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古谷経衡氏の『愛国商売』レビュー

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本日は普段あまり書かない小説のレビューを書かせていただこうと思います。

 

読んだのはたまたま書店で見かけて購入した古谷経衡氏の『愛国商売』という書籍です。

普段あまり小説を読まない私でも、この小説はかなり楽しんで読めたというのが率直な感想です。

 

「愛国」をビジネスとする業界の人間模様やその支持者を俯瞰してみるにはいい機会となります。

元々そちら側にいたという古谷氏が書くことで説得力は増している一作です。

 

『愛国商売』の著者古谷経衡氏について

まず、著者がこの著作を書いた経緯について少し触れます。

元々古谷氏は小林よしのりなどから影響を受け「保守論壇」と呼ばれる論陣を長らく張って来ました。

 

 

実際に、古谷氏は関連雑誌や懸賞論文などへいくつも論説を投稿したり、その界隈の番組に出演することで言論人としての第一歩を踏みだしています。

 

あまりご存じない方のために補足すると、ここでいう「保守論壇」というのは「古き良き伝統ある日本」をいかにして守っていくかを考える熱意のある集団です。

 

 

けれども、これはあくまで表向きです。

内実はひどいものだったと古谷氏は考えています。

 

詳細は後述しますが、非常に低クオリティでありながら、偏見を育むだけの下劣な世界だったのです。

 

 

しかし、ここで興味深いのは保守論壇のビジネスがそのレベルの低さゆえに商売として成り立って来たというところです。

 

この一見矛盾する状況を理解するヒントが著書には書かれています。

 

『愛国商売』の主要なメッセージ

そのヒントを知るにはこの本著が伝えるメッセージの大枠はおさえたほうがいいかもしれません。

 

まず、一般的に経済学の原則に則れば価値のないものは淘汰されますが、こと保守論壇の世界にあっては、「低品質」であるがゆえに「価値がある」とされる逆転現象が起きるということが書かれています。

 

 

なぜそのようなことが起きるのかについて著書では「この低俗な言論を支えるのが非常にリテラシーの低い集団であるから」という考えが提示されます。

 

そのリテラシーの低さは具体的にどこに現れるのかについて本著では描かれているのですが、特に印象的だったのは下記の三つです。

  • 韓国・中国への差別根性丸出し
  • 陰謀論が好物
  • ネット情報の過信

韓国・中国への差別発言

まず一つ目です。

私の他の記事内容と一部重複しますが、現在の自称保守と呼ばれる人たちは韓国や中国への差別を挨拶がわりにするような集団です。

 

 

実際保守論壇のデビュー作や売れた作品の上位には「韓国経済崩壊」や「韓国とは断行せよ」といったようなタイトルで溢れかえっています。

 

 

この中韓への差別意識丸出しの言論が流行するのはとにかく韓国や中国が劣っていることを描くことで自らの自尊心を満たせると考えるひとがいるからなのでしょう。

 

 

実際、この中韓ヘイトビジネスというのは私の知る範囲でもすでに10年は続いており、これらの国の悪口さえ書けばある程度商売ができてしまうほど保守系論壇人にとって飯の種なのです。「超」のつくロングセラーです。(他の記事でも指摘しましたが)

 

 

ここで、「そうはいっても全員が中国韓国への差別意識丸出しなんて言いすぎでしょう」とお考えの方もいるかもしれません。

 

しかしながら、「保守論壇」のほとんど100%が中国や韓国に否定的な態度をとります。

試しに、本著で「よもぎチャンネル」という保守系番組のモチーフになっている某番組のレギュラー陣の著作を掘り返してみてください。

 

一冊は中韓へのヘイト本を書いておられます。多い人であれば5〜10くらいはそれです。

 

裏を返せば、保守論壇と呼ばれる人が友好的な態度をとろうものなら次の日から「パヨク」「在日」認定されて終わるくらい精神的支柱だとも言えます。

 

陰謀論が好物

続いてのリテラシーの低さを裏付けるものとしては「陰謀論が好物である」という点です。

 

保守論壇およびその支持者はとにかく陰謀論が大好物です。

 

陰謀論の例として古谷氏は、「朝鮮人がパチンコ産業裏で操り日本を搾取して、その金が北朝鮮に行って核開発につかわれている」というものや「日本の歴史の重大な局面の多くでコミンテルンが操っていた」というもの、「日本における犯罪者の多くは在日」、「マスコミの上層部は在日に乗っ取られている」というものなどをあげています。

