価はどこからきているのかというとそれは2つの「イメージ」からきていると私は考えています。
一つが、「対外首脳からの評価が高い」「各国首脳から信頼されている」といったメディアの報道から見える各国首脳のイメージから思っているというものです。
例を挙げましょう。
一つは日米関係ですね。
産経新聞などはお得意様ですが、シンゾートランプは蜜月だという報道をしきりに行っています。(下線は引用者)
「シンゾーだから日米関係はいいんだ。シンゾーだから、私は日本のためにやる。もしシンゾーじゃなければ、私はフリーエージェントになる」
日本を訪れたトランプ米大統領は6日の首脳会談で、こう明言した。共同会見でも「これほど密接な関係が両国の指導者の間にあったことはない」と言い切った。
実際、「ロン・ヤス」(ロナルド・レーガンと中曽根康弘)、「ジョージ・ジュンイチロー」(ジョージ・ブッシュと小泉純一郎)など強い印象を残したが、「ドナルド・シンゾー」コンビこそ、安倍晋三首相が「ここまで濃密に深い絆で結ばれた1年はなかった」と語るのも誇大ではない。日米関係の安定こそ安倍政権の最大の成果と言えるのではないか。
『安倍外交の成功ねたむ韓国 アンフェアな政治利用をトランプさんは嫌うはず』産経デジタル 2017.11.11 09:00
https://www.sankei.com/world/news/171111/wor1711110005-n1.html
トランプ大統領の言葉を引用しつつ「トランプ大統領にここまで評価される安倍首相すごい」というイメージがまさに売り出されています。
同記事は安倍首相が外交で具体的になんの成果を挙げたかを書くことなく4ページにもわたって安倍首相を絶賛しています。
産経とおなじプレゼンが自民党の議員が作成した記事でも行われています。
安倍総理は現在渡米中ですが、オフィシャルの日米首脳会談前にトランプさんの自宅でサシで夕食会が開かれた報道がありました。これにはトランプ大統領もツイートをしています。安倍総理がトランプタワーに来るのでお祝い申し上げようという内容です。
http://agora-web.jp/archives/2034891.html
同様のことがトランプ以外の場合にもプーチンを始め各国首脳と会談した際によく描かれます。安倍さんは外交が上手だなあとこれを見ていると「なんとなく」思ってしまいます。
二つ目が、こちらもメディアと関係ありますが、よく「どこどこの国に行った」「〇〇の首脳と会談をした」と言った形で「外国によくいっている」というイメージからくるものです。
こちらも例を見ていきましょう。
直近の報道がいいですね。
安倍晋三首相は14日~18日の日程でシンガポール、オーストラリア、パプアニューギニアを訪問する。シンガポールで東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議と東アジアサミット(EAS)に出席するのに合わせ、ロシアのプーチン大統領と会談する。通算23回目の日露首脳会談で北方領土問題が進展するかが最大の焦点となる。
『安倍首相、14日から豪州など歴訪 焦点は日露首脳会談』産経デジタル 2018.11.12 20:03
https://www.sankei.com/politics/news/181112/plt1811120026-n1.html
このニュースなんかはよく報道されるパターンですが、各国を少ない時間で数多く回る安倍首相は「外交で頑張ってるな」というイメージを持つのではないでしょうか。
実際、多くのメディアが報じているのですが、安倍首相の外遊の「回数」は歴代で圧倒的にナンバーワンです。
もちろん長期政権なので多くなるのは当然なのですが、ペーストいう点で見てもかなり多いです。5年5ヶ月在任した小泉元首相は49カ国でしたが、朝日新聞の下記記事を見ると2018年の1月時点で小泉首相の訪問した国の数を圧倒的に超えています。(76カ国)
「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げる安倍首相は、今回の訪問を含めると第2次安倍政権の発足から5年1カ月で76カ国・地域を訪問した。すでに、首相在任期間が5年5カ月だった小泉純一郎氏の49カ国・地域を上回る。日本の首相として初めて訪れた国も21カ国に及ぶ。菅義偉官房長官は「長期政権の強みを生かして、日本外交のフロンティアを広げる」と話す。
