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グローバル時代にハイエクの経済学を読んでおくべき理由

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今はグローバル時代と言われて久しいですね。

 

「グローバル時代が来たから英語を早期教育で学ばせないといけない」とか「グローバル時代だからアジアで稼げ」とかそういった言葉をしばしば見かけるようになりました。

 

この「グローバル化」なるものは何やら「自然の流れ」であるかのように昨今では語られています。

ただ、それは本当でしょうか。

 

確かに竹中平蔵氏や大前研一氏、堀江貴文氏など今尚影響力のある方々がこれからの時代は国境が溶けて全てがボーダレスな世界になっていくと熱弁しています。

 

しかしながら、私の見立てではグローバル化とはあくまで「選択の結果」だと考えています。

選択の結果でしかないものを「自然の流れ」であるかのように述べているだけなのです。

私からすればそう誘導したい人が騒いでいるだけということですね。

 

 

さて、なぜ私がそのように考えたのかですが、それはいうまでもなく「グローバリズム」自体も単なる思想の一つでしかないからです。決して人間の手から離れた自然現象ではありません。

 

その思想を誰が生み出したのかというと今回取り上げるフリードリヒ・ハイエクです。

ハイエクこそが現代知識人やビジネスエリートを支配する最大の思想家と言えるかもしれません。

 

これを読むことで、現代社会や現代知識人の問題点をあぶり出すことができると思うのです。

ハイエクを徹底的に読むことはイコールグローバル社会とはなんなのかまで考えるための非常に有益な本だと断言しても良いでしょう。

 

 

■ハイエクが伝えるグローバリズム誕生の背景

ここではハイエク経済学(グローバリズムの起源)とは何かを書いていきます。

あらかじめ、結論から述べますと、ハイエクは「いかなる計画に基づく政治や経済の運営も不確実性がありすぎるため早晩破綻する」というものです。要するに多くの人民は考えも行動もバラバラなのでコントロールすることなんて無理無理とハイエクは述べたのです。

 

この結論に至った直接の背景だけ少し抑えましょう。

それについては『隷従への道』で書かれています。

ハイエクは桁違いの人が死んでいく20世紀を引き起こした原因の一つに全体主義をあげました。

全体主義とは、強力な指導者のもと全ての国民をある一つの方向へと向かわせることを可能とした唯一の統治形態とも言われているのですが、これが色々とひどかったのです。

 

具体的には、今「全ての」と書きはしましたが実態としては、理論の実行を成し遂げるためにそぐわないものがあれば現実の方を捩じ曲げる(合わない人を排除する)という無茶苦茶なことをする思想だったのです。

 

通常は現実に合わなければ理論を修正すると考えればいかに無茶苦茶かおわかりいただけるでしょう。

(この辺りはハンナ・アーレント『全体主義の起源3』なども参照いただきたい。)

 

 

さて、ハイエクはスターリンやヒットラーのような全体主義国の悲惨な実態を見る中で、公的権力が人為的にコントロールしに行く政治は全て失敗すると結論づけました。

 

そういった中で生まれてきたのが公的権力は徹底して介入を減らし、社会の自律性に委ねるべきという思想なのです。

要するに政治が介入した結果ヒトラーやらスターリンみたいなやばいのを増長させたのでこういうのを徹底的に排除する仕組みを作りましょうというのがハイエク先生の言い分なのです。

 

実は今述べたこのハイエクの主張こそがグローバリズムの起源です。(ネオリベ、ネオコン、新自由主義とも言われます。)

 

少しだけ掘り下げますと、ハイエクは自律性(spontaneous order)というものが世の中には存在するので、余計なことをしなくても世の中は回ると言いたかったのです。下記は、それについて書いた『法と立法と自由』の冒頭部分です。

本書の主要な主題のひとつは、法律家の研究する正しい行動ルールが法律家自身それについてほとんどが知らない性格を持つある種の秩序に資するということである。また、この秩序は主に経済学者によって研究されているが、その経済学者も同様に、自身の研究する秩序が依拠する行動ルールの性格をほとんど分かっていないということである。

『法と立法と自由』フリードリヒ・ハイエク(2007)春秋社 p5

政治がわざわざ介入するよりも人々が伝統の中で積み上げてきた「常識」に任せることこそ何よりも最適なはずだということですね。

 

こう見るとグローバリズムというのは歴史の流れを組むと「自然な流れ」かもしれませんし、「正しい」思想のようにも見えるかもしれません。

ただ、ハイエクの経済学は完璧ではありません。

一言で言えば、人間を過大評価しすぎなのですが、その理由について次のチャプターで見ていきましょう。

 

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■ハイエクの経済学は完璧なのか?

