フォローする

8月8日より著書を書店にて発売中

時事

働き方改革法案が強行採決されたらしいけど何がやばいの?

更新日:

先週もめにもめた働き方改革法案が野党の反対根強い中で衆院厚労委員会を通過いたしました。現在与党の絶対多数ですから衆参の本会議も通過し法案となるのはもう時間の問題です。

 

データの不正やらなんやらでもめていたなあというくらいのイメージは多くの人が持っているのではないでしょうか。

ただ一方で、「働き方改革」という言葉が付いているのでなんとなく我々にとって良い法案なんじゃないかと思っている人も少なくないでしょう。

 

確かに利益を得る人は出てくるでしょうね。

しかしながら、私の見立てではごくわずかな人だけでしょう。

少なくともほとんどの労働者にとってはメリットはないどころかデメリットしかない可能性すらある法案なのです。

今日は、私自身自分の考えをまとめる意味合いも含めて働き方改革法案の何がやばいのかを書きました。

■働き方改革法案が話題になってる理由

まず、法案のヤバさに入っていく前にこの法案の中で、今回焦点を当てるところをあらかじめあげたいと思います。それは「高プロ」と呼ばれる箇所です。

なぜここを焦点にあげるかというと毎日新聞も指摘しているように「高プロ」の箇所こそが与野党最大の対立点だからです。

法案で与野党の対立軸は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)だ。

『高プロは働かせ放題?』毎日新聞 2018年5月24日

https://mainichi.jp/articles/20180525/k00/00m/040/115000c

 

さて、高プロとは何か?というところに行きましょう。

毎日新聞では次のように書かれています。

高プロは労働法制上で初めて、労働時間規制をなくす制度だ。

『高プロは働かせ放題?』毎日新聞 2018年5月24日

https://mainichi.jp/articles/20180525/k00/00m/040/115000c

上の記載に補足すると高プロとは「ある一定の年収帯及び職域においては時間で残業代を一切支給しない」です。

 

ところで、今回の働き方改革法案は何が問題かというとこの「高プロ」が適応される条件を広がるところにあるとされています。

 

労働者のリスクに焦点を当てて言い換えるならば残業代ゼロにできる領域が増え、永遠に働かせても合法になるゾーンが生まれる危険性があるということです。

 

だから、野党議員は反対しているんですね。

過労死が問題なのにさらに過労死を助長させる可能性を秘めているという意味で「働かせ方改革法案だ」と共産党などは指摘しています。

 

 

目次にもどる

■働き方改革法案のまずい部分

さてこの働き方改革法案が「残業代ゼロ法案」と言われるあらましをここまで書きました。

ここでは、もう少しだけ踏み込んでどこがやばいのか具体的に書いていきます。

 

これについては法政大学の上西教授や労働問題の権威である佐々木氏が指摘している共通部分だけおさえたいと思います。

一言で言えば「運用及び解釈にかなり余地のあるところがまずい」のですが順番に見ていきましょう。代表的なものを2つだけ挙げます。

 

まず一つ目が、高プロの危険性にブレーキをかけると自民党側が主張する「健康確保措置」がザルだというところです。佐々木氏の細野氏を批判する記事でわかりやすい箇所があるので引用します。

 次に、「厳格な健康確保措置」とありますが、そんなものはありません。

 健康確保措置としては、以下の4つがあります。

  1. 勤務間インターバル制度と深夜労働の回数制限制度の導入
  2. 労働時間を1ヵ月又は3ヵ月の期間で一定時間内とする
  3. 1年に1回以上継続した2週間の休日を与える
  4. 時間外労働が80時間を超えたら健康診断を実施する

(※なお、法案では「労働時間」という言葉は使われず「健康管理時間」という言葉を使っています)

 しかし、これら全てをとる必要はなく、この中から1個選べばいいという制度です。

 まぁ、4を選ぶ企業が続出するでしょう。

『細野豪志議員のブログを題材にして「高度プロフェッショナル制度」を解説してみた。』

2018年5月27日

https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20180527-00085709/

細野氏が法案の中身もわからずに法案に賛成したという批判の箇所はとても重要なのですが、今回はそこはさておきます。

 

ここで、佐々木氏が言っているのは高プロで残業代ゼロにブレーキをかける「健康確保措置」は4つ用意されているもののそのうち1つだけを企業側は選んで労働者に適応すればいいため、実際としては何のブレーキにもなっていないということです。

 

 

細野氏はこれのいずれもが適応されると勘違いされているのかブログではこの制度があるので大丈夫だと言っているわけですが、もし認識を間違えて法案に賛同していたとしたら議員バッチを外してほしいレベルですね笑

 

 

