- 日本はグローバル化に乗り遅れている早く対応しなくては
- 日本はこのままでは国際社会から取り残されてしまう
- 日本人は内向きすぎるこれではグローバル化の時代を乗り切れない
1980年頃から始まったとも言われる通称「グローバル化」
あれから40年近く経ちました。
40年経った今日はテクノロジーの進化もありより「グローバル化」という言葉が身近に感じられるようになったかもしれません。
しかしながら、こと我が国日本について言えば諸外国と比べてこの「グローバル化」に乗り遅れていると言われて久しいですね。統計的に見ても英語力も低いですし、外国人経営者の登用も少ない。
さて、グローバル化に乗り遅れる日本を嘆く方々向けに今日は一筆書かせていただこうと思います。
まず最初にそもそもグローバル化とは何かについて共通認識をもった上で、そのグローバル化が民主主義の脅威となるということ、そして日本においてこれから生じるグローバル化の課題がいかなるものかについて述べていきます。
グローバル化とは何か
まず、グローバル化というとどういう現象をされるでしょうか。
ヒトモノカネが国境を飛び越えていくようなことをイメージされることが多いと思います。
その見方は間違いではないと私も思います。
ただ、あらかじめ私の考えるグローバル化とは何かを述べますと「民主主義の否定」です。
あまりこの見解にピンとこない方が多いかもしれません。ですので、順を追って見ていきたいと思います。
一般的に「グローバル化」について、多くの人が下記の2点の認識を持っている人は多いのではないでしょうか。
- 自然現象に近しいレベルで抗いがたいものであり適応しなければならないということ(「国家」が歴史的使命を終え次の時代に入った結果がグローバル化だということ)
- 結果的に我々の生活を豊かにしてくれるということ
結論から申しますとこの2点は全く普遍的真理ではありません。
順にその認識の誤りを見ていきたいと思います。
まずは、一つ目のグローバル化は時代の必然であり、それには適応するべく自らを変えていかないといけないという趣旨の認識についてです。
この認知は日本の知識人やオピニオンリーダーに好意的に受け止められているのですが、私の見立てでは彼らの認知は3週くらい世界の知識人と比べて遅れています。
例えば、マッキンゼーのコンサルタント上がりの大前研一氏や竹中平蔵氏など(その他ホリエモンとか勝間和代とか)を始めよく「グローバル化は時代の必然であり、もう国境は溶けていく。これからは個人の時代だ」といった具合の話をしています。(80年代のアメリカとかで言われてた)
実際に彼らの考えがわかる部分をチェックしてみましょうか。
上にあげた大前氏はコラムで下記のように述べています。
UberやAirbnbが行っているように、ひとつのシステムで世界中のオペレーションができてしまう。スマートフォンのエコシステムにおいて国境は関係ないのである。唯一、言語の問題は残っているものの、世界でビジネスをするのにもう戦略はひとつでいい。逆に、20世紀のように国別戦略などやっていたら、時間がかかりすぎて競争に勝てないのだ。
大前研一「20世紀の人材観が会社を滅ぼす」カリスマコンサルが語る「本当に欲しい人材」 東洋経済オンライン
グローバルに企業競争が始まり国家の元戦略を実施していては競争に勝てないと彼は熱弁をふるっています。
続いて竹中氏を見てみましょう。
また、更に重ねて「グローバルは止められません。グローバルを止めるのは豊かになりつつある中国やインドネシアの人にお前たちに豊かになるなと言ってることに等しいんですよ」とも話し、グローバル化を止めることが間違いだと指摘。
・・・・・・・・中略・・・・・・・・・
竹中「あえて言いますよ。これから日本は物凄い格差社会になりますよ。今の格差は既得権益者がでっちあげた格差論で深刻な格差社会ではないんですよ。大竹さんや私の世代は物凄い介護難民が出てきて貧しい若者が増える。いよいよ本格的な格差社会になります。
グローバルは止められません。グローバルを止めるのは豊かになりつつある中国やインドネシアの人にお前たちに豊かになるなと言ってることに等しいんですよ。そんな権利は日本にもアメリカにもないんですよ。」竹中平蔵「日本は物凄い格差社会になる。介護難民や若者のホームレスだらけ。菅官房長官は凄い頑張っている」
「グローバル化は止まりません!」と言い切っています。
ここまでくると清々しいですね。
ただ、彼らが川の流れのごとく進むと考えていたグローバル化は今もなお続いているでしょうか。
反証が山のように出てきていますが、その筆頭例だけここではあげましょう。
まず筆頭例はドナルド・トランプです。
下記は代表的な例ですが、彼はヒトモノカネが自由に越境することを世界で最もグローバル化に先んじているといわれているとは思えないほどに妨害しているのです。
短命政権と言われつつ底堅い支持を堅持しているのはこの反グローバル化を支持する層がアメリカのかなりの数いるからなのは言う間もでありません。
『米大統領「日本との蜜月、終わるだろう」米紙に』 毎日新聞 2018年9月7日付
https://mainichi.jp/articles/20180907/k00/00e/030/272000c
『移民親子引き離し政策、トランプが引き起こした米国内の人道危機』ニュースウィーク 2018年6月25日付
