経済

アベノミクスで話題の名目賃金と実質賃金についての考察

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「アベノミクスで実質賃金が下がっている。だからアベノミクスはダメだ」

「アベノミクスで名目賃金は民主党の時に比べてよくなっている。これはアベノミクスの成果だ」

 

 

アベノミクスの是非に関して雇用指数や物価指数など多くの統計指数が取り上げられますが、とりわけその中でも多く取り上げられるのが今回テーマにしている名目賃金と実質賃金という指数です。

 

賃金についての指数が二つもあるためエコノミストや大学教授がアベノミクスの論争時に賛成派反対派が同じ土俵に上がれていないことが多くいつも互いに言いたいことを言って終わってしまっているのです。「あいつらバカだ」と互いに思っていますね多分。

 

 

素人の私は両方が正しく見えてきてしまうということもあり、今一度この名目賃金と実質賃金を理解してみようと考えました。

調べた結果ですが、結論から述べますとこの指数のどこをどう見るかというところでアベノミクスの成功失敗の解釈がかなり変わります。

 

 

私は個人的には移民政策をやったり積極的財政出動と言いながら民主党より緊縮財政をやる安倍さんを単なる嘘つきであると考えており、アンチ安倍です。

だから基本的に彼の述べる改革はロクデモナイものという立場をとるわけですが、思考停止してはいけないと思い今日はそれは脇に置いてこの名目賃金と実質賃金について双方のメリットデメリットや解釈する際の注意点についてまとめてみました。

 

■目次

名目賃金に注目する重要性と批判されるケースについて
実質賃金に注目する重要性と批判されるケースについて
アベノミクスをどう評価すべきか

■名目賃金に注目する重要性と批判されるケースについて

「アベノミクスでベースアップを実現しました。」

 

ということを記者会見で述べていましたね。以下の記事でも述べられています。

デフレ脱却”を確実なものとするために“経済の好循環”の実現を目指す安倍政権の下、2015年は2年連続となる2%台の賃上げが実施され、賃上げ率は17年ぶりの高水準となった。1990年代後半以降、賃上げのほとんどが定期昇給のみであったが、企業収益の改善、労働需給のタイト化が進み、政府による賃上げ要請が後押しする形で、大企業を中心に数年ぶりとなるベースアップが実現された。

『アベノミクス始動後の賃金動向 ~2016年春闘を展望する~』ニッセイ基礎研究所2015/12/28

http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=51817?site=nli

 

賃上げ率が高かったということを上記記事では指摘しており民主党時代にはなかった現象が起きているということからアベノミクスの成果という見方が強いようです。

その他、名目賃金指数に近しいものとしてアベノミクス以降では平均給与所得並びに総給与所得が高まったという指摘がよく持ち出されます。

 

国税庁が出している『民間給与実態統計調査結果 総括表』というものがあるのですがこちらを見ると確かに平成24年の191099637百万円だったものが平成28年207865534百万円と上昇トレンドにあり、税収及び被雇用者数も増えアベノミクス以降に生まれた変化感と言っても良いかもしれません。また平均給与も平成24年が408万円に対して平成27年420万円とあります。

https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/jikeiretsu/xls02/m01.xlsx

 

こうして雇用改善もし、総給与所得も増えたアベノミクスはすばらしいとなるようです。

これに関して批判される点を見ていきましょう。

 

まず見るべきはアベノミクス反対の急先鋒でもある赤旗の見解ですね。

Q 賃金が2%アップしたというが

A 実質賃金は目減り 増税と物価高で生活苦

 賃金は増えたんでしょう?

