『金持ち父さん 貧乏父さん』という本ご存知でしょうか。
スティーヴン・コーヴィーの『7つの習慣』と並び世界で最も売れたビジネス書の一つに数えられる本です。
未だに本屋に行けばビジネス書コーナーや経済本のコーナーでこの本を目にすることが多くロングセラーでもあるようです。
私はいろいろあってこの本を読む人をよく目にするのですが、口を揃えて「何度読んでも学びがある」「この生き方をしたい」という言葉が飛び出してきます。
まあここからは完全に偏見なんですけど、人間観察の対象としてはいいのですが、長く会話したくないなと思う人が多いんですね。
一言で言えば『金持ち父さん 貧乏父さん』ってつまらないしくだらないだけでなく害でしかないんです。
今日は、『金持ち父さん 貧乏父さん』を私がくだらないと考える理由について書いてみました。
■目次
▶『金持ち父さん 貧乏父さん』による洗脳の要点
▶『金持ち父さん 貧乏父さん』が教えてくれること
▶『金持ち父さん 貧乏父さん』に洗脳されている人に渡してほしい本
■『金持ち父さん 貧乏父さん』による洗脳の要点
『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んではまっている人に対して「なんか気持ち悪いな」「キナ臭いな」と思った方は少なくないと思います。
マルチ商法にはまっている人などはその典型例としてあげて良いかと思いますが、コンサルタントや投資家をやっている人にもこの考え方は主流的です。
しばしば、金持ち父さんになることこそが人生における「成功」と彼ら・彼女らは断言しています。
さて、これこそが気持ち悪いと感じる極めて重要なポイントであると私は考えています。「ここ」というのはもちろん人生の成功を「金持ち父さんになること」と自信満々にイコールで結んでいることですね。
では、「金持ち父さん」の生き方は素晴らしいのでしょうか。
*補足すると「金持ち父さん」の人生における成功とは「ラットレース」と呼ばれる給与所得者を卒業し、不労所得(キャピタルゲイン)で生活できるようになりアーリーリタイアすべきだというものです。
本田健という人が『人生の目的』という本を書いてましたが、この人も似たようなことを話していました。
彼らがいうからそれが成功なんですか。
この生き方を送れば人生は成功だったのでしょうか。
この生き方をすれば優れた人物であったと言えるのでしょうか。
■『金持ち父さん 貧乏父さん』が教えてくれること
私は、『金持ち父さん 貧乏父さん』という本に洗脳される人がくだらないなと感じる理由は突き詰めれば一つです。
それは、今しがた私が述べたような「金持ち父さん」という対象を前にして思考停止しているところですね。「金持ち父さん」以外の生き方に成功がないと言わんばかりの。
本当にその生き方は素晴らしいものなのでしょうか?
その熟慮を一切欠いている人が『金持ち父さん 貧乏父さん』を読む人には主流的なのです。だから何度でも言いますが人間としてくだらないなあと思うわけですね。
私は、この本を良書だというアム◉ェイ、ニュー◉キンのようなマルチ商法の成功者や某コンサル会社出身でアーリーリタイアをしている人などいろいろ話を聞いたことがあります。確かに彼らは「お金を稼ぐ」という観点から見ると頭がいいと思います。
しかしながら、本当に繰り返しになりますが人間としてくだらないんですね。
人生の生き方に対してもう結論が出ているから議論が深まらないんです。(話していて楽しくない)
ちなみにこういうことを言うとマルチ商法をやっている人から言われるある共通の一言があります。
それは、「妬みだな!」という言葉です。
面白いことにみんなこれを言うのです。
別にそう思われてもいいんですが、そもそも論として私は『金持ち父さん 貧乏父さん』を否定しているというよりはそれを前にして思考停止している人がくだらないと言いたいのです。
一つ「妬みだな」と話す人に言える反論としては、それしか反論がないんだねということかもしれません。
■『金持ち父さん 貧乏父さん』に洗脳されている人に渡してほしい本
『金持ち父さん 貧乏父さん』にハマる人というのは面白い特徴が他にもあります。
その特徴とは結論が同じということから、行動までもが全く同じなのです。
例えば、読む本。
彼らは、本田健を読むし、コーヴィーを読むし、神田昌典を読むし、、、、、
彼らの本棚にゲーテはないし、内村鑑三もない。
この画一化もまた人間としてのくだらない部分を助長していると言ってもいいかもしれません。
さて、いろいろ批判的なことを書いてきましたが、もしあなたの周囲に『金持ち父さん 貧乏父さん』カルトに入っている人がいたらぜひ渡してほしい本があります。
最後にそれを紹介して終わりとします。
ソースティン・ウェブレン『有閑階級の理論』
ウェブレンはこの著書で有閑階級を分析したのですが、有閑階級の生態が極めて『金持ち父さん 貧乏父さん』を意志する人と近似しているのです。
有閑階級というのはいわゆる(生きるために働くというコンテクストでの)労働から解放されている人たちをさします。
彼らは「生きるのに必要ないこと」に金銭をばらまけることで自らの力を誇示するのですが、ロバートキヨサキが描く世界観と極めて近似しているんですね。
ウェブレン自体は直接批判的には書いていませんが、彼は「金持ち父さん的なもの」を批判したんですね。
詳細はぜひ読んでいただければと思います。
加えて、理論的には、有閑階級は略奪文化が始まった時から存在するが、略奪的文化段階から金銭的文化段階への移行と共に、有閑階級という制度が新しく完全な意味を持つようになる、ということが注意されなければならない。
『有閑階級の理論』ソースティン・ウェブレン(2015)講談社学術文庫
ハンナ・アーレント『人間の条件』
ハンナ・アーレントの代表作です。それだけでも読む価値はあるのですが、『金持ち父さん 貧乏父さん』というくだらない世界観にはまっている人には必ずや良薬となると私は考えています。
彼女は人間の行動をこの著書の中で「労働」「仕事」「活動」という側面から分析しました。
この中でアーレントは「活動」領域が人生を豊かにするものであるにもかかわらず、この世から消滅していることを暗に著書の中で嘆いています。
「活動」領域の復活こそが人間性の復活にもなると彼女は述べるのですが、この辺りを『金持ち父さん』に没頭する人が読むことで、その世界観のくだらない一面に気づけると私は考えています。
プラトン『ソクラテスの文明』
最後がプラトンの著書の中でも有名な『ソクラテスの弁明』です。
この著書でソクラテスの生き方から『金持ち父さん 貧乏父さん』にハマる人に一つの示唆的な学びがあります。
彼はあらゆる「答え」に疑義を唱え議論を振り出しに戻してしまう台風のような男なのですが、そんな面倒な男が伝えていることというのは「思考自体が何かを生み出すことはないかもしれないが、思考なき生は無意味である」ということです。
それから次のことも考え直してみてくれたまえ、一番大切なことは単に生きることそのことではなくて、善く生きることであるというわれわれの主張には今でも変わりがないかどうかを。
『ソクラテスの弁明』プラトン(1964)岩波文庫
『金持ち父さん 貧乏父さん』の生き方がいかに狭く思慮を欠いているかということをこれらを読めばはっきりするはずです。
『金持ち父さん』好きからの批判受け付けてます笑