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時事

勤労統計の改ざんで明らかになったこと

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あまり最近テレビなどを見ないのでわからないのですが新聞であれば一面、テレビであればゴールデンタイムのニュースにしてもいいくらいの出来事がありました。

 

それは勤労統計における不適切調査です。

誤解を恐れずに言えば「基幹統計」とも言える勤労統計の改ざんです。

 

これはもうここ数十年の歴史が全て再評価される必要すら出てくるほどにひどいものです。

そこで本日は勤労統計の改ざんというのがどのくらいまずいことなのかについてまとめました。

 

勤労統計とは何か

まず、普段馴染みのない方向けに勤労統計とは何かについてかいたうえで今回の改ざんについて説明してきます。

勤労統計調査とは毎月抽出された企業群に対して賃金や労働時間などについてインタビューを行うことで国民経済の実態を把握するためのものです。厚生労働省のページでは毎月勤労統計調査とは何かについて記載がありましたので、下記に引用いたします。

賃金、労働時間及び雇用の変動を明らかにすることを目的に厚生労働省が実施する調査です(調査の概要と用語の定義はこちらをご覧下さい)。

その前身も含めると大正12年から始まっており、統計法(平成19年法律第53号)に基づき、国の重要な統計調査である基幹統計調査として実施しています。

毎月勤労統計調査は、常用労働者5人以上の事業所を対象として毎月実施する全国調査及び都道府県別に実施する地方調査のほか、常用労働者1~4人の事業所を対象として年1回7月分について特別調査を実施しています。

https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/12/tp1201-1.html#01

大正12年から続く我が国の中でもかなり歴史のある国民生活調査の一つのようです。

冒頭にもあげたことですが、「基幹統計調査」と法律で位置付けられるほど国において非常に重要な調査だと厚労省は述べています。

 

それゆえに、調査には慎重を期し、一定の標本数を確保しつつも偏りが出ないようになど事業所選定一つにしてもかなり気を使っているようです。

そして、調査対象についても継続的に見直しを行うことで時代の変化に合わないやり方を継続しないようつとめているとここでは説明があります。

 

 

さて、ここからが本題の改ざんと関係があるところに繋がりますので大切です。

単なる統計データが我々の国民生活にそれほど影響があるのