- 森友問題
- 加計問題
- 働き方改革法案データ捏造問題
少なくともここ1−2ヶ月にわたって世間を賑わせているニュースです。
普通ならばそれぞれの問題で内閣総辞職を一回ずつやってもいいレベルなのですが、未だに総辞職をしないどころかそれを下支えする支持層が3割程度いると言われています。(世論調査を見ていると)
おそらく民主党政権時代に同じことがあったら政権は吹き飛んでたでしょう。
なぜこれほどまでに底堅い支持があるのでしょうか。
私は日々Newspicksなどでコメントを拝見しているのですが、その理由について安倍総理を支持する方々の興味深い発言があります。
最終的にいかなる反論に対しても述べる共通の支持理由があるのです。
「それでも民主党よりマシ」というものです。
言い分としてはこうです。
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確かに安倍さんにも問題があるかもしれない。
しかしながら左翼の売国奴共に政治をまかせるくらいなら多少問題はあるかもしれないが安倍政権の方がマシだ。
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おそらく今書いた内容に関しては自民党の支持層からはある一定の理解を得られるのではないでしょうか。
さて、ここからが本題ですが本当にマシでしょうか。
確かに民主党はひどかったですね。私もそう思います。
シビリアンコントロールを知らない総理大臣に主権放棄のTPPに自ら進んで参加する愚行などなど上げ始めればキリがありません。
ただ、今一度冷静になる必要があります。
左翼の売国奴が前の政権だったとしてそれを倒せば左翼の売国奴がいなくなる保証はありません。
左翼を倒した人間が右であり保守であるとは限らないのです。
『1984』という全体主義の世界観を描いた小説があります。
その本では以下のような有名な一節があります。
戦争は平和なり 、自由は隷従なり 、無知は力なり
『1984』ジョージ・オーウェル (2009)ハヤカワepi文庫
要するに『1984』の世界では幾つかの言葉の意味がひっくり返って使用されているということを描いているのですね。
この描写はオーウェルに限ったことではありません。
全体主義を思考したアーレントも言葉の混乱が社会の混乱に先立って現れるという趣旨の言葉を残しています。
さて本題に戻りましょう。
今自民党支持層が敵対視する勢力に使う「左翼」という言葉、この言葉の意味をあなたはご存知でしょうか。
別に高度な知識である必要はありません。
辞書で弾けば出てくる程度の理解で問題ありません。
何となく共産党は左翼だとか何となく辻元清美は左翼だとか思っていませんか?
そして、それと相対する安倍さんを「保守」だと思っていませんか?
この安直な理解が非常に危険なのです。
今日は、改めて何気なく使われている「左翼」とは何かを書いた上で、安倍政権こそが本物の左翼である理由について書いていきたいと思います。
これは言い間違いではありません。安倍政権こそが今日本で最も左翼です。
■左翼の定義
さて、早速ですが、左翼の定義について考えていきましょう。
一般的に「左翼」ときいてどういったものを思い出しますか?
- 朝日新聞?
- 毎日新聞?
- 共産党?
- 辻元清美?
- 菅直人?
- 枝野幸男?
- 沖縄県民?
一方で、「左翼でないもの」と聞いてどういうものを思い出しますか?
- 読売新聞?
- 産経新聞?
- 安倍首相?
- 橋下徹?
- 百田尚樹?
- 櫻井よしこ?
- 竹中平蔵?
- 高橋洋一?
- 長谷川幸洋?
さて、辞書的な意味を実際に見てましょう。
政治的な文脈において「左翼」とは下記のような意味のようです。
急進主義的な傾向をもつ思想や運動をいう。
・・・・左翼は、理性や啓蒙の子であり、民主主義、平等、人権をこの世で実現しようとする。政治や経済の仕組みは人間の手で作りかえることができるという前提でものを考える。しばしば左翼は革命によって理想の世の中を作り出すことを夢見てきた。
フランス革命時,国民公会で急進派のジャコバン派が議長席から見て左側に座ったことから〕 急進的・革命的な政治勢力や人物。ことに,社会主義的または共産主義的傾向の人や団体。
三つの辞書に共通する部分のみを合算して述べると左翼とは「急進的に旧来の仕組みをひっくり返そうとする思想及びその勢力」と言ってよいいのではないでしょうか。
この左翼の意味に今日本で最も誰が当てはまるのかを考えてみてください。
朝日新聞でしょうか?辻元清美でしょうか?共産党でしょうか?
