先般国会が始まって持ちきりの話題があります。
それは、このブログでも度々取り上げてきた基幹統計の数多くがごまかしだらけのデタラメだったということが明らかになった件です。
連日野党から厚労相に対して厳しい指摘が入り、厚労相も認めざるを得ないなど事の重大さが日に日に明らかになっています。
統計というのはあまり一般人に関わりがないと思われる方も多いかもしれませんが、多くの政策がこの勤労統計をもとになされます。
例えば有名な例で言えば、失業保険の給付金額は勤労統計から判断されます。
他にも所得税などの税率も少なからず勤労統計から判断されることがあるためこの統計がおかしいなんてことになればこれまでの多くの政策が誤っていたということになるのです。
さて、そんな勤労統計の数々も大事なのですが、本日取り上げたいのがGDPがどうもおかしいのではないかという話です。
以前からおかしいおかしいと指摘されてきたのですが、この度立憲民主党会派の小川淳也氏が国会で取り上げたことで一気に加熱した感があります。
今最も重要視されている統計の一つであるGDPについて書かせていただきました。
Contents
GDPがどうもおかしい点❶ー指数が下がるものを排除ー
どうもGDPがおかしいのではないかと言われ始めたのは2015年ごろなのですが、その頃に何があったのかというと「国際標準に合わせる」という名目の元統計が調整されたのです。
しかしながら、私が調べたところ少なくとも3つの角度から「国際基準に合わせる」という名目の元「操作」が入っていると考えています。
早速ですが、順番に見て行きましょう。
一つ目は「指数が下がるものは排除している」という点です。
こちら冒頭に挙げた小川淳也氏の国会質疑で明らかになったものです。
とても素晴らしい質疑だったので、該当箇所を見て見ましょう。
56分ごろのところから参照いただけますでしょうか。
流れとしてはこうです。
GDPを国際標準に合わせる改訂にあたって、不動産の仲介手数料や防衛装備品の参入など諸々を組み込むことでGDPを●%押し上げる見込みだというやりとりがあったことを議事録をもとに小川氏は明らかにしました。
しかし、ここからが重要なのですが、一様に「国際基準に合わせようとしていない」と小川氏は述べています。
一例として、私立学校をあげています。
国際基準に一律で合わせるのであれば私立学校は授業収入があるのでGDPに入れないといけないのですが、検討の結果入れられない事に決まったのです。
入れられなかった理由は不明ですが、それを入れるとGDPが0.8%押し下がる要因となっていたようです。
もちろん「政府が恣意的にGDPを操作した」という論証には現時点ではなりません。
小川氏もそれを前提に話しています。
しかしながら、「国際基準に合わせた改訂」にしては上がる要因になるものはGDPに組み込み、下がる要因になるものはGDPに組み込んでいないという摩訶不思議なことを行なっているのです。
おそらく他にも参入を見送られたものがまだあると思われます。
引き続き見て行く必要があるでしょう。
GDPがどうもおかしい点❷ーたった1日で約30兆円増大ー
続いては、たった1日で約30兆円増えた件についてです。
こちら成長率でいうと6%という途方も無い伸び方です。
自民党広報部も選挙前に成果を誇示していたことを記憶の方も多いのでは無いでしょうか。
https://twitter.com/jimin_koho/status/919314392730046464
こちらもまた「国際基準に合わせて」行なったものでごまかしは一切ないというのが自民党の主張でした。
確かに今回のGDP改訂において諸外国でもGDPが全体的に伸びました。
ただ伸び率がおかしいんです。
下記は小川氏の指摘ですが、統計の改訂でGDPが諸外国の伸び率において「2倍」日本は伸びました。
2015年のGDPは当時史上13番目だったにも関わらず、統計手法の変更により、これが一気に、史上最高水準まで膨れ上がることになりました。
その上昇額はなんと31兆円です。
政府は国際基準に合わせたと言いますが、その部分は最大でも20兆円程度。実は先にヨーロッパ諸国もこの国際基準適合により、3%程度GDPを上昇させていますので、この点に限れば、あやしいとは言え、他国の平均にも見合う数字です。
しかし、問題は国際基準への適合以外の部分で8兆円近くGDPを積み増し、トータルで31兆円、比率にして6%もの名目経済成長を一夜にして成し遂げたことです。
『統計不正を国会で糺す!本丸は「GDP」だ!!』 WEB RONZA
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019020500007.html?page=3
統計で2倍伸びればまあまあ「異常」です。
普通であれば「国際基準に合わせて」調整した以外の変数があったのではないかと考えるのが妥当です。
まさにその検討が必要な状況にあるのが改訂された後の我が国のGDPです。
なおタイミングが安倍首相再任後の翌年でかつ選挙が近づいてきているタイミングというのが色々と考えさせられてしまうところでもあります。
GDPがどうもおかしい❸ー異常な推移を見せる「その他」ー
最後に取り上げるのは弁護士の明石順平氏が再三指摘している「その他」によるGDP水増し疑惑です。(ソノタノミクスと言われています。)
ご存知ない方のために端的に言いますと、「国際基準に合わせて」という名目のもと、そことは全く関係ない「その他」という項目で異常にGDPをかさ上げしているという話です。
しかも、注目すべきはこの「その他」をいじることでアベノミクス以降がほぼ全ての年で高いプラス値を弾き出すのに対して、アベノミクス以前は逆にほとんどがマイナスで推移するという摩訶不思議な状況になっているのです。
50分30秒の当たりから小川議員が説明をしていますのでご確認ください。
小川氏が使用しているグラフは最初に指摘を始めた明石弁護士と同じのため下記に引用させていただきます。
見事にアベノミクス以降プラスだらけでそれ以前はマイナスだらけです。
統計自体を斜めに傾けているのではないかというほどになっています。
単なる偶然でここまで特定の時代に有利になるようになるでしょうか?
そう考えると色々ごまかしがあるのではないかと考えざるを得ないのです。
最後に
偶然もいくつか重なればそれは偶然ではなくなってくるというふうに思うのが人間というものでして、GDPがおかしいことになっているという違和感もここにあげた3つのケースを見れば間違いないないでしょう。状況証拠がかなり多いのです。
それにすでに厚労省では高プロ法案提出でデータ捏造があったのはもちろん賃金統計の改ざんもありました。
財務省も公文書の改ざんをし、防衛省は日報を隠蔽。法務省も入管法改正案提出にあたりデータを捏造しました。
これほどまでに各省庁がごまかしを日常化させているというのは「官僚のモラルを崩壊させる外部要因」の存在を考える必要があります。
なぜなら、少なくとも民主党以前の政権ではこのようなことが常態化していることはありませんでしたからね。
我が国の行政府のおかしい具合を見ていく一つのトピックとして引き続きGDPにも注目して見てください。
先例のないことも一旦出現してしまえば将来のための先例になるかもしれない。
『イェルサレムのアイヒマンー悪の陳腐さについての報告ー』ハンナ・アーレント(2017)みすず書房 p210