現在ご存知の通り東京で新型コロナウイルスの新規感染者数が爆増するという展開になっています。
「検査が増えたからで合って心配はいらない」「風邪の延長だから問題ない」「医療逼迫度は低いから大丈夫」など楽観論が飛び交うのを見かけた方もいるかと思いますが、私はこれを「正常性バイアス」だと呼んでいます。
というのも「現実にうまくいっている国」ほどむしろ悲観的シナリオに常に目を向け対処しているからです。台湾やニュージーランドはほぼ封殺したといっていいですが、どちらかというと日本よりもシビアに物事を見ています。
逆に日本よりも楽観的に見て悲劇を生んでいたのがアメリカやブラジル、スウェーデンでしょう。
各国の選択として「風邪の延長」「経済最優先」という選択を批判する立場にはありませんが、こと感染症という文脈で言えば、間違いなく甘く見ていた国々だと私は思います。
話を日本に戻しましょう。日本も甘く見ていたと私は思っていて、それが今の第2回目の緊急事態宣言検討という展開を生んでいるのです。
そこで本日は日本がこれから緊急事態宣言を再度発令することになるのかやそうなった時の展開についてお話しできればと思います。
緊急事態宣言発令はあるか?
まず早速ですが、緊急事態宣言発令はあるかというところですが、これは基本的には可能性として高いと私は見ています。
特に来週にかけてこのまま感染者が東京都でうなぎ登りになり、200人でも超えれば緊急事態宣言というパフォーマンスをせざるを得なくなるでしょう。
というのも何もしなければ政治家側の立場に立った場合、無為無策という印象を与えかねず世論調査や支持率にも大きな影響がもたらされるからです。
東京都も無為無策と思われるのは困るでしょうから小池百合子もなんらかの形で安倍と歩調を合わせて類似したものを出してくると思います。
一方で、今回の緊急事態宣言は全国では出されるということは流石にないと思われます。
東京以外については感染者が爆増というまでにはいかないので個別最適という形で進められるのだろうと思います。
同じ都市圏でも愛知や大阪は少ないという状況で一律というのは政治判断として合理的なものではないためです。
発令した場合の社会はどうなる?
では、発令した場合に日本社会はどうなるのかというところが気になるでしょう。これは基本的に何も変わらないというのが私の見解です。
それは日本が憲法上私権の制限をできない?というところもありますが、前回の緊急事態宣言もそもそもが実態のない空洞だったからです。
当時企業が休業したのは、持続化給付金や休業要請協力金などがそれによってもらえたからというのが大きいでしょう。
また、こちらは日本独自でもありますが、「営業してはいけない空気感」も作用したと思います。
個人についてはこの空気感だけで金ももらえないのに外出を自粛していました。(一律の給付金は支給が遅かったし、それ自体に外出を禁止する罰則はセットにされてはいなかった。)
しかし、今回緊急事態宣言をやる場合、前回のような自主的な制限というのはそれほど起きないだろうと思います。
ポイントはいくつかありますが大きくは二つです。
まず一つは自粛によるダメージが自粛によるメリットと釣り合わないことを経験的に多くの事業者や個人が学んでいるからです。
言い換えれば、未知のウイルスという恐怖が大きなコストに見えたが故に多くの人は前回自粛したわけですが、その怖さよりも自粛することによる経済的なダメージがでかすぎるということですね。
また東京都は財源を使い尽くしており、補償金を出すことでその比較が変わるというシナリオも考えにくい状況です。
山本太郎さんのように都債の発行というのも案としてはあると思いますが、このやり方の問題点は仮に筋として通っていても第三波が来たらチェックメートになるという意味で単なる時間稼ぎにしかないため財源を事業者にばらまくというのはあまりいい策ではないとも思われます。
もう一つ形骸化しそうな理由が専門家会議を政府が廃止したということが大きいでしょう。もともと法的根拠がないままに作られた専門家会議ですが、実質的に政府が判断の依拠としていたということは安倍含めて述べていますのでそれ自体を廃止してしまうと専門家が基本的にはいないということになります。
仮に新しいメンバーでやるにせよ過去になぜ廃止したのかという説明がないと新しい人たちに何も期待できないという人も多いでしょう。
基礎をおろそかにしたつけ
色々話して来ましたが、緊急事態宣言が再発令されるのかどうかというテーマで話して来ました。
これはどのくらい増えるかによりますが、明日明後日以降の推移次第で発令となる可能性は高いと思います。
しかし、その効果効力は前回の半分もないだろうという風に私は考えています。要するに休業要請出して店閉めるところなどほとんどないという話です。
それは経済的ダメージが感染症のリスクをはるかに個人にとっては超越しているからです。
それに対してダメージを緩和するべく現金をばらまくというの政策判断がある可能性はゼロではないですが、東京都については予算的に余裕がなくなっていますし、国はとにかく金を出したがらないので策として考えにくい印象です。
結局のところやってる感を出すために緊急事態宣言は出すけどそれによって何も起きないという展開が待っているということですね。
その中で、ブラジルやスウェーデンのような道に行くのか北朝鮮のように行くのかはまだ読めません。しかし、韓国台湾のような感染症と経済の併立に行くという可能性はこれまでの体たらくを見ても可能性として低いことでしょう。