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2018/06/post-1007.php
他にもイギリスのEU離脱やフランスの極右と言われるルベン氏の台頭などもいい例ですね。
いずれにせよここでのポイントは「グローバル化は普遍現象で止まらないものだから適応するしかない」というのはデタラメだというところです。
さて、二つ目ですが、「結果的に我々の生活を豊かにしてくれる」というグローバル化へのポジティブなものの見方です。
これは一部正しいのですが、想像している以上にグローバル化のデメリットは大きいです。
理解をする上で我々の二面性について考える必要があります。
ついついグローバル化を論じるときに陥りがちなのが、「消費者」として自らを捉えるということです。
もちろんそれは全てが間違っているわけではないのですが、我々は「消費者」であると当時に「労働者」でもあります。(ほとんどの人は)
グローバルは「消費者」という立場から見たときに良い側面ばかりだと錯覚するのですが、「労働者」という側面で見た場合にもろにそのデメリットが表面化します。
そのことはグローバル化の先進国と称される「アメリカ」とグローバル化に乗り遅れていると言われる「日本」を比べると表面化します。
性別ごとに大卒初任給で比べてみましょう。
『初任給の推移をグラフ化してみる』
http://www.garbagenews.net/archives/2308473.html
グラフで押さえておいて欲しいのは90年ごろまでは安定的に賃金は伸びたがそのあとは微増にとどまっているということです。
さて続いて、グローバル先進国アメリカの新卒初任給を見てみましょう。
グローバル化が我々にとって素晴らしいものであるならばアメリカは賃金がグッと伸びていなければなりません。
『Real entry-level wages of college graduates, by gender, 1973–2013』
http://stateofworkingamerica.org/chart/swa-wages-figure-4q-real-entry-level-wages/
日本とは違う波形を取っています。2000年代がピークでそのあと下がっています。
ただ、注目すべきなのはグラフの左端と右端を示す1973と2013年がほぼ同じ高さだということです。40年間でほぼ0の伸びなのです。
あれだけアメリカを見習え、アメリカのようにGDPを増やせなどと揶揄された日本及び日本企業以下の労働者状況なのがアメリカなのです。
GDPが増えようが一人一人が豊かにならなければ意味がないのです。この辺りの統計のマジックは日本の安倍政権もよく使うため注意が必要です。
二つ目のところで言いたいことは、グローバル化を進めた国の方がグローバル化に遅れていると揶揄されている国と大差がないか、むしろ賃金という観点で見た場合に遅れを取っているという事実からグローバル化がいいものとはとてもではないが言えないということです。
*グラフについて少しだけ補足すると、日本のデータは名目賃金のものでアメリカのものが実質賃金というところで比較がフェアではないように見えるかもしれません。ただ、アメリカが一貫してインフレ継続なのに対して日本の場合90年以降物価がほぼゼロ上昇で推移しているため問題ないと考えこのまま書きました。(正確には日本の新卒学生の実質賃金データが見当たらなかった笑)
『世界経済のネタ帳』より
グローバル化は民主主義を滅ぼす
すでに反証してしまいましたが、グローバル経済化がもし仮に最大公約数的に多くの人々が豊かにするならば国民に占める割合が最も大きい労働者階級の賃金はもっと上がっていいはずです。
ただ、すでに見ましたようにそれが起きていません。
労働者目線で見た場合、先のものだけでなく不都合なデータがわんさか出てきます。
例えば、正規に比べて圧倒的に賃金の低い非正規雇用率は小泉内閣で派遣法解禁後増加しました。若年層について言えば特にその比率が高いです。課題が山盛りなのがグローバル化の正体です。
ところで、多くの民衆にとって不利益な政策の実施や現象が横行するというのはどういうことなんでしょう。
私はこれを「民主主義の危機」と捉えています。
確かに、一応普通選挙は実施されてはいます。そういう意味では建前上民主主義ではあります。
しかしながら、小泉政権以降が顕著ですが、民主党政権に変わろうが安倍政権になろうが民衆にとって利益のある政策どころか不利益になるようなことを数々政治家は実行しています。
それゆえに課題が見えにくいんですよね。
ですからここで原点に立ち返る必要があります。
グローバル化した社会とはなんなのかという問いです。
グローバル化が何かの正体を掴むためには一般的に広まっているすべての認知を捨てる必要があります。
改めてですが私なりに一言でグローバル化した社会とは何かを表すと、資本家が資本の蓄積をするにあたって手段を選ばない世の中のことだと考えています。
「グローバル化だ英語を学べ」「グローバル化だプログラミングを」「グローバル化だ海外留学を」「グローバル化だ。海外で働け」。。。。。。。
これらは本質を捉えないグローバル化論なのです。これらは課題設定としておかしい。
繰り返しになりますが、グローバル化とは「資本蓄積にあたっては手段を選ばない連中による富の独占」です。
自らをグローバル人材と自称する竹中平蔵さんがそのいい例でしょうか。
彼は別に海外を飛び回って激しい競争に打ち勝ち金を稼いだわけではありません。
既存のルールを自分に都合のいいように改変し自分が経営する会社に利益誘導しているだけです。
具体的に言えば先の国家戦略特区という制度はまさにそれです。
移民の斡旋を自分が関わる会社で受注していました。(相当数)
その他「グローバル化だから既存のあり方を変えていく必要がある」と国民のためを思っているそぶりを見せながら規制を改変し、医薬品のネット販売を解禁させたM社長などもいい例です。
最近でいうとS社のS社長でしょうか。
彼はイノベーターとして持ち上げられていますが、既存の秩序を自分に都合のいいように変えるよう働きかける天才です。
キャリア参入の次はタクシー業界を既得権益にでっち上げ自社サービスの導入を狙っています。
https://newspicks.com/news/2779427/body/
「世界で羽ばたいている」というイメージが持たれている竹中氏、M氏、S氏、、、、
何かイメージされているグローバル人材とは全く異なる人物であることがおわかりいただけるのではないでしょうか。自分に都合のいいようにルールを改変している民衆の敵です。
実は、これは日本に特有のガラパゴス化した現象ではありません。
グローバル先進国アメリカ様の方が日本の比ではないほど露骨です。
プロダクトホッピングという言葉をご存知でしょうか。
ロバート・ライシュ氏がわかりやすく自著で説明してくれていますので引用いたします。
巨大 企業 は、( 特許 が 切れ て 後発 品 が 出回る 前 に その 製品 の 後継 を 投入 し て 特許 を 継続 さ せる)「 プロダクト・ホッピング」 や、( 製薬 会社 が ジェネリック 医薬品 メーカー の 参入 を 遅らせる ため に リベート を 払う)「 遅延 料 契約」 合意、 著作権 の 保護 期間 を 九五 年 に 延長 する 著作権法 の 改正 などの 手段 によって、 その 資産 を ひそか に 増大 さ せ て いる。
『最後の資本主義』ロバート・ライシュ(2016)東洋経済新報社
要するにちょこっとだけ形状を変えるだけで特許切れになりそうな医薬品の特許切れを阻止し、それで資産を拡大しているということです。権利から発生する不労所得でアメリカの製薬会社の多くは食っているんです。
ライシュ氏は別箇所で述べているのですが、製薬会社はこれを継続するために政治家への多額の献金を筆頭にロビイング活動を行い続けています。研究開発などよりもロビイングに大金を叩くのがアメリカの大企業で広く見られる実態です。
その他モンサントなどは有名ですが、ここで言いたいのはアメリカほど既得権益が幅を利かし、一般的にイメージされる競争の激しい「グローバル」社会なるものから遠い国はないということです。(事実起業の件数は90年代以降減少基調にある。)
資本主義の純粋化を叫ぶ人たちが資本主義を破壊しているのです。
日本におけるグローバル化の課題はこれから現れる
最後に日本におけるグローバル化の課題についてまとめたいと思います。
一般的にはグローバル化における日本の課題は「英語ができない」とか「外国人経営者がいない」とか「解雇規制が厳しすぎる」などといったものが上がってきます。
しかしながら、これらは全てデタラメでこんなもの課題でもなんでもありません。
グローバル化の本質は政治権力へ働きかけができる少数のものによる富の独占です。
先にもあげましたが自分たちに都合のいいように市場を変えていく奴らほど「グローバルの時代だ」と叫んでいるでしょう。政治と経済は不可分です。
そういう意味で、本当のグローバル化の課題とは民主主義が危機に陥ることです。
要するに今多くの国民は詐欺にあっているのです。
産業競争力会議なんかはその実行していることとメンバーの名前見たら呆れてものが言えなくなります。
もちろんそういった人間たちを重用する政治家を落選させられないという意味で有権者も責任はあります。
ただ、有権者が馬鹿という話で済むほど単純ではないと考えています。
大手メディアもスポンサー様にたてつけませんから表立って批判できるところなど限られております。これは国民の多くが知るべきことが知られない状況にあると言えます。
まさに「詰んでいる」という言葉が日本において言えることでしょうね。
しかもタチの悪いのが「違法」とは言い難いのです。
立法府にはたらきかけ合法にしてしまうのですからね。
こういった入り組んだグローバル化の問題を考えると、英語を学ぶ以上に政治に少しでも多くの人が関心を持つことが大切だと個人的には思います。
グーグルのラリー・ペイジは軍産複合体の支援を受けていました。
アマゾンのクラウドはCIAが独占受注しました。
AIGやゴールドマンはリーマン後大量の公金が注入されました。
グローバル企業ほど保護され既得権益を持ち、新規参入を排斥する企業はないのです。
英語ができてプログラミングができるのは大切なのかもしれませんが、政治権力へのはたらきかけほどのインパクトはありません。
下記はこちら書くに当たり参考にした書籍で、どれも非常に面白いため興味があればぜひ読んでみていただければと思います。