『首相の外遊、5年1カ月で76カ国・地域 小泉氏上回る』朝日新聞デジタル
2018年1月15日04時02分
外務省のページとも一致しますので「朝日なのでフェイクニュース」ではありません。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/page24_000037.html
安倍外交の具体的な成果は皆無
さて、ここで冷静になる必要があります。
外交の「成果」や「上手さ」は何で推し量るべきかという基本的な問いに答える必要があります。
これについて私は「相手の首脳が喜ぶこと」「外国に行くこと」自体は外交でもなければそれ自体が「成果」となるはずがないという立場をとる人間です。
逆の方がどちらかというと一般的だとさえ私には思えます。
つまり、相手首脳が喜んでいるということは我が国がむしろ損をしている可能性があるということです。
タイムリーな話題で言えば、北方領土問題におけるプーチンがいい例でしょう。
プーチンが安倍首相を評価していると思しきコメントがよく紹介されつつ安倍外交の成果が強調されるのですが、安倍首相の外交によって北方領土交渉は前進どころか後退しているとさえいえるレベルです。
少し前ですが、2016年に安倍首相がロシアを訪問しプーチンと会った時に安倍首相はプーチンが求める3000億円の経済協力を約束しました。これで領土問題を前進させようという狙いがあったのかもしれませんが、3000億円の経済協力と引き換えに何も得ることができませんでした。
それどころか北方領土で軍事演習を始め実効支配を強めたのがここ数年のロシアです。
もちろんこれは我が国にとっては全く喜べることではありません。
要するに日本はロシアのカツアゲにあったわけです。
もちろんプーチン自体は喜んでくれています。自分の思った通りになったわけですからね。
しかしながら、こんな当たり前の話をする必要もないのですが、プーチンが喜んでいることと我が国の利害は一致していません。それどころか逆です。
ただ、プーチンが喜んでいるから安倍外交はうまくやっているというイメージが多くの人の間でついているのです。
こう言ったことはトランプとの外交でもよく見られ、トランプが喜んでいるなと思いきや安倍首相が大量の武器購入を約束しているだけとかそういうのばかりです。
安倍政権は「仕事をやっている感」を出しているだけ
あなたが営業部長で部下が「訪問を今月100件やりました。でも売り上げは0でした」と言ってきたらどうしますか?
- 給料泥棒!
- 何か根本的に間違ってるよね?!
- どこで遊んでたんだい?
まあいろんなリアクションがあるかと思いますが、「よく頑張ったね。とりあえずその調子で訪問を続けよう」という営業部長はいないでしょう。
残念ながら安倍外交の正体はこれなのです。
とにかくたくさん経費を使って訪問はしている。接待もたくさんしている。
ただ、会社には一円も売り上げを残せていない。
家でおとなしくしているか国内でゴルフしているだけの方がまだ経費の額が少なくていいレベルです。
一回ごとにプライベートジェットをチャーターして数億かけて海外を飛び回っているというのは「仕事をやっている感」が滲み出るだけで、仕事をしているかどうかはわかりません。
なんでこんな当たり前のことを今更言わないといけないのかというと「安倍さんになってから外交は安定した」とか言ってる人間が多いからなんですね。
少しだけこれからの安倍外交を予測しておくと、最近外国にたくさん言っているのはおそらく安倍首相自身が具体的な成果を欲しているからでしょう。任期もそれほど長くはありません。
これから任期満了に向けて彼はおそらく日露平和条約と日米FTAという「見た目だけ素晴らしく見える不平等条約」を結ぼうとするでしょう。産経新聞あたりが素晴らしいリーダーと持ち上げてテレビなどもそうするでしょうが、これまでの外交手腕を見ていれば実態は相当な不平等条約となるでしょう。
我が国はいつまで持ちこたえられるでしょうか。