これらは「左翼」と言われ徹底的に叩かれる傾向があります。
ただ、彼らの話す内容だったり活動が本当に「左翼」なのかまで考えてみてください。
私が思うにいい悪いは別にしてこれらは「左翼」とは思いません。
幾つかの例をあげれば「急進的に旧来の仕組みをひっくり返そうとする思想及びその勢力」とは言い難いように思います。
例えば、彼ら・彼女らは必死に憲法9条の改正を拒みます。決して変化を望みません。(これがいいか悪いかは別にして)
そのことはこれらの勢力を批判している当の本人たちが一番知っていることです。
これらの人物やメディアがとる態度は字義通りに取るならば「保守的」ではないでしょうか。
辻元清美や朝日新聞、共産党こそが保守勢力ではないかということです。
何となくこれらの勢力が「保守的」と聞くと違和感があるかもしれませんが、それはメディアに影響されすぎだとわたしは思います。
何か高度なことを語っているとよく勘違いする方がいるのですが、難しく考えることなく辞書通りに考えてください。
そうすれば、これらが急進的に変化をもたらそうとしている勢力ではないことに気づきます。
では、本物の左翼とはどこにいるのか?
それに対する私の答えが安倍政権にありというものです。
■安倍総理が左翼と言えるこれだけの理由
安倍さんは自分のことを「保守」であると語っています。
さて、安倍さんの保守観がどういったものか見てみましょう。
安倍晋三首相は21日の参院本会議で、民進党の大塚耕平代表が「保守とは何か」とただすと、こう持論を披露した。
首相は「保守と改革は矛盾するものではない。常に変革を求めていく気持ちこそ、大切なものを守ることにつながる」と主張。「日本の大切な文化や伝統といった守るべきものをしっかりと守っていく」と訴えた。時事ドットコムニュース(2017/11/21-14:56)
「常に変革を求めていく気持ちこそ、大切なものを守ることにつながる」という保守観を披露しています。
この時点でよくわかりません。まさに「戦争とは平和なり」なのですが、自分が左翼的な思想であるにもかかわらずそれを「保守」だと言っているのです。
常に変化を求めていく態度は保守どころかすでに見たとおり「左翼」に近い思想です。
その証拠に安倍さんは直近数年の中で今は共産党も言わなくなった「革命」という言葉を多用するようになりました。
東洋経済オンラインの中で安倍総理の言葉のインフレに関する記事がありましたのでその一節を引用します。
通常国会が召集され、予算委員会を舞台に連日、論戦が続いている。今年の安倍晋三首相の発言のキーワードは「人づくり革命」と「生産性革命」という2つの「革命」だ。
もともと「革命」というのは左翼政党が好んで使う言葉であり、歴代首相は「共産主義的暴力革命」などと批判したり揶揄したりすることはあっても、自らの政策への理解や支持を得るために積極的にこの言葉を使うことはなかった。首相たちが好んで使ったのは「改革」という言葉であり、安倍首相もしばしば使っていた。それが「革命」に比重を置きだしたのである。そこには国民により強く政策を印象づけようという言葉のインフレーションがあるようだ。
安倍首相の目指すものが「改革」から「革命」へ 首相発言に見る言葉の「インフレ」
東洋経済オンライン2018年2月9日
『もともと「革命」というのは左翼政党が好んで使う言葉であり、・・・・自らの政策への理解や支持を得るために積極的にこの言葉を使うことはなかった。』とあります。これはまさにその通りです。
どう転んでも「革命」という言葉を使うのは左翼であるとこの記事の著者は述べているんですね。
保守を名乗る勢力が「革命」を標榜しているというのはまさに言葉の混乱であり、『1984』が描く全体主義の世界観が今目の前にあることを語っているのです。
抽象論で煙に巻いていると思われると心外なので幾つか例をあげましょう。(これが全てではありませんが)
移民政策
まずわかりやすいのでいうと移民政策です。
正直これをやり始めたところあたりで安倍さんどうもおかしくないかと思った人は少なくないはずです。
と言いますのもご存知ヨーロッパを中心に現在移民の受け入れの結果テロが多発しています。
そして、ドイツのメルケルを始め政策の誤りを認めるとともに受け入れを縮小する意向を示しています。(実際に減っている国は多い)
しかし、その失敗に学ばず急進的に移民の受け入れをしているのが安倍政権です。
もちろん世論の反発があることはさすがに安倍首相も想定しており、「移民ではなく外国人財」という答弁で乗り切ろうとしています。