 

 

多少なりとも書物を読んだ人であれば「頭がおかしいのか」と思うような与太話ばかりなのですが、この手の陰謀論はあれよあれよと自称愛国者に「真実」として信じられるに至ったと古谷氏は描くわけです。

 

 

それはひとえにリテラシーが低いからだと著者は暗にいうわけですが、残念ながら日本のネット上や保守論壇が書いた書籍には今もこのような与太話が溢れるほど生き延びています。

 

保守論壇はおそらく確信犯的にそういった陰謀論をしたためているのでしょうけども、そういうところに古谷氏は嫌気がさしたようです。

 

ネット情報の過信

最後のリテラシーの低さを裏付けるものとして、(彼らがまさに「ネット右翼」と呼ばれるに至る最大の要因でもあるのですが、)とにかくネットの情報を鵜呑みにするというものが挙げられます。

 

中韓にせよ陰謀論にせよ彼らの情報源はとにかくどこの誰が書いたかもわからないようなネット情報です。

 

 

ここで思い出すのが今年非常に売れた某大ベストセラーです。

 

あの著書には参考文献が一つもないことが話題となりましたが、その大半はネット上の情報を基に書いたと作家自身が認めていました。

 

紙媒体に書かれているとは言えあのベストセラーは「ネット情報」の寄せ集めなのです。

 

 

これは学術的に言えば「論外」であり、多少なりとも読書習慣がある人であれば「読むに値しない本」となるものでしょう。

 

 

 

しかしながら、ネット情報を鵜呑みにしてしまう層に対してはむしろそれは好意的に作用しました。

 

 

 

根拠がないことや論としての緻密さがないゆえに、理解がしやすく「彼らは真実を書いている」と「自称保守」にい思わせる力があったのです。

 

 

彼らがここまでネットを信じるのはもちろんリテラシーが低いからです。

 

しかし、それに付け加えていうならば、一般的なテレビ・新聞・書籍の大半が在日やパヨクに乗っ取られているからという考えも上げずにいられません。

 

一般的なメディアが信じられないからと駆け込む最後の場所がネットなのであり、それにより結果的にドツボにはまるのです。

 

『愛国商売』を読むべき人

最後に『愛国商売』をお勧めできる方について少し触れます。

 

いくつかありますが、まずは「中国や韓国」に対してネガティブな感情を持っている方です。

 

もちろん私自身も中国や韓国を全肯定するわけではありませんが、今の日本は著しく不当に両国への差別意識を育む傾向が強くなっています。

 

 

それゆえに当該国へ「批判」をしているつもりがただの差別であるということも少なくありません。

 

 

その背景の一つにこの小説もテーマにしている「愛国ビジネス」があります。

 

自称保守は商売をするためにこういった差別意識を育むような言論を世の中に積極的にばらまいているのです。

 

 

そう考えると、傾向と対策を抑えないままでいるならば、いつの間にか自分が差別主義者に加担してしまう可能性があります。

そうならないために中国や韓国へのネガティブな感情は「外的な何かによって作られたものである」ということを確認する機会にして欲しいのです。

 

 

続いては、そういった差別意識に蝕まれている人を周囲で見かける人です。

 

親族や友人など最近急に朝日新聞と聞いただけで怒りの感情を催したり、中国韓国について好意的にいうだけでトンデモな陰謀論を話し始める人はいませんか?

 

もしいるならばあなたが『愛国商売』を読んで、その人にあげて欲しいのです。

小説という立て付けをとっているおかげでそこまで抵抗感なく読めると個人的には思います。

 

いきなり福田恆存や小林秀雄を読んでみたらと紹介してもなかなか手が出ませんが、この本であれば非常にハードルが低いでしょう。

 

 

最後は「保守的であること」がどういうことか考えてみたい人にお勧めです。

 

 

今の「保守派」は朝日新聞を叩いて中国と韓国と絶縁宣言し、安倍政権を支持しているだけの薄っぺらい集団です。

 

 

 

全く伝統的な文化や慣習に目を向け学ぼうとすることもない者たちが「保守」と呼ばれており、自称する世の中です。

そういった保守を偽装する人間が増えてくる中で、改めて「保守的であること」について考えを深めるきっかけを作りたい人にとって今の巷の自称保守を全否定するこの著作は非常に役立ちます。

 

 

多くの日本人が「愛国ビジネス」と手を切れるかは真に愛国的であるためには避けられません。

 

 

 

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