「ホワイト企業を見抜く方法が知りたい」
これは、新卒で就職活動をする人であっても、中途で就職活動をする人であっても思うことではないでしょうか。
一口に「ホワイト企業」といっても個人差がありますが、ここでいう定義は具体的には下記のようなものに該当する企業です。
- 業績が安定している
- 離職率が低い
一般的な就職本や転職本では企業選びでこれらを満たすアドバイスとしてどういうのが上がるでしょうか。
私の調べによれば下記の3点が企業選びに際してするように広く述べられていました。
- 「四季報で中期の会社の成長性を見ろ」
- 「ホワイト企業ランキングを見ろ」
- 「業界でのシェアを見ろ」
ただ、これらのアドバイスが「企業選びで重視するべきポイントだ」と言われると、ちょっと待ってくれと思いませんか。
というのも、中期経営計画や業界でのシェアを見れる企業ほどでかい企業などどれほどあるのかと。
中期経営計画などないところもザラにありますし、非上場でれば財務情報も公開されてないところが多々あります。
シェアに関して言えば、シェア何%と出る時点でそれなりの大企業であり、その時点である種、安定企業であるのは当然です。
何が言いたいかというとこれらはアドバイスであってアドバイスでないんです。
上場企業の中から企業選びができることを前提とするアドバイスは多くの人にとって参考になりません。
日本の法人の9割以上が中小企業ですから、これは再現性に乏しいとも思います。
そこで、本日は企業規模が小さくてもその企業がいいかどうかを「面接」で見抜くヒントについて書かせていただきました。
Contents
就業環境についての直接的な質問はしても意味がない
まず、99%の人がホワイト企業を見つけようとする過程で間違えていることがあると私は考えています。
それは、就業環境について知るために就業環境について聞こうとしたり調べようとしたりすることです。
例えば、「有給取得率はどのくらいか?」「離職率はどのくらいか?」「給与はどのくらい毎年上がるか?」などという疑問をきくケースがこれに該当します。
就業環境について知りたいのだから就業環境についてきくのは当たり前だろうと言われるかもしれません。
しかしながら、これをおすすめしないのには明確に理由があります。
それは、直接聞いたりネット上でそれを調ても「嘘」や「ごまかし」に誘導されてしまうことがあるからです。
例えば、あなたが面接で質問として「40歳での給与はどのくらいか」ときいたとしましょう。
この場合、「40歳で700万円くらい」と言われたとします。
しかしながら、この答弁には多分な「解釈」の余地があることにお気づきいただけるでしょう。
100人いるうちのたった一人について述べているのかもしれませんし、一人の2000万円プレイヤーに対してそのほかが年収300万円で平均700万円という伝達をしようとしているかもしれないのです。
他にも例を挙げると「残業代は出るのか」と聞いた時に、労基法の観点から原則論的に「出ない」と答える会社はありません。
なぜなら、そうだとすると一発で摘発されるからです。
しかし現実問題として多くの人がご存知の通り残業代の不払いというのは社会問題にもなっていることはご存知でしょう。
最近ではネットで評判を見ることも流行していますが実はこれにもリスクがあります。
なぜなら、今は弁護士にお金を払えば悪い口コミだけ消せて、自社で自作自演ももちろんすることができるからです。
役立つ情報が得られる時もあるでしょうが、そうではなくむしろより誤解を深めることも少なくないのです。
企業選びで重視するべきことー会社について徹底的に面接で聞くべきー
こういった容易に我々を欺きうる情報が散乱している中でできることは一つです。
就労環境について知るためには「会社について」もっときくべきなのです。
「会社について」聞くことで就労環境について知るということの具体的な例をあげましょう。
ある20代で1000万円稼げると掲げるハウスメーカーがあるとします。
「本当に稼げるのか」とあなたは疑問に思うでしょう。
そこでそれが知りたいあなたは「どのくらい稼げるのか」と面接で聞くとします。
するとなんと返ってくるでしょうか?
紆余曲折ありつつも「稼げるよ」という着地点のレスポンスが返ってくることは聞かずともわかるでしょう。
しかし、あなたはそれを聞いたところで「うん。納得!」と思わないでしょう。
嘘じゃないのか?と思っているからこそそもそも質問をしているわけで、目の前の話者にそれが大丈夫と言われたところで信じきれないのは当然です。
そこで聞いてほしいのが例えば次のような質問です。
- 売れ筋商品の販売価格帯は?
- 顧客がどういった層なのか?
- 顧客の開拓方法は?
