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将来に対する不安を拭うために知っておきたいこと

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「将来が不安」

 

 ある調査では、「将来に不安を感じるかどうか?」と聞いたときに実に77%に及ぶ人がそう回答をしました。

 

その理由は年齢が上の方であれば、特に資金面で老後の生活が不安という回答が得られ、若い人の場合は貯蓄や仕事の有無があるようです。

 

 

 では一体どうすればこのような不安から解放されるのでしょうか。

 

 

それを知るにあたって示唆的な一冊を本章ではご紹介できればと思います。

 

 

ジョン・メイナード・ケインズの『雇用、利子及び貨幣の一般理論』です。

 

 

あらかじめ断りを入れますと、この著書を読むことで財テクが身についたり年収が100万円上がる訳ではありません。

 

しかし、世の中の先行き及び不確実性を多少なりとも見通す力がつけられる本だと私は考えています。

 

 

そもそも将来の不安というのは今がどうなっているかについての理解がまずは不可欠です。

 

その上でどうなるかを考えることができるのです。

 

 

 本章では現状社会がどうなっているかを知る上でケインズが重要と考えていることを簡単にではありますがご紹介します。

 

 

彼は現状の社会状況を理解する上で3つの項目に着目するよう勧めました。

 

それはタイトルにもある「雇用」と「利子」と「貨幣」です。なぜこれらに着目することが重要なのか早速ですが見ていきましょう。

 

「雇用」に着目することがなぜ重要か?

 ケインズは「雇用」に着目することが社会状況を把握する上で重要だと考えました。

 

その理由についてここでは見ていきます。

 まず、我々を不安にさせるような社会状況は突き詰めれば二つだと彼は考えていました。それは『完全雇用を与えることができないこと』と『富と所得の分配が恣意的で不公平なこと』です。

 

 

逆にこの二つが満たされていれば、社会は欠陥状態が極めて少なく多くの人が安心して暮らせると考えていたのです。

 

 

 この信念の背景には、彼が打ち出した経済思想の歴史における重要な概念があります。それは「有効需要」と呼ばれる概念です。

 

 

名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。彼はこの「有効需要」が十分にあれば安定して経済は回ると考えていました。

 

 

 

 ここで気になるのは「有効需要」とはどういうものなのかということです。

 

これについてはしばしば「所得」と同義で誤解されることがあります。

 

 

しかし、彼が『有効需要と所得の違いは因果分析にとってはきわめて重要』と述べる様に両者は別物です。その理由は単純に所得は全てが需要へと回るわけではないからだと申し上げればご理解いただけるでしょう。

 

 

 

 では、「所得」と同じでないとすれば何と同じなのでしょうか。

 

 

残念ながらケインズはこの一番大事な「有効需要」の概念について素人でもわかる様な定義づけをしてくれていません。

 

 

ですので、あくまで推測に頼らざるを得ません。

 実は、そのポイントとなる箇所があります。

 

 

彼は『有効需要はその総需要関数上の特定の一点で、供給条件と込みにすると企業者の期待利潤を最大化する雇用水準に対応している』と述べているのです。

 

 

 

つまり、有効需要というものは「企業経営者が利潤期待を持てる」ところに存在するということがわかるのです。

 

 

注意すべきは「個人」が主語ではないというところです。

 そうはいってもこの「期待」自体は目に見えるものではありません。

 

 

だからケインズは企業者の「雇用」の量や質からこれを計測せよと考えたのです。

 

 

なぜなら、企業経営者は利潤獲得に向けた「期待」がある場合、新規に雇用を増やすからです。

 少し回り道をしましたが「雇用」に着目すべき理由がここでお分りいただけたでしょうか。

 

 

なぜなら、企業経営者が「新たに雇用を増やそう」という期待が持てる社会は、有効需要が十分な社会であり、経済が安定的で円滑に回る状態だからです。

 

「利子」に着目することがなぜ重要か?