 いえいえ、目減りしているんです。

ことしの春闘で賃金は、労働組合の連合の調査で2・07%(厚労省調査では2・19%)アップしました。

これは毎年自動的に上がる定期昇給分を含むもので、本来の賃上げであるベースアップは1%もないといえます。昨年に比べると金額でわずか1062円、率にして0・36ポイント上がっただけです。

この上昇分は、4月からの消費税増税と円安による諸物価高騰でたちまち消えてしまい、実質賃金は大幅に落ち込みました。夏のボーナスが出た7月も含めて15カ月連続で実質賃金が前の年を下回り、労働者の生活が苦しくなっているのが実態です。

安倍首相は、「名目賃金は上がっている」と言い訳していますが、賃金が目減りして家計がきびしくなっている現実の前ではまったく無意味な反論です。

 

『安倍首相の雇用・賃金発言 本当なのか』2014/11/29

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-29/2014112906_01_1.html

赤旗の記載によれば、アベノミクスで確かに名目賃金が上昇したかもしれないということは認める一方で、定期昇給分をさっぴけば微々たる数値であり、なおかつ為替の円安誘導で輸入物価が実質的に高騰した結果、むしろ状況は悪化しているとのことです。

 

この後、赤旗は内部留保を市場に回せととんちんかんなことを言っているのですが、それはともかくとして上の記載に関しては偏見を持たずに見ればそれとなく説得力があることを述べています。

 

そしてここで出てくるのが「実質賃金」というワードです。

名目賃金vs実質賃金という前提の違いこそがボトルネックなのは間違いありません。

続いて実質賃金を見ましょう。

 

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■実質賃金に注目する重要性と批判されるケースについて

実質賃金は物価上昇及び下落を考慮するため「購買力」を定量化したものとしてアベノミクスにおいて主流的な指数です。

 

代表的なものとして下記の記事を取り上げます。

グラフにあるように、今の安倍政権の2013年から2016年の4年間の実質賃金は、いずれも過去最低を記録しています。ようするにアベノミクスは史上最悪の賃下げ経済政策を4年間続けたわけです。・・・・ そして、安倍政権が始まる直前の2012年の実質賃金に、国税庁「民間給与実態統計調査」の2012年の平均給与408万円をあてはめて起点として計算すると、グラフにあるように、2013年は404万円、2014年は393万円、2015年は389万円、2016年は392万円となります。

『安倍政権の4年間で労働者の賃金は54万円消えた――過去最低の実質賃金を4年間続けたアベノミクス』2017/9/25

http://blogos.com/article/248202/

ここで名目賃金の調査の際に取り上げた『民間給与実態統計調査』がまた出てきます。

先ほど平均給与が平成24年が408万円に対して平成27年420万円と述べました。

 

しかしながら、こちらも物価を考慮した上で実質賃金に差し替えると状況が変わるんです。

2012年の408万円を起点に平成27年の420万円も物価上昇率をならすと392万円になるとここでは書かれているんですね。

物価を考慮に入れると完全に悪化してます。

 

つまり名目賃金でみるか実質賃金でみるかでアベノミクスの成果はひっくり返るのです。

 

さてここでは先ほどとは逆に名目賃金を支持する人が実質賃金指標を持ち込むアベノミクス反対派に持ち出す議論も見ましょう。

いろいろ調べたところ実質賃金より名目賃金を優先する人にはこういう意見があります。

  1. デフレ(持続的な物価下落)にしたら実質賃金は上がるがGDPは縮小し、国が後退するので長い目で見た場合不適切なことがある。(デフレマインドって奴?)
  2. 労働者のうち給与の低い人の首を切れば実質賃金はあげられるから実質賃金が必ずしも高いことが国民にとって良いとは限らない。
  3. 民主党時代に比べ新規雇用が生まれているが故に今までカウントされていなかった人が市場に入ってきている。だから単純比較はできない。

確かにこれら3つは筋が通っている気がします。

順に見ていきますと、一つ目の趣旨としてはデフレ状態だと一時的に実質賃金は上がるかもしれないが、回り回ってその指数も下がり始めるというのが一つ目の言いたいことなのでしょう。

 