続いて二つ目ですが、行政側がなし崩し的に適応範囲が広げられる危険性があるところです。

今のところ対象は「金融商品の開発」など5業務が例示されているが、労働規制はこれまでも、法改正や政令改正を繰り返すことで緩和されてきた歴史がある。

『派遣法、対象拡大の歴史 「高プロ」も緩和の懸念「アリの一穴では」』毎日新聞2018年5月24日

https://mainichi.jp/articles/20180524/mog/00m/040/010000c

労働関連法案は毎日新聞が書いているようになし崩し的に適応範囲が広げられてきた歴史があります。

 

 

それがここにもある派遣法だったり、最近だと外国人労働者に関する法案がそうですね。

外国人労働者について下記の朝日の記事では滞在期間や資格要件などを追加していることが読み取れます。自民党は当社は数年で母国へ返すような話をしていましたがこの記事を読むとかなり長期間滞在できるものに様変わりして行っているように見えるのは私だけではないでしょう。

https://www.asahi.com/articles/ASL4F5DFXL4FUTFK020.html

 

法案だけでなく、政令なども駆使できますので、最初の第一歩さえ通してしまえばあとはやりたい放題というのがこれまでの歴史なのです。

そういった意味で、慎重な議論とより広範囲での納得感というのが必要になる法案なのです。

 

その他にも色々と問題があるのですが、一旦代表的なものを見たところでこの話はこれくらいでおしまいにします。

 

 

 

目次にもどる

■法案採決の根拠ないのに強行採決するのが今の自民党

最後にやはりこの法案がいかがわしものなのではないかということを決定的にしたところを触れずにいられません。

 

それは、そもそもこの働き方改革法案の正当性がない(崩れた)のにそのまま採決に至ったところです。

当初この働き方改革法案の正当性を示すために行政の側は厚労大臣を筆頭に「裁量労働制の方が労働時間が短いというデータもある」という答弁をしていました。

 

しかし、ご存知の通り先に挙げた上西氏をはじめとした方々がデータを精査した結果これが全くのでたらめだということが明らかになりました。このデータの正当性の崩壊は、厚労大臣をはじめ総理大臣も認めました。

 

ということは法案の審議をやり直し、、、、ということに普通の感覚ならばなるでしょう。

ただ、今の自民党は普通の集団ではありません。

法案の正当性がなくなったのにグダグダと日を過ごした後そのまま採決に入ったのです。

 

もちろん「議論は尽くした」とか言ってましたが、そんなのデタラメです。

データの裏付けが崩壊したのに結局法案の中身がろくに変わっていませんからね。

 

この後に及んで、「野党の妨害行為」「法案が入ったところでそんなに何も現時点で変化は起きない」「野党は対案を出せ」などと頓珍漢なことばかり言ってる人間が湧いてきましたが、このやり方を許すならば議会制民主主義ではありません。

 

自分たちが法案の正当性が崩れたことを認めておきながらそのまま採決をするって海賊が統治しているのと変わらないレベルです。

どうもこのやり方には既視感がある方も多いでしょう。

 

以前話題になった安保法案も結局合憲の根拠なんて何一つ上げられずに可決されました。

あれと非常に似ています。普通に憲法9条を読めば集団的自衛権など認められるはずがないのにグダグダごまかしながら法案を通したあれとやり方が全く同じです。

 

今回、働き方改革法案に関しては野党も対案をしっかり出していました。「対案を出せ」と騒いでたネトウヨはただの情弱でした。いずれも労働者の保護という点で見れば維新以外は自民党より理にかなった法案だったように思います。

 

今や野党を叩いとけば安心みたいな思考回路の人が随分と増えました。

確かに野党に政権担当能力があるかは私も懐疑的です。

 

しかしながら、ゲーテの言ったように「活動的なバカ」よりは何もできない人の方が数段マシです。

 

「野党=アホ=左翼」という脊髄反射を外し自民党がそれをしのぐチンピラ集団だという可能性を検討しなければ今後もますますまずい法案が通され人治国家への道を邁進し続けるに違いありません。

 政府の役人とすべての住民に、悪を悪として受け入れさせるように条件付けるために、<より小さな悪>という論拠が意識的に利用されていたのです。

 多くの実例がありますが、一つだけ例をご紹介します。ユダヤ人の絶滅措置が実行される前に、次第に激しさを増しながら、一連の反ユダヤ主義的な措置が採用されました。これらの措置はどれも、協力しないと事態が悪化するという理由から受け入れられたのですが、ついには最後にはもはやこれ以上の悪いことが起こりえない段階が訪れたのです。しかしこの最後の段階に至ってもこの論拠が放棄されなかったこと、そしてその誤謬が誰の目にも自明なものとなっている現在でも、この論拠がまだ利用されているということには驚かされます。

『責任と判断』ハンナ・アーレント(2015)ちくま学芸文庫 p61

 

目次にもどる

こくち

【8月8日より書店にて絶賛発売中です】
記事を読んでよかったと思っていただけた方はシェアやブックマークいただけますと幸いです。ご意見ご批判等も歓迎しております。

-時事

Copyright© 悲痛社 , 2019 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.