前のページでは「株価」と「円安」というアベノミクスで成功とされている指数が問題ありということを書いてきましたが、残りを引き続きここでは書かせていただきます。
よろしくお願いいたします。
最初から読んでいただける方は下記を。
■目次
▶アベノミクス「成功」の根拠を疑う③ーデフレを脱却しつつありますー
▶アベノミクス「成功」の根拠を疑う④ーアベノミクスで賃上げを実現しましたー
▶アベノミクス「成功」の根拠を疑う⑤ー実質GDPを増やしましたー
■アベノミクス「成功」の根拠を疑う③ーデフレを脱却しつつありますー
続いては消費者物価指数です。
こちらについては、すでに円安のところである程度述べましたので簡素に書きます。
とにかく政府側の発表には嘘が多すぎるんです。そこを重点的に書きます。
先ほどと重複しますが、そもそも論として「デフレ脱却」と言ってるからには物価が落ちているはずなんですがそれが事実と異なるんです。
具体的には、円安によって原油などを筆頭とした輸入物価が値上がりにつながり、生活コストが高まっているんです。
悪性のインフレです。スタグフレーションというらしいですね。
これはアベノミクスの失敗を断言できる大きな要因です。
重複する部分もありますが改めて見ていきましょう。
先ほども引きましたが下記のグラフの上のものを見てください。
普通に物価が上がっています。(2015年を基準にグラフを作るという印象操作をしていますが)
そしてこの物価上昇は為替と強い相関が見られるんです。
ヤフーのサイトで見ていただければと思いますが、2013年から急速に円安が進んでいます。
https://info.finance.yahoo.co.jp/fx/detail/?code=USDJPY=FX
つまり、為替のせいで物価が上がったのです。
その間に賃金が上がっていれば国民にとっては問題ありませんが、名目賃金は上がっていません。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/27/27p/dl/sankou27p.pdf
もう何が何だか私もわからないんですが、確かに「みんなが待ち望んだデフレは脱却しているけどただの生活苦が起きているだけ」なんです。
アベノミクスの成功としてKPIに置かれていたものが逆にアベノミクスの失敗を決定づけているのです。
ちなみに黒田総裁は少し頭がおかしいんです。
彼には「とにかくインフレさせれば景気が良くなる」という考えがあります。
2%の物価安定目標の実現に向け、原油価格の大幅な下落が「金融政策運営に新たな難題をもたらした」と指摘した。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGC04H07_U5A600C1EAF000/
原油安になった時に嘆くって「経世済民」の観点から見たら「素人以下の経済理解」です。
こんな当たり前のことを日銀総裁が知らないんです。
我が国は免許持ってない人に高速バス運転させてるんです。
どれほど異常かは説明するまでもないレベルかもしれません。
■アベノミクス「成功」の根拠を疑う④ーアベノミクスで賃上げを実現しましたー
さて、続いては名目賃金を見ていきましょう。
これはさすがに経世済民から見てもいいのでは?と思われるかもしれません。
「首相官邸のホームページには賃上げをしました」と書いてあり、平均月額の給与が過去15年で最高、夏の賞与については過去23年で最高と書かれているんです。
もしこれが広く国民の実態を示しているものならいいですよね。
ただ、先ほども言ったようにこの記載には算出元が書かれていません。(多分意図的)
おそらく大企業(経団連加盟企業)からとったのだと思われます。
というのも無作為にNを抽出した厚労省のデータを見るとこの発言はおかしいんです。
*上切れちゃってますが、名目賃金の推移です。今から5年前の平成22年(2012年)をベースに書かれています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/27/27p/dl/sankou27p.pdf
安倍政権が発足した2013年以降、民主党時代より名目賃金が悪化しているんです。
むしろここ25年で最低です笑
厚労省の方に関しては政府発表と違い隠蔽されず、算出元が明快だったので、引用します。
日本全国にある全ての事業所を調査する方法もありますが、それでは時間もお金もかかりすぎます。毎月勤労統計調査では、調査する事業所について、それが全国の縮図となるように一定の精度を保つ標本数を確保しつつ、無作為に事業所を選ぶ方法を採っています。
なお、調査対象事業所については一定期間をおいて見直しを行っています。
最高の調査方法とは言いませんが、無作為に選んでいるということでまあ悪くないと思います。
しかし、首相官邸のホームページのここ15年で最高はなんなんでしょうね。
大企業で円安の恩恵を受けたところの数値だけを持ってきたのでしょうか。
それならただの詐欺ですし、よく言って人でなしでしょう。
広く国民を見渡せば全くもって賃上げの波は起きていないんです。
もちろん厚生労働省が安倍政権を倒すべく上記のようなグラフをごまかして作った可能性は否定できません。
ただ、政権を倒すメリットが私には見えてこないため政府発表よりは支持できるグラフではないかと思います。
■アベノミクス「成功」の根拠を疑う⑤ー実質GDPを増やしましたー
さて、ようやく最後です。お付き合いいただきありがとうございます。
首相官邸のホームページを見ると実質GDPが伸びたと書かれています。
これは国民が富を増やしたという意味でアベノミクスの成果ではないか?と言われる方も多いでしょう。
ただ、これも怪しいんです。
何が怪しいって2016年にGDPの算出方法をいじって1994年以降のGDPをすべて改定して公表したんです。
概要については下記を見るといいのですが、見ると眠くなるのでかいつまんで説明しますと1993SNAというこれまでのGDPの算出根拠を変更しSNA2008という国際基準の変更に合わせてすべてグラフをいじりましたということなんです。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/seibi/2008sna/2008sna.html
以前の基準との最大の違いは研究開発費用を加えることができるようになりGDPが20兆程度上積みできているのです。ただこれは基本的にすべての年にある一定金額が上積みとなるため印象操作にはなりません。
本丸は別のところにあります。これは『アベノミクスによろしく』の明石順平氏が指摘されているのですが「等」というところが重要です。
GDPの算出方法変更にいろいろといじりましたという報告が下記の資料にあるのですが、「等」としてごまかされている部分がとても大きいのではないのかということですね。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/seibi/2008sna/pdf/20161130_2008sna.pdf
明石氏によればこの「等」によりアベノミクスは「大失敗」から「大成功」に変わったと述べます。これは確かにすごいんです。
同氏の主張には極めて説得力があり、このGDP改定によりアベノミクス以降だけ異様な上積みがあるのです。
ただ残念ながらこの数値の内訳が出されていないとのことで、追求はしきれないというのが氏の現在地のようです。私も調べましたがわかりませんでした。
謎の積み上げが異常に乗っかっているということしかわからないようです。
これはもう地下鉄の民営化なども財政効果に組み込んでいた大阪都構想と同じ匂いがしますね。
アベノミクスの失敗が明らかになったので統計自体をいじりに行ったってもう姑息以外の言葉が見つかりません。故意の欺瞞が幅をきかせる時国は滅びるというのは多くの賢者が述べたことですが、今の日本はその可能性が否定できませんね。
3に続く