- 組織の人員構成はどのようなものか?
- 競合でベンチマークしている会社は?
- プロダクトの利益率は?
他にもいろいろあるのですが、この辺りを聞けばおそらく入社後すぐや中長期についての「仮説」を形成することができると思います。
ビジネスモデルとして再現性高く利益を生み出せるものならば、給与もいいでしょうし、残業代もちゃんと払ってくれるでしょうし、有給休暇も取りやすいでしょう。離職率も低いはずです。
一方でそうでないならば、離職率は高いでしょうし、残業代の不払いもあるかもしれませんし、休日出社も当たり前のようにあるでしょう。
ビジネスモデルの問題点が従業員に波及するからです。
ちなみに、この問答がいい点は、相手が率直にそれに対して答えてくれる可能性が高い点にあります。(就労環境などを聞くのに比べて)
なぜなら、相手がウソやごまかしをする必要性がありませんからね。
企業選びで重視するポイントを押さえられるために必要な「社会学的想像力」
最後に就職活動をする際や転職活動をする際に読んでいただきたい本をご紹介いたします。
それは自己分析の本でもなければ業界研究本でもありません。
ライト・ミルズという人が書いた『社会学的想像力』という本になります。
企業選びで失敗しないための心構えはこの本で得られるでしょうし極めて実践的な思考法が身につくと私は考えています。
なぜなら、この著書が述べる「社会学的想像力」は企業選びにおいても役立つからです。
では、社会学的想像力とは何なのでしょうか?
それは、自分の目の前に見えている「解釈」の世界とは異なる世界へも思考を働かせることができることです。
人々が必要としているもの、あるいは必要だと感じているものとは、一方で、世界でいま何が起こっているのかを、他方で、彼ら自身の中で何が起こりうるのかを、わかりやすく概観できるように情報を使いこなし、判断力を磨く手助けをしてくれるような思考力である。こうした力こそが、ジャーナリスト、研究者、芸術者や公衆、科学者や編集者が切望しているものであり、社会科学的想像力とでも呼ぶべきものである。
『社会学的想像力』ライト・ミルズ(2017)ちくま学芸文庫
ここで、自分の中で起きていることと世界で起きていることをわかりやすく概観できるようになるべきだと書かれているのがお分かりいただけるでしょう。
それこそが「社会学的想像力」の中核です。
これについてはいうのは簡単ですが、考えが及んでいる人は多くありません。
なぜなら、意識をしなければ、私も含めて多くの人は自分の近くで起こっていることだけしか生活の中で捉えられないのが普通だからです。
しかし、それによって状況判断をしばしば誤るというのがミルズの主張です。
遠くにあるようで実は我々に多大な影響を与える外的変数をいかに捉えるかが必要と繰り返し彼は述べます。
これに関してはわかりやすい例を紹介してくれています。続けて引用します。
ある社会が産業化されると、小作農は労働者となり、封建領主は破産するか、そうでなければビジネスマンになる。階級が上がるか下がるかによって、職を得るか失うかが決まる。投資率が上がるか下がるかによって、新たな意欲が湧くか一文無しになるかが決まる。戦争が始まると、保険外交員がミサイル発射に駆り出され、店員がレーダー操作をさせられる。妻は一人で暮らし、子供は父親なしで育つ。個人の生も、社会の歴史も、そのどちらも熟知していなければ、それぞれを理解することはできない。
『社会学的想像力』ライト・ミルズ(2017)ちくま学芸文庫
戦争というものが起きると、個人の意思や解釈の外で起こるものとは無関係に、自分がミサイル発射に駆り出されるとあります。
少し極端な例にも見えるかもしれませんが、伝えたいエッセンスは明快ですね。
繰り返しになりますが、自分の努力や意思とは離れたところに目をやり、考えを働かせることで自分がなぜいまある行動を取らないといけないのかやどう行動すべきかが見えてくるということです。
「自分の努力次第」ということを述べるのがある種美学のように最近はなっています。
しかしながら、努力して見返りが大きいか小さいかは「環境」によります。
その「環境」を選び取れるかが重要です。
何でもかんでも環境のせいにしろと言いたいのではありません。
もちろん劣悪な環境でうまくいく人もいます。しかしそういったケースは避けられるのであれば避けるべきでしょう。
外的変数を掘り下げていったほうが自らの置かれるであろう状況を想像するのに役立つことが少なくないのです。
企業選びで重視したいポイントは全て直接聞いてはいけないということだけぜひ持って帰っていただければと思います。