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大不況はなぜ起きるか

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 思想信条の立場に違いはあれど、経済に対してほぼ全ての人が願うことがあります。

 

それは、大不況が起きないことです。

 

大不況になれば、自分や家族が路頭に迷う可能性もありますし、会社であれば倒産する可能性があります。

 

 

しかし、これほど多くの人が起きないように願っているにも関わらず、大不況は幾度となく繰り返されています。その原因は何なのでしょうか。

 

 本記事では、ジョン・K・ガルブレイスの『大暴落 1929』を通して、大不況の原因について考えるためのヒントがご提供できればと考えています。この著書では、大不況の象徴とも言える1929年の株価大暴落を起点として始まった世界恐慌についての記録がなされています。

 

ここで記載される内容を見ていくと、今日と類似する状況を感じずにはいられなくなるのです。

 

大恐慌の発生要因を検討する上での留意点

 早速、1929年の世界的大恐慌が起きた原因について見ていきたいのですが、その前にガルブレイスが語る留意点に触れておきます。

 

彼がいう大恐慌の要因分析をするにあたっての問題点とは「単純化された理論モデルで説明しようとすること」です。

 

 だからこそ、ガルブレイスはスタート地点において『大恐慌の原因は、いまだにはっきりしていない』という立場をとっています。

 

 

この話を受けてガルブレイスに対して「情けないな」と言いたくなるかもしれません。

 

確かに『多くの文献は、何がまちがったのか、それはなぜかを自信ありげに断定』しています。

 

しかしながら、ガルブレイスからすれば逆にこのような形で特定の原因を断定的に述べる人がたくさんいる状況が要因特定の難しさを物語っているというのです。

 

 

 例えば、よくなされる要因分析には次の二つがあります。

 

まず、一つ目は因果応報としての景気の捉え方です。

 

具体的には、一定期間景気が良かったことを受けて、その分同じ期間だけ景気が悪い時が来るだろうというもののです。

 

なんとなくそのような感覚を持っておられる方も多いのではないでしょうか。

 

 

実際、当時のアメリカにおいても『少なくとも七年間は景気が良かった、だから因果応報という奴で七年は悪いときが来るだろう』と考えた人がそれなりにいました。

 

しかし、これにはもちろん根拠はありません。

 

 

 続いて二つ目は経済に周期性を見出すものです。

 

『ある期間を過ぎると景気拡大期は自ずと後退期に行こうし、後退期はまた自ずと拡大期に転じるという』ものです。

 

 

これは具体的には『二〇年代が好景気だったら必然的に三〇年代が不景気になる』といった考えなどに見られます。

 

 

こちらは教科書などでも見かけそうな「尤もらしさ」を持っているがゆえにより多くの人が信じている理論かもしれません。

 

 

しかし、『好況期から停滞期に移行したり、停滞期や不況きが好況期に転じたり』という『規則性は言われるほど大きくはない』というのです。

 

 

規則性がないことは戦後の日本の経済復興を見るだけでもわかるでしょう。

 

大恐慌の発生要因

 では彼の立場はというと、複合的な要因が絡み合うことで起きたというものです。

 

 

彼なりにその複合的要因として5つのコンポーネントを挙げています。ここではそれぞれを少しご紹介いたします。

 

 

 まず、一つ目は所得分配の不均衡です。

 

『十分なデータはない』と前置きはするものの、『総人口のわずか五%を占めるに過ぎない最高所得層が、個人所得総額の約三分の一を手にしていたことはほぼ確実』だったと彼は言います。

 

この所得の偏在と大恐慌の因果関係ですが、『経済は高所得層による投資や贅沢品の消費への依存度が高くなる』ところにあります。

 

 

言い換えれば、可処分所得がたくさんある人は、『週休二五ドルの労働者がパンや家賃に充てる支出に比べれば一時的な要因の影響』を受けやすい消費構造を取っているのです。

 

 続いて、二つ目は企業構造です。

 

具体的には『持株会社と投資信託という新種の経営形態』を彼は挙げています。

 

これはどういうことかと言いますと、当時の持株会社方式は、『電力・水道などの公共事業を筆頭に、鉄道や娯楽産業など規模の大きい規模を席巻していた』のです。

 

 

このような構造になっている場合、仮に金利の方が不動産の利回りを上回るようなことが起きれば、株式を通じて繋がっている広範囲に壊滅的な打撃を与えることが可能だったのです。

 

 

特に彼が問題を挙げたのは『下流側の事業会社から支払われる配当を、上流側の持株会社が発行した社債の利払いに充てるやり方』だと言います。

 

 

これをしてしまうと仮に配当がなんらかの要因で止まってしまうと上流側の会社から下流側の会社に至るまで全てが破綻してしまいます。

 

 

 

 三つ目に挙げられるのは銀行システムの脆弱性です。

 

 

1929年当時、多くの銀行の経営基盤が脆弱でした。

 

 

それゆえに『ひとつの銀行が破綻すると、預金者があちこちで不安に駆られて取り付け騒ぎを起こすため、他行の預金も凍結された。それでも破綻が破綻を呼び、ドミノ現象が広がる』ことになったようです。

 

 

 

ガルブレイスの引用するデータによれば1929年の上半期に346の銀行が倒産したと述べています。

 

今のように最低の預金保障もなかったようで、貯金が消えて無くなるということを多くの人が経験しました。

 

 

 四つ目は対外収支です。

 

 

当時のアメリカは第一次大戦中に対外純債権国となっていました。

 

 

それに加えて今とは異なり貿易収支も黒字でした。

 

 

そう見ると一見すると不安要素など皆無に見えるかもしれませんが、アメリカに対して赤字だった国が『ドイツと中南米が多かった』のです。

 

 

そしてそれらの国において国債のデフォルトが起きたわけです。この信用収縮の影響を当時のアメリカももろに受けました。

 

 

 最後、五つ目は専門家の経済知識です。

 

 

こちらはあまりピンとこないかもしれませんが、当時経済の専門家が不況を緩和させる金融政策および財政政策に否定的な提言をしたことをガルブレイスは言っています。

 

 

当時の経済顧問は『景気回復を促進させる政策を問われると、財政均衡を進言』していたようで、それに則り共和党も民主党も乗っかりました。

 

しかし、これが一九三〇年代の恐慌からの回復を遅らせたのです。

今日の状況との共通点

 こうして見ると、ガルブレイスのあげる当時の恐慌が長引いた五つの要因は今日においてもかなり当てはまっています。

 

一つ目の富の偏在は年々高まっていますし、二つ目の持株会社と投資信託による企業構造も今と大きく変わりません。

 

そして、三つ目はバブル経済崩壊後に多くの銀行が倒産したのと同様、今日の地銀も脆弱な経営基盤とは言えません。

 

四つ目の対外収支についても当時と構図は違えど国家間での不均衡というのがかなり目立ってきています。

 

 

最後の五つ目も一周回って現在非常によく見られるものとなっており、実際多くの経済学者が緊縮財政による「小さな政府」の運営を望んでいます。

 

 

 もちろんガルブレイスが再三述べたように未来を予測できると考えることは忌むべき行為です。

 

しかし、こういった大恐慌の起きた状況と現代社会は近しい状況にあるということに目をやらないわけにはいきません。

 

その時がいつ来るかは誰も予言し難いものですが、来ないと断言できる人もいないことでしょう。

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