ここもまた言葉の混乱であることがおわかりいただけると思います。
今外国人財や技能実習生という名目できている方々は国際的な定義で言えば明らかに移民です。
難しく考える必要はありません。辞書を引けば安倍政権がでたらめなことを言っているのはわかります。
安倍政権は「外国人財」や「技能実習生」とごまかしながら日本を移民国家にしようとしているのです。
自民党のやり方は相当陰湿で、下記は何気ない日経の記事ですが、数年と言って呼び寄せておきながらさらに延長できる制度を導入しました。これは欧州が移民政策の時にやった手口と同じです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29256530R10C18A4SHA000/
これが「保守」でしょうか。
嘘をつき国民を欺き移民国家へと変容させることがどう転んで自国の伝統を重んじる行為なのでしょうか。
彼がやっていることは急進的な構造改革です。左翼と言わず何というのでしょう。
TPP
続いてはTPPです。
いわゆる自称保守を名乗る連中が推進しているためそれほど問題ないと思われているのかもしれませんが、TPPもまた急進的な構造改革です。TPP推進論者は左翼だと言っても良いでしょう。
例外をいくつか設けているもののTPPのコンセプトは参加各国の関税自主権と治外法権という国家主権の放棄です。
国家主権を放棄しようとする自殺行為を「保守」と言えるでしょうか。
歴史を辿ればわかります。
その昔日本がペリー来航以降外国からの恫喝で失った権利が二つあります。これは教科書で習いますよね。
それは関税自主権と治外法権です。
日本がTPPで捨てようとしているものです。
日本が明治期になんども戦争を行い多くの犠牲とともに小村壽太郎野の元ようやく取り戻したものを自ら進んで捨てようとしているのです。
そもそもそんな知識がなくてもおかしいことは「菅直人は=売国奴」と言ってる彼らこそが一番分かるはずです。
あれだけ「売国奴」「左翼」と罵っていた菅直人元首相が進めようとしていた政策をご存知でしょうか。
それは、TPPです。嘘だと思う方はネットで記事を探してください。
菅元首相は「平成の開国」と言いながらTPPに是が非でも入ろうとしていました。
菅直人元首相が売国奴であるという認識が間違っていないと考えるならばなおのこと同じことをしようとしている安倍首相は売国奴とならないでしょうか。
世の中には一定数「何を言っているか」ではなく、「誰が言っているか」でしか判断できない人がいるものでして、全く同じことをしようとしているのに片方は左翼で片方は保守だという二重思考をする人がいるものです。
これはご都合主義もいいところといいますか、もう少しごまかそうとしてくれよと突っ込みたくなるほどです。
自民党支持者の方にもし「菅直人=左翼の売国奴」という認識があればTPPを推進する安倍首相も左翼の売国奴だと認定してください。それでなければ思考停止です。
安保法案
他にも幾つかあるのですが、字数の関係で最後になります。
最後は安保法案です。
安保法案というととてもメディアを筆頭に騒いでいたことはご存知だったかと思いますが、いつの間にかたち消えになろうとしています。ただ、あれも忘れてはいけない問題です。
あの問題はいろんなところに論点が飛び火していたため何が問題だったのかがいまいちつかめていない方も多いのではないでしょうか。
当時議論されていた各種論点は下記のようなものがあります。
- 集団的自衛権が必要か否か
- このままの状態で北朝鮮有事の際に対応できるのか
- アメリカの押しつけ憲法に縛られていていいのか
- 国際法では集団的自衛権は当然の権利ではないか
ただ、これらは全て間違いです。
実は論点は極めて単純です。
自民党が必死に論点をごまかしていたのでわかりにくくなっていたのですが、「現行憲法の枠内で集団的自衛権が認められるか否か」が問題だったのです。
日本は立憲主義国家です。
それゆえに、憲法が最高法規でありそれを逸脱しない範囲で法律の作成が認められています。
つまり、安保法案がもし憲法の解釈を超えるものなら作ってはいけない法律なのです。
国際法がどうだとかアメリカが押し付けた憲法だからとか北朝鮮の脅威がどうだとかは関係ありません。
それでは、「現行憲法の枠内で集団的自衛権が合憲か違憲か」を見てみましょう。
まず集団的自衛権の辞書的な意味は下記のようになっています。
