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経済

「アベノミクスで雇用は改善した」の是非について

更新日:

アベノミクスのおかげで失業率は過去最低の・・・・・

アベノミクスのおかげで有効求人倍率は過去最高の・・・・・

アベノミクスのおかげで雇用は過去最高水準を維持しております!

 

 

あなたはアベノミクスの成果を聞かれた時に何をあげるでしょうか。

幾つかあると思います。

例えば、それは株価だったり上場企業が過去最高益を出していたりなどといったものでしょう。

 

 

その中でも安倍政権支持層が頑として主張するものがあります。

それが今回のテーマである雇用の改善です。

これはアベノミクスの生命線とも言われています。

 

なぜなら、株価については株をやっていない人は実感が無いと言えますし、上場企業の過去最高益についてはほとんどの人が上場企業にいないと述べれば論理が簡単に破綻するからです。

 

しかしながらどうでしょう。

アベノミクスで雇用が改善したと言われるとそれはいかに安倍嫌いの人間と言えど一蹴することは難しいように思います。

 

求人倍率、失業率、就業者数などがポジティブな数値を示しているということができますからね。

 

そういうわけで、今日はアベノミクスの成果としてよく挙げられる雇用改善について取り上げたいと思います。

 

ちなみに中立偽装するつもりも無いので、あらかじめ私の立場を改めて述べておきます。

私の見解は「ないという立場まではとらないが、アベノミクスとの因果関係を認めるのはそう簡単では無い」というものです。

 

■アベノミクスは雇用改善に寄与したという主張の論拠

まず、アベノミクスが雇用改善に寄与したという学者の人々が必ず使う指数を見ていきましょう。

二つあります。それは「就業者数」と「完全失業率」です。

野口旭さんという方が「就業者数の急増と完全失業率をもたらしたのは安倍政権以降だ」と断言していますがその根拠に上記2点を挙げています。

アベノミクスが開始された2013年以降は、単に失業率が低下を続けたのみではなく、就業者数と労働力人口がともに、明確に増加し始めるようになった。つまり、アベノミクス以降は、それ以前とはまったく異なり、「労働力人口が拡大に転じたにもかかわらず、就業者数がそれ以上に拡大し、結果として失業率が低下した」のである。

『アベノミクスが雇用改善に寄与した根拠』2017年10月13日(金)16時30分 Newsweek (チャートは下記リンク前ページ)

https://www.newsweekjapan.jp/noguchi/2017/10/post-14_3.php

 

これに追随するのはメディアでもおなじみの高橋洋一氏です。彼もまた、就業者数と失業率(+有効求人倍率)を見れば雇用の改善は明快だと断言します。

 これらを見ると、インフレ率はハイパーインフレになっておらず、国債暴落にもいなっていない。それどころか、有効求人倍率、失業率、就業者数を見れば、雇用の改善が一目瞭然だ。

毎日新聞では、有効求人倍率の改善は「人口減少に伴う人手不足が背景」と説明しているが、間違いだ。

というのは、就業者数が増えているので、雇用が拡大して、失業率が低下している。民主党政権下でも人口減少があったが、そのときより就業者数が増加し、失業率が下がっているのは、労働に対する派生需要が増えた証拠である。

なお、就業者数を増やしたのは、過去の30年間の政権でも、橋本政権、小泉政権のほか、安倍政権しかない。

『安倍政権5年間の通信簿は雇用の確保で70点の及第点だ』2017.12.28 DIAMOND Online(チャートは次のページ)

https://www.newsweekjapan.jp/noguchi/2017/10/post-14_3.php

両者ともに同じグラフを用いてアベノミクスによる雇用改善を断言しています。

 

その他にもいろいろ調べてみましたがいわゆる安倍政権による雇用改善を説く人は概ねこの論を展開しているようです。(他にあれば教えてください)

 

 

ところで、アベノミクスの「何が」雇用改善に影響したのでしょう。

 

「アベノミクス」というのは単なるバズワードですからね。

それゆえに具体的に何をしたから雇用が改善したのかということまで掘り下げないといけません。

 

それについては、高橋洋一氏が解説しているものがありました。

それを確認しましょう。

 

結論から申しますと、高橋氏によれば、アベノミクス第一の矢である金融緩和こそが雇用改善に影響を与えたもののようです。

金融政策と雇用。アベノミクスの雇用改善を偶然や他力本願といっている左巻きが多いが、マクロ経済の無知晒しだけではなく、偶然といっていると雇用政策をやるつもりがないとみなされているのに気がつかない

彼によればアベノミクスによる金融緩和が雇用に影響を与えているというのはマクロ経済を学べばすぐにわかるとのことです。

 

