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フェルナン・ブローデル『歴史入門』がおすすめな理由

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今日は久々におすすめの本を紹介する記事を書かせていただきます。

 

本日はアナール学派として著名とも言われるフェルナン・ブローデル『歴史入門』をおすすめの本として取り上げたいと思います。

 

「歴史」というとどういうものを思い浮かべますか。

 

おそらく真っ先に歴史年表的なものを思い浮かべることでしょう。

私自身もブローデルを読む前はそういった認識を持っていました。

 

しかしながら、フェルナン・ブローデルの語る「歴史」というのは少し異なった角度から歴史を捉えます。

実はこのブローデル的な歴史の捉え方は的確な未来予測すらも時折できてしまうほど優れたものだと多くの識者が述べています。

 

それゆえにブローデル的な「歴史観」を知ることは大いに我々の思考の幅を広げてくれるのです。

 

そういうわけで、今日は僭越ながらブローデルの「歴史の捉え方」について私の方から少しご紹介させていただきます。興味を持っていただけたらぜひ買っていただけると幸いです。

 

■ブローデルの歴史の捉え方

早速ですが、ブローデルの歴史の捉え方がどういったものかについて書いていきます。

 

ブローデルは「世界=経済」として歴史を捉えました。

これだけではなんのこっちゃとなるかもしれません。

 

ですので、ブローデルの「世界=経済」という概念を私なりに補足していきます。

 

ブローデルは、世界の歴史は常にある(経済的な)中心点が存在し、そしてその中心の周りに広がる地域を作るということの繰り返しだと指摘しています。

そして、その中心点は何かの拍子(軍事的なものや地政学的なものが多い)に別の地域に移ることがあるというのです。

 

『歴史入門』において彼は下記のように述べています。

・・・世界=経済は、幾つかの連続した地帯に分かれる。まず中心地帯、つまり、中心の周りに広がる領域がある。十七世紀にアムステルダムが世界を支配していた時のオランダ連合州や、一七八〇年以降、ロンドンが決定的にアムステルダムにとって代わってからのイングランドなどである。次に、中心軸の周りに中間地帯が来る。最後に、非常に広大な周辺地帯ー世界=経済を特徴付ける労働の分割によって、利益をかぶるよりは、むしろ支配され従属を余儀なくされた周辺地帯ー世界=経済を特徴付ける労働の分割によって、利益をかぶるよりは、むしろ支配され従属を余儀なくされた周辺地帯ーが存在する。こうした周辺地帯での人間の生活は、まさに煉獄、いや、生き地獄とさえいい得るようなものだった。それもただ全くもって、地理的な位置の為せる技に他ならなかったのだ。

『歴史入門』フェルナン・ブローデル(2009)中公文庫 P105

ここに書いていることを要約すると、世界の歴史は常にある「中心都市」を生成してきたということがまず書かれています。

そしてその都市になれなかった周辺はその都市を富ませるために事実上従属関係にあるということがここでは暗に示されています。

 

中心都市はここではアムステルダムからロンドンの例が挙げられていますが、アムステルダム以前からも中心の移動が繰り返されてきたとブローデルは述べています。

 脱中心化が生じるたびに、必ず最中心化recentrageが起こる。あたかも、世界=経済は中心ないし重心なしには存在しえないかのように。とはいえ、脱中心化も再中心化も稀にしかなく、それだけ余計に重要さを増すのである。ヨーロッパと、それに併合される地域の場合、中心化は、一三八〇年代に起こり、ヴェネチアを優位に立たせた。一五〇〇年代二、ヴェネチアからアンヴェルスへ、急激で大規模な跳躍があって、ついで一五九〇ー一六一〇年頃には、再度、地中海に、しかし今度はジェノヴァに移動する。そして、一五五〇ー一五六〇年頃に、アムステルダムに移り、以降ほとんど二世紀間二渡って、ヨーロッパ地域の経済の中心はこの地に居座ることになる。だが、やがて一七八〇年から一八一五年にかけて、ロンドンに移り、さらに一九二九年には、大西洋を渡って、ニューヨークに居を据えたのである。

『歴史入門』フェルナン・ブローデル(2009)中公文庫 P108

ヴェネチアからアンヴェルス、アンヴェルスからジェノヴァ、、、、そしてニューヨークへと中心が移動をしていったとここでは書かれています。

 