国際関係において武力攻撃が発生した場合,被攻撃国と密接な関係にある他国がその攻撃を自国の安全を危うくするものと認め,必要かつ相当の限度で反撃する権利。
https://kotobank.jp/word/%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%9A%84%E8%87%AA%E8%A1%9B%E6%A8%A9-77203
同盟関係などにある国が攻撃を受けた時に協力して反撃を行う権利とあります。
要するに、日本国外で自衛とはいえ戦闘行為を取る権利のことを意味します。
さて、何も専門知識はいりません。普通に憲法9条を読んで安保法案で槍玉に上がっている集団的自衛権が合憲か違憲かを考えてみましょう。
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
中学生でもわかると思いますが違憲です。
どのように都合よく読んでも集団的自衛権が合憲だということは無理ではないでしょうか。
それを捻じ曲げて「合憲」にしたのが安倍政権です。
この明らかに違憲の法案を通すということは立憲主義の破壊であり近代国家の終焉と人治国家の始まりを意味します。
まさに安倍政権は「急進的に旧来の仕組みをひっくり返そうとする思想及びその勢力」という左翼の定義そのものではないでしょうか。
ちなみにそれに必死に抵抗していたのが「左翼」と言われていた辻元清美や朝日新聞、そして共産党なのです。
なんども言いますが、「誰が言うか」ではなく、「何を言っているか」で判断しなければ言葉のごまかしに気づけません。
ここが日本人の致命的な弱点だと言ってよいでしょう。
■自民党が保守政党に見える人に読んで欲しい本
「保守」というものが言葉のごまかしによって歪められており、左翼のグローバリストである安倍政権が平然と保守を偽装しています。
そういった中で、我々の対抗措置としては改めて「保守とは何か」を考えられる機会を設けることに他なりません。
本当の保守思想を学ぶことで安倍政権が急進的な左翼であることに疑いの余地はないでしょう。
エドマンド・バーク『フランス革命の省察』
保守思想の大家と言ってこの人を上げない人はいません。
先ほど「左翼」の定義のところであげましたが、この語源はフランス革命から来ています。
エドマンド・バークが批判したフランス革命こそ左翼革命だったわけですが、これを読むことで「保守」とは何かが改めて考える機会となるでしょう。
「国はこうあるべし」という自己の理論に酔うあまり、現実の国家に良い点を見いだそうとしない者は、本当の意味では社会に関心など持っていない。
革命派にとっては、個々の人間であれ、政策であれ、はたまた政治的な原則であれ、良し悪しを判断する基準は一つしかない。従来のシステムをぶち壊すのに役立つかどうかだ。
『フランス革命の省察』エドマンド・バーク(2011)PHP新書
マイケル・オークショット『政治における合理主義』
20世紀で最も著名な保守思想家です。
彼の保守思想に日本の多くの方が影響を受けたと言われています。
政治的活動についての我々の理解が、深まれば深まるほど、それだけいっそう我々は、もっともらしいが誤った類推にほんろうされることが少なくなろうし、またそれだけ我々は、誤ったトンチンカンなモデルに誘惑を感じることも少なくなろうということ。
『政治における合理主義』マイケル・オークショット(2013)勁草書房
ウォルター・バジョット『イギリス憲政論』
ウォルターバジョットは日本では知名度が低めですが、イギリスなどではモンテスキューと同列にして学ばれるほどの憲法の権威です。立憲主義とは何かや議院内閣制がなぜ必要なのかなど政治における仕組みの複雑さとその必要性が語られます。
すぐに打っ壊せと叫ぶ連中には耐えられない緻密な議論がそこにはあります。
しかしいうまでもなく、尊敬心を持った国民を作ることは、極めて難しい。尊敬は伝統的なものである。尊敬は、優れていることがはっきりしているから与えるのではなくて、古いことがはっきりしているから与えるのである。
ウォルター・バジョット『イギリス憲政論』(2011)中公クラシック
安倍さんが言っているから「左翼ではない」とか読売新聞が報じているから「左翼ではない」とか朝日が報じているから「左翼」とかそういった短絡的な思考をしては騙されます。
今言葉のごまかしが顕著な時代にあってはなおのことその言葉をより吟味し疑問を持つことが極めて重要だと私は思うのです。
以上となります。
ご覧いただきましてありがとうございました。