高橋氏は切れ味鋭く断言するというのが性格タイプのようで、他の記事においても金融緩和が雇用に影響を与えると断言しています。

 

 

かいつまんで私なりに金融緩和と雇用の因果関係を要約します。

金融緩和というのは中央銀行による金利の引き下げと預金準備率の引き下げによる通貨供給量の人為的な拡大です。

ちなみに「金融緩和」の辞書的な意味は下記です。

日本銀行(中央銀行)が不況時に景気底上げのために行う金融政策の1つ。金融緩和政策ともよばれる。景気が悪化したとき、国債を買い上げたり政策金利と預金準備率を引き下げたりすることによって通貨供給量を増やし、資金調達を容易にする政策をさす。また、国債や手形の買い上げによって通貨供給量を増やす政策を、特に量的金融緩和政策(量的緩和)という。

https://kotobank.jp/word/%E9%87%91%E8%9E%8D%E7%B7%A9%E5%92%8C-178895

これにより企業の資金調達を容易にし、設備投資などを容易にする効果があると言われています。そして投資に連動して雇用が生み出されると。

 

 

このイメージは飲食店の新規出店を考えている会社をイメージしてください。

オーナーとしては金利が低くなれば返す金額が減りますから「よし出店しよう」と相対的に思いやすくなります。

そして、出店した後はスタッフが必要になりますから雇用をしなければと考えるという話です。

 

 

それほど難しい話ではないことでしょう。

こうして金融緩和を通して世の中全体にお金を回し雇用も増え景気が浮揚するという理論が実現すると考えられているのです。

 

 

少しこの章をまとめます。

高橋氏(や野口氏)がアベノミクスで雇用は改善したと断言していました。

その理由にアベノミクスが民主党政権より金融緩和をやったからだというものをあげていました。

 

その背景には、マクロ経済の参考書が教えてくれる「金融緩和をした→雇用が増えている→景気が良くなっている」というロジックがあるからなのです。

 

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■アベノミクスの雇用改善はデマだという主張の論拠

さて、続いてアベノミクスと雇用改善には因果関係はないという主張を検証しましょう。

こちらの主張の根拠としては、「雇用改善」の指数がアベノミクスによるものではなく、人口動態による自然現象だというものがほとんどです。

著名な論客として三橋貴明氏がいます。彼は、日本の雇用の改善を少子高齢化によるものだと述べます。

少子高齢化により、人口の瘤である団塊の世代が労働市場から退出したとしても、それを埋める若者は労働市場に入ってきません。日本の雇用の改善は、少子高齢化による生産年齢人口比率低下がもたらす「必然」なのです。

『「完全失業率3%未満の日本」という幻。政府の嘘とカラクリを暴け=三橋貴明』2017年4月4日

 

続いては野口悠紀雄氏です。同氏も各論は同じです。

厚生労働省は、有効求人倍率の上昇を、「景気が緩やかに回復していることに伴い、雇用情勢も改善している」ことの反映だとしている。

しかし、内容を分析すると、高い有効求人倍率が示すのは、人手不足の深刻化であり、賃金が低い分野での超過労働需要であることが分かる。

『有効求人倍率が高くても、決して歓迎できない理由』2016年06月09日  Diamond Online

http://diamond.jp/articles/-/92727

人手不足で求人倍率の改善や失業が減っているという理屈は三橋氏と近しいものがあり、人口動態の変化こそが雇用改善の指数を変えているものだという主張のようです。

 

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■アベノミクス雇用改善についての私見

さて、私の主張に入っていくわけですが、私は経済学者ではないのでアベノミクスに雇用改善効果があるとも雇用改善効果がないとも断定できない立場です。

それを踏まえて読んでもらえればと思います。

 

結論としては色々な解釈の余地がありすぎて決めがたいもののアベノミクスによる雇用改善には色々と疑問符がつくというものです。

 

違和感を持つ例は幾つかあるのですが、とりあえず3つほどあげます。

一つ目の例ですが、先の高橋氏を筆頭に「就業者」の急増をアベノミクスによる雇用改善を示すためによく使用していますがこの指数が結構怪しいものなのです。

 

「就業者」の定義をご存知でしょうか。

定義を知っていくと本当に疑わしい統計指数なのです。

 

統計局のホームページによると「就業者数」の定義は下記です。

就業者 : 「従業者」と「休業者」を合わせたもの

従業者 : 調査週間中に賃金,給料,諸手当,内職収入などの収入を伴う仕事(以下「仕事」という。)を1時間以上した者。
なお,家族従業者は,無給であっても仕事をしたとする。