 

平たくまとめるとブローデルの歴史観は国家ごとの歴史年表的なものに着目するのではなく、国家の枠を飛び越えて世界という枠で起きているある普遍的な現象を捉えようとする試みなのです。

 

具体的に、ブローデルが考える普遍的な現象とは、都市を筆頭とした少数による周辺からの富の独占(や収奪)の事だと私は理解しました。

 

なんかこう書くと「そんなに大したこと言ってなくない?」みたいな感じになるかもしれません笑

 

ただ、ブローデルをよく読みこの文字面をもう一度みると全く違う光景が見えてくると私は考えています。

 

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■ブローデルの新しさ

ブローデルの新しさは何かに話を移します。

 

彼が歴史の研究を徹底的にして出したこの結論は派生して、一般的に信じられている共同幻想を次々に破壊していくところが面白いところです。一例をあげましょう。

 

 

例えば、ものの値段は需要と供給が均衡するところで決まるというなぜか根拠もないのに信じられている考えがありますよね。(均衡価格と言われる)

 

 

これをブローデルを筆頭としたアナール派は全く逆に見ます。

彼らの考えでは需要と供給が不均衡なところで価格は決まるというのです。

 

要するに「都市」において流通を独占する商人が価格をコントロールできるという話ですね。

 

ブローデルの視点から言えば市場原理主義者は、今目の前に見える売り手と自分しか見ておらず、その背景の諸々を見ないから本質を見誤るということなのです。

市場価格の変動、その上昇と下降、経済恐慌、遠隔的連動、一様化傾向等の現象を通して、交換量の規則的増大が目に見える現象だけに目を奪われはしない。彼の喩えを借りて言えば、井戸の中を覗き込んで、底深くたまった水にまで目をやることが、つまり、市場価格がその表面に達することはあっても、必ずしもその中にまで潜り込み、かき回すことまではできない物質生活という奥深い領域にまで目をやることが重要なのである。だから、二重帳簿を持たないような経済史、すなわち、井戸の縁とそこに溜まった水の両方を見ないような経済氏は、ひどく不完全なものとなろう。

『歴史入門』フェルナン・ブローデル(2009)中公文庫 P58

 

全然話はずれますがブローデルの主張が実体験としても理解できることがあります。

 

総合商社ってなぜかものを作っている人たちよりも高給取りですよね。あれって当たり前のようになっていますが、結構変だと思いませんか。

 

ブローデル的なものの見方の正しさをある種示しているように思うのです。

商人が介在することで(需要と供給で決まるはずの)市場が歪められているということです。

 

ちなみにブローデルは商人を敵対視するきらいがあり、彼らが健全な市場を妨げていると言っているのです。

 

商業の発展こそが資本主義の発展に寄与してきたというのはある一面では正解なのですが、もう一つの見方として、阻害している(生産者と消費者をぶった切っている)という見方もできるのは面白いと思いませんか。

そこには、幾分かの真実と、幾分かの虚偽とが、そして、錯覚もまた含まれている。事実上の、あるいは、合法的な独占によって、幾度となく価格が恣意的に決定され、市場がかき乱されてきたのではなかっただろうか。さらに何よりも、市場競争の利点を認めるにしても、少なくとも、市場による生産と消費の結びつきが不完全なものでしかないことを指摘しておく必要がある。その結びつきが部分的なものにとどまっているということからだけでも、不完全であることは免れがたい。

『歴史入門』フェルナン・ブローデル(2009)中公文庫 P60

 

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■ブローデルと合わせて読みたいおすすめの本

ブローデルは今書いたようなものの見方を180度変えるような示唆をで多く与えてくれます。

読んでみると間違いなくはまります。

 

この中心点の移動という観点で歴史を考えていくと今はニューヨークだけど、今後どうなるかという未来予想をするのに役立つかもしれません。

 

最後に合わせて読むと面白いおすすめの本をあげます。

ブローデルはいわゆる経済学という観点から経済を見るのではなく、安全保障やら地政学やらという複合的要因から経済を見ていくわけですが、これに近しい考え方をしている方々になります。

 

 

 

 

 

教科書的な理論モデルに踊らされ大衆に迎合することなく、リアルな現実を直視していくというところがこれらの著者には共通しています。非常にオススメです。

 

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