 続いて、二つ目に着目すべきは「利子」です。あなた自身が借金をしていない場合、これにピンと来ないかもしれません。

 

 

ですが、実はなぜ「利子」に目を向ける必要があるかのヒントはすでに出ています。

 

 

 該当箇所は先ほどの「有効需要」と「所得」が別物だと述べた箇所です。

 

 

これが別物とわかれば「利子」に着目するべき理由は見えるでしょう。

 

 

端的に言えば、経営者は利潤が期待できると思えば手持ちの所得に限らず、借金をしてでも投資をするからです。

 

 

その時に借金をしてでもやるかを検討するにあたって「利子」の状況が重要になるのです。

 

そういう意味で、「利子」もまた社会の「期待」を測定するにあたって目を背けてはならない重要な指標なのです。

 

 

 だからこそ、景気後退局面と言われる状況では中央銀行による利子率の切り下げるよう求められます。

 

 

その理由は、これをすることで、企業経営者がより小さな期待値で投資を行うことができ、有効需要を刺激してくれるからに他なりません。

 

 

ただし、利子率の引き下げさえ行えば自動的に投資の活発化をたらすとはケインズは考えていませんでした。

 

「利子」の操作は万能ではないのです。

 

”もしも資本の限界効率表が利子率よりも速やかに低下しているならば、そのようなことは起こりはしないだろう。さらにまた投資額の増加は他の条件が同じなら雇用を増加させると期待していいけれども、もし消費性向が低下しているとしたら、そのようなことは起こらないかもしれない。”

『雇用、利子および貨幣の一般理論』ジョン・M・ケインズ(2008)岩波文庫

 

 彼がここでいっていることは、資本蓄積による利潤期待が利子率よりも現在進行形で低下している場合や何らかの理由で多くの人の消費意欲が低下している場合は、利子率が下がっても投資が活発化しないということです。

 

 

「貨幣」に着目することがなぜ重要か?

 ケインズが経済理解において重視した最後のものは「貨幣」です。

 

 

その理由は、もちろん一つには我々が生きている社会が貨幣を媒介にして回っている社会だからだということが挙げられます。

 

 

しかし、ケインズにとって「貨幣」は単なる何かを交換するための媒介物以上のものでした。

 

 

 

例えば彼にとって貨幣経済とは『本質的には、将来についての見解の変化が雇用の方向のみならずその量にも影響を及ぼす可能性を持つ経済のこと』を意味しました。

 

 

この言葉が意図するのは社会でまわる貨幣量次第で、有効需要という企業経営者の「期待」を具現化した「雇用」の量に影響を与えることができると彼はいうのです。

 

 

 

 なぜこのようなことが言えるかといえば、「貨幣」には直接富を作り出すことはできないですが、富を作り出す源泉となる「期待」を作り出すことができるからです。

 

 

市中に流れる貨幣の量が増えることで、そうでない場合と比べて、企業経営者はより利潤獲得への「期待」が持てるようになります。

 

 

 もちろんこれは実質的なものではないので「錯覚」と言ってもいいかもしれません。

 

 

しかし、「錯覚」であるにせよ企業に行動しようと思わせ良い循環を回すことが重要なのです。

 

 この発想からかの有名な不況期に失業が増えている場合には、政府は公債を発行して「貨幣」を市中に流し、社会の「期待」感を高めるようにせよという考え方(財政政策)が出てくるわけです。

 

『完全雇用を確保するためには』利子率の操作(金融政策)だけでは不十分で、『伝統的な政府の機能を相当拡張しなければならない』のです。

 

最後に

 ケインズの議論は多岐にわたるので最後に改めてまとめておきたいと思います。

 

 

ケインズは社会の安定は雇用が完全であり、所得の分配が偏っていないことが重要だと述べました。

 

 

そして、この二つを果たすには「自由放任」ではダメで政府がある程度コントロールすることの重要性を説きました。

 

 

 そのコントロールを行うにあたり政府ができることは、一つは利子率の操作による金融政策で、もう一つが公債を発行することで支柱の産業に「期待」を創出する財政政策です。

 

 

この二つをうまく駆使しながら産業の側が「期待」を持って価値の創出活動ができるようにすることをケインズは要望したのです。(*ケインズは社会主義者と言われることもあるのですが、著書を読むと産業への介入は推奨していません)

 

 

 ここで本題に戻りたいと思いますが、ケインズのこの考えから将来の不安に対する見通しをつけるために2つ重要なことが学べたでしょう。

 

1つ目は、社会というのは故障やバグがない機械のように勝手に回るものではないということです。

 

むしろ頻繁にそういった予測不可能な事態がおこるというのがケインズが前提に立っている考え方です。(だから政府の介入を重視した)

その不確実性に常に敏感になることが重要なのです。

 

2つ目は、「雇用」の量や質の状況に目を向けることの重要性です。

 

「有効需要」という社会の潤滑油は「雇用」によって可視化されるというのがケインズの考え方でした。

 

 

だからこそ、「なんとも言えない」不安を具体化する意味でも「雇用」に目を向けるべきなのです。

 

もちろん、間接的にその「雇用」に影響を与える「利子」と「貨幣」にも目を向けることが理想です。

 

 

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