二つ目と三つ目も筋は通ってます。

というのも先ほどの国税庁の調査は税金を収めていない失業者はカウントしていない指数だからです。

雇用を増やしたから民主党の時の実質賃金と比較するのは不適切であるという言い分ですね。

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■アベノミクスをどう評価すべきか

さて、アベノミクスをどう評価すべきかですが、論理だけを冷静に見れば実質賃金指数を追いかける方が優勢のように思えます。

純粋に国民の購買力が比較できる数値ですから誠実と言えるでしょう。

 

ただ、もちろん上に書いたように実質賃金指数も問題がなくはないので完全敗北ではないでしょう。

そういったこともありアベノミクスの是非を断言するのはそれほど簡単ではないというのが私の結論です。

 

 

例えば、ここまでは数値に重きを置いた論考でしたが、名目賃金派の優位点として、理論では計れない感情面でプラスに作用すると言うことも考えないといけません。ケインズが下記のように述べているのですが、これは説得力があります。

事実、貨幣賃金交渉を下方に改定しようとの雇用者の動きに対する抵抗は、物価上昇の結果、実質賃金がなし崩しに、自動的に引き下げられる際に遭遇する抵抗とは比べ物にならないほど頑強である。

『雇用、利子及び貨幣の一般理論』ジョン・メイナード・ケインズ(2008)岩波文庫

ケインズがいってるのは市場にあるものの値段が上がったことよりも給与の手取りの増減に我々は著しく敏感だというものです。

 

ですから実質が著しく減るのではなく多少減る程度なら名目が伸びる方が人間のメンタルとしては嬉しいかもしれないというのは同意できます。理論だけで見た際にはこれは不適切ですが。

 

実際自分のことを考えてみると物価水準を考えながら買い物をしたことはありません。

そういった意味で名目賃金を手始めに上げることに「合理性」がないわけでもないのです。

 

 

他にも私のここまでの論考では結論を出し切れない理由があります。

その筆頭例が為替や日本がその大部分を輸入しているエネルギー価格です。

 

 

この辺りは絶えず変動するため単純比較を難しくします。

調べたところ日本では実質賃金を算出する上で必要となる消費者物価指数に原油価格などを含まないCPIを使うのが主流的のようです。

それを入れないにもかかわらず、多分に国民の所得に影響を与えます。何をするにも石油いりますからね。

 

 

為替についても民主党の時と自民党の時では大きく異なります。

 

 

昔は円安が日本をよくしていたと言われていましたが、多くの製造業の工場が世界中にある現在その効果は疑問です。

逆に円高の方が原油価格などが実質的に下がるため良いところも多分にあります。

 

 

最後まとまりがありませんでしたが、「いろいろと考えることが多いから論争は終わらない」これが私の現時点での結論です。

参考になれば幸いです。

 

p.s

そうは言いつつ反アベノミクスに気持ちがあるのが私です笑 すいません賛成派の皆さん。

考える背景には、先ほど単純比較が難しいと述べたものの安倍政権の方が民主党よりは下駄を履いてると考えられるからです。

 

その下駄とは原油価格です。

 

http://ecodb.net/exec/trans_image.php?type=PCP&g=oil&ym=Y&cr=

上記のグラフを見ると民主党の政権時代をピークにして2016年には3割から4割原油が安くなっていることが読み取れます。

 

原油というと馴染みがないかもしれませんが、農作物を作るのにも工場を稼働させるにも電気をつけるにも何をするにも石油が関わっています。それが安いということは実質的な購買力や企業の経費が減り利益が出しやすくなるのです。

 

民主党が良かったと申し上げるつもりは毛頭ありませんが、原油安の恩恵を民主党より受けながら実質賃金を減らしているアベノミクスを成功と呼ぶのはいささか無理筋ではないかというところに私がアベノミクスに懐疑的な最大の理由があるのです。

 

 

まだまだ勉強したいので新たなものの見方をご存知の方はぜひコメントお願いします!

 

 

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