ハイエクの経済学は一見完璧なように見えます。

しかしながら、マイケル・オークショットという20世紀を代表する政治思想家が『政治における合理主義』の中でハイエク経済学の問題点を端的に語ってくれます。

オークショットはハイエク経済学を「あらゆる計画を否定する計画だ」と述べました。

オークショットの意図は、ハイエクは全ての政治体制をだめだと述べニヒリスティックな立場を取りつつも明確に自分の意図を差し込んでいると指摘します。

 

 

オークショットはこのハイエクの差し込んだ政治思想が現実ではうまくいかないとすぐに見抜いていました。

「個人の徹底的な自由」とそれを実現するための前提条件である「公的権力の徹底的な無力化」がハイエクのイメージするような良い結果を招くかどうか怪しいということです。

 

 

批判もあるかもしれませんが、私の感覚ではハイエクは言っていることは一見対極にあると思われているマルクス主義と非常ににている気がするんです。

どういうことかと言いますと、マルクス主義ではブルジョア(支配者)をこの世から消せば理想的な世界が広がると述べました。

しかしながら、ご存知のように起きた現実は全く逆でした。

より強大な権力によるプロレタリアの支配が実現したのです。

その例にレーニンやスターリンの時代をあげれば十分でしょう。

 

 

このマルクス主義の結末が、ハイエク経済学ひいてはグローバリズムの帰結とそれほど大差がないのではないかというのが私の考えなのです。

自由化を進めれば何か理想的な世界が出来上がるかのようにハイエクは述べていますが、実際には逆のことが起きていることが少なくありません。

 

例えば、良いか悪いかは別にして、アマゾンは書店を次々に破壊し日本の市場を独占する状況に入りつつあります。

最近は結構値上げを頻繁に行っていますし、業者に圧力をかけたり税金を払わなかったりとやりたい放題です。(値上げについてはまだ消費者が我慢していますが。)

 

これが自由化を極めて起きた結果だとしたらハイエク経済学の理論はそれほど素晴らしいとは言えないのではないでしょうか。

 

他にも例を挙げますとハイエクを持ち上げる竹中平蔵さんという人がいますが彼が「雇用の流動化をし、若者が一つの会社に縛られず自由な働き方を模索できる」という触れ込みで始めた派遣法は結局のところ貧困をもたらしただけでした。

そして、今多くの若者が「一つの会社で長く勤めたい」という竹中さんの思いとは正反対の思想を持つようにもなっています。

 

マルクスとハイエクに言えるのは双方とも「現状の分析から未来を予測できる」という愚かな考えを持っていたことです。

マルクスもハイエクも現状分析はとても素晴らしいというのが両者の共通点ですが、着地点が二人とも無茶苦茶なんですね。

 

そう考えるとオークショットの言葉はハイエク批判として極めて簡潔で妥当なものと言えるでしょうね。

 

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■ハイエク経済学の誤りーホッブズに学ぶー

つまるところ、ハイエク経済学はホッブズの『リヴァイアサン』と同じ世界になることを想像することはそう難しくないのです。

最近私はホッブズという思想家を再評価するべき時が来ていると細々と叫んでいるのですが、彼の描く世界観はグローバリストとの親和性が異常に高いんです。

 

グローバリストの土台的思想でもあるハイエクの経済学も突き詰めれば『リヴァイアサン』のように絶え間のない闘争状態をある高次の理想に向かう過程として正当化するだけでなく、歓迎すらしていますし、結果的にとてもいい世界が待っているという根拠なき妄想に支えられています。

 

これは前述の共産主義にももちろん言えることですね。

 

そういった意味で共産主義の結末も資本主義の結末も500年前に予想していたホッブズはあまりに過小評価されているなと思うわけです。左翼だろうが右翼だろうがある世界観を掲げられそれに向けた闘争が始まる人間社会の普遍性をえぐり出している名著です。

 

ハイエクの本を紹介するはずがホッブズの偉大さを語るテクストになってきてしまっていますね笑

 

まあそれはともかくとして、ハイエクやマルクスを並行して読んでいただきつつ『リヴァイアサン』を読んでいただくと近代というものの危うさやグローバル化の問題点を捉えられると私は思います。

以上偉そうに戯言を書かせていただきました。

 

 

 

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