最近メディアでたびたび報じられる「消費税アップ」ですが、いよいよ引き上げ延期作戦ではなく、上がりそうな気配を見せています。
安倍首相も3日前の10月24日に行われた臨時国会の施政方針演説で消費税増税の意気込みを語りました。
https://www.fnn.jp/posts/00403947CX
もちろん「確実に」などの文言はありませんので、再度延期にする選挙対策の一環である可能性もあります。
しかしながら、今回はトーンが結構強めのため私自身はニュートラルですが、引きあげに来る可能性はそれなりに高いと見ています。
そうなるといくら普段は政治に興味がない人でも無関心で入れないでしょう。
なぜなら、毎日買い物するものの値段が上がるわけですからね。
そんな我々にとっても死活問題の「消費税」について、なぜ政府はあげないといけないと言っているのかを私なりにまとめましたのでご笑覧いただけますと幸いです。
政府が発表する消費税アップの理由
そもそも消費税を政府が引き上げる理由はなんでしょうか。
国民に痛みを強いる中で、それなりの理由がなければ政権基盤を揺るがすほどの影響さえある施策です。
一般的に信じられている消費税アップの理由は財務省が発表している下記のものでしょう。
- 今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます。
- また、ここ10年くらいで見ると、所得税や法人税の税収は不景気のときに減少していますが、消費税は毎年10兆円程度(注)の税収が続いており、税収が経済動向に左右されにくく安定した税と言えます。https://www.mof.go.jp/faq/seimu/04.htm
「少子高齢化に伴い社会保障財源が足りないため」というものです。
この認識をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。
ただ、もちろんこれだけでは「増税」の根拠にしかなりません。
「増税」というアプローチのうち「消費税」をあげる理由は二つ目のところで決め打ちされます。
消費税は所得税やその他の税収に比べ景気変動の影響を受けにくいため「安定財源」として見込めるから行われると財務省は述べているのです。
政府が発表する消費税アップの理由はデタラメ
さて、今はやりの「ファクトチェック」をしましょう。
今回は消費税という徴税の手段自体の是非についてはさておき、「社会保障の安定化のために消費税増税はやむをえない」というところのファクトチェックを行います。
国民の皆様が寒い懐の金を献上しているのは政府が「社会保障を充実させるために使う」といってますからね。
さて結論から述べますと、これはタイトルにもあげましたが、デタラメでインチキです。
8%に引き上げられた時の事を検証すればそれは明らかです。
先の消費税アップで5%ー8%への引き上げが敢行された時に、消費税の増収はおおよそ5兆円増えたと言われています。
その5兆円を自民党は「すべて」社会保障の充実に使うと述べました。
しかしながら、これがデタラメだということが日に日に明らかになっています。
山本太郎氏の最近の街頭演説や先の国会での追求で話題になりましたが、この第一報は赤旗だと思われます。(私の調べでは)
山本氏・赤旗共に指摘内容は同様で消費税増税による増収分の使途はほとんど(およそ9割)が帳簿上の付け替えに過ぎないということです。
具体的には、今発生している社会保障のコストを増収分に付け替えただけで「充実」には使われていないという話です。
さらにいうと、社会保障全体で言うとむしろ「削減している」というのが双方が指摘するところだったりします。
増税分5兆円の「使途」のうち8割以上を占めるのが、「年金国庫負担分2分の1の恒久化」と「既存の社会保障の安定財源確保」です(グラフ)。これはすでに実施している分の財源を消費税に置き換えただけです。
『消費税増税分「すべて社会保障に」はウソ大半は財源を置き換え』しんぶん赤旗 2014年3月30日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-30/2014033001_03_1.html
実際、生活保護費などは引き下げや医療費や介護報酬などの引き上げを連続して2014年以降行っています。
もちろん、今のこの前代未聞の少子高齢化において財政運営の難しさは誰が政治家をやっても難しいと思います。
しかしながら、その難題に対して誠実に対応せず、「よくする」と言いながらむしろ改悪する「嘘」がありえないのであり、行政を担うに値しないと言えるのです。
もう一度繰り替えしになりますが、大切なので述べます。
消費税の増収分は「社会保障の充実に全額使う」と政府は繰り返し述べてきました。選挙の際にもなんども述べています。