休業者 : 仕事を持ちながら,調査週間中に少しも仕事をしなかった者のうち,

  1. 雇用者で,給料・賃金の支払を受けている者又は受けることになっている者。
    なお,職場の就業規則などで定められている育児(介護)休業期間中の者も,職場から給料・賃金をもらうことになっている場合は休業者となる。雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づく育児休業基本給付金や介護休業給付金をもらうことになっている場合も休業者に含む。
  2. 自営業主で,自分の経営する事業を持ったままで,その仕事を休み始めてから30日にならない者。
    なお,家族従業者で調査週間中に少しも仕事をしなかった者は,休業者とはしないで,完全失業者又は非労働力人口のいずれかとした。

http://www.stat.go.jp/data/roudou/definit.html

ここを読むとわかるのが「月に1時間でも労働をした人」か休職中ないしは休業中でも給与もしくは収入を得ていた人ということになります。

 

一般的なイメージとことなりませんか?

「就業者が増えた」と聞くとなんとなく週に何時間もアクティブに働く人が増えたというイメージをもちがちです。事実私がそうでした。

 

しかし、すでに記載のある通り実際のところ「就業者」の定義は月に1時間働けばカウントされる程度の指標なのです。

これが何を意味するかというとそれが増えることが「景気がいい」という結論出しをするのは早いのではないかということです。(悪いと言いたいわけではない)

 

移民が増えたり学生ながら働かなければならない人が増えたといったいろんなストーリーが想定されます。

 

 

二つ目はマクロ経済で言われる「金融緩和で雇用が増える理論」はその細部をよく見ていくと本ケースでは当てはまらないのではないかということです。

確かに金融緩和していますし、雇用指数も各種改善しています。

 

しかし、両者に因果関係があるかというと怪しいということです。

 

なぜかを少しだけ書かせてもらいます。

それは、マクロ経済で言われる両者の因果関係が見られる時に起きるはずの現象が起きていないからです。

 

マクロ経済において「金融緩和で雇用が増える」という理屈はひとっ飛びで方程式化されるものではありません。高橋氏自身があげているように需要増大による物価上昇が同時に見られないといけません。だから黒田総裁はインフレターゲットというのを掲げていましたし、高橋氏も著書の中でインフレターゲットを掲げていたのです。

 

要するに需要が増えることで雇用が生まれるという単純な話です。

その結果を検証するためにインフレ率をベンチマークすると。

 

 

しかしご存知の通り日銀総裁自身が認めているようにアベノミクスが始まって5年経ちましたがインフレ状態ではありません。

 

 

原油高などが誘導する意味での物価上昇は起きていますが、そういった生活必需品を除いた物価は伸びていません。(つまり、需要増大インフレが起きていない)

需要を牽引する消費も増えていません。

 

つまるところ、雇用は増えているにせよそれがアベノミクスの金融緩和によるものかと言われるとマクロ経済の教科書的に見てもおかしいということなのです。

 

最後の例になります。増えている雇用の内訳を見ていくと金融緩和関係と因果関係があるのかと思いたくなるものばかりだということです。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000114174.pdf

 

下記のレポートの8枚目を見てみるとわかるのですが、新規求人の圧倒的に一位が医療福祉なのです。

これは、利子率云々の影響がないとは言いませんが、少子高齢化による自然発生的な需要と考えるべきではないでしょうか。

 

その他増えているのがホテルなどのサービス業系というのもインバウンドによる需要増大で金融緩和により起きたと見えないのです。

金融緩和ではなくビザ緩和により起こされたと私には見えます。

 

 

 

さて、3点ほど金融緩和による雇用創出理論に反証をぶつけてみました。

実際のところは他にも違和感を感じるところがいくつもあるんですよね。

 

この記事を通して言いたいことは一つです。

金融緩和がそれほど万能な特効薬かというと怪しいということですね。

 

そもそも論でいうと、日本の利子率の低さは緩和前から凄まじく低く、金融緩和による利子率の引き下げ幅はそれほどのものではありませんでした。(つまりそれほど効果があったとは言い難い)

 

利子率が何もしなくて低いということは投資先がないということなのです。

20世紀までの成長が当然の世界観ではありえない現象でした。

しかし、今現在この奇妙な現象が起きているのです。

 

この利子率の異常な低さを引き起こすものを資本主義の終焉と述べるのが水野和夫さんです。

私もこの見方に大いに納得しています。

 

何はともあれ、もともと金利が低い中で金融緩和がそれほど素晴らしいものなのか。マクロ経済は21世紀のパラダイムで当てはまらないのではないか。

 

そういった従来の理論を疑う姿勢が求められていると思うのです。

以上長くなりましたがこれにて終わりといたします。

 

 

参考文献

 

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