しかしながら、実際には消費税増税による増収分はほとんどが帳簿上の付け替えを行っただけです。
逆に社会保障トータルで見た場合に弱体化させたというありえないことをやっているのが今の自民党安倍政権なのです。
参考ページ;『消費税増税分「すべて社会保障に」はウソ大半は財源を置き換え』しんぶん赤旗 2014年3月30日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-30/2014033001_03_1.html
消費税をあげる本当の理由(再掲)
さて、消費税をあげて社会保障の充実をと嘘をついてきたというのがここまでの趣旨ですが、ではなぜ嘘をつくのかという「動機」がきになることでしょう。名探偵ポワロも「動機」を明らかにしないと事件は解決しないと述べていましたからね。
それについては、有力な仮説として「消費税を上げるべきだ」と政府に同調する勢力を見ていくことで明らかになるのではないでしょうか。
その同調する勢力の最たる存在が経団連です。
経団連とはウィキによれば「一般社団法人日本経済団体連合会は、日本の東証第一部上場企業を中心に構成される団体」です。
つまり大企業の利益を最大限にするために活動する組合みたいなものです。
さて、その経団連はかねがね消費税の増税を訴えてきています。
経団連は、先進国で最悪の財政状況を改善するため、消費税率を2019年10月に予定通り10%に引き上げた後、10%を超える水準への税率引き上げを「有力な選択肢」として議論するように促す提言をまとめた。政府が6月をめどにまとめる新たな財政健全化計画に反映させたい考えで、来週公表する。
『経団連、消費税10%超「有力な選択肢」 新財政計画へ提言』 日経デジタル 2018年4月13日
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL13HTR_T10C18A4000000/
一見もっともらしく見えるかと思いますが、営利団体の代表が集まって自らの利益にならないことをやるなんてありえないでしょう。
ここは性悪説に立つべきで、経団連には「消費税増税を唱えることで何か役得がある」と考える必要があるのです。
さてその「役得」の正体ですが、「法人税」の減税です。
そう考えるといろいろな話につじつまが合います。
先ほど消費税増税の増収分のほとんどが帳簿上の付け替えと言いましたが、当初何らかの税で負担していたものから消費税増収分二付け替えたと考えることは自然な流れです。
その「何らかの税」が法人税で多く占められるというのが一つの仮説なのです。(もちろん所得税もある)
下記は財務省の税収に関して公表しているデータですが、法人税は昨今バブル期を超える過去最高益を多くの大企業が出しているのに税収が跳ねていません。
本来過去最高益ならピークの1989年と少なくとも同等の水準にあるべきです。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a03.htm
しかし、そうならないカラクリがあり、それは税率の引き下げですね。法人税を引き下げが1989年以降段階的に行われてきました。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c01.htm
このグラフで一つ見て欲しいのは2000年と2017年は全く同額の税収なのですが、税率が7%ほど異なるのです。
7%異なるのに税収額が同じということはどこかに浮いた金は向かったことになるのです。
それの主な向かい先が先ほど消費税増税を叫んでいた経団連加盟企業なのです。
中小企業の多くは法人税負担をしていませんからね。
まあいろいろと細かいことを書いてきましたが、このブログでは繰り返しになってますが、消費税増税というのは法人税減税の穴埋めなのです。もちろん100%その構図が確立されているかというとそうではありませんが、大枠としてあまりに連動しているのです。
先に引用した下記のサイトでもわかるのですが、消費税が増税された1989年(平成元年)1997年(平成9年)2014年(平成26年)のあとすぐに法人税がいじられています。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c01.htm
安倍政権は露骨ですが、それ以前からもう30年近くにもわたって「財政健全化」などを隠れ蓑に金持ちに利益誘導していたというのがこの国の実態なのです。
ただ、これをよしとする国民がいるからこそ今の政治家が大手を振っているわけで、それに反旗を翻さない限りこれからも同様の事がさらに続くでしょう。
以上、消費税はなぜアップするのかについて書いてきました。
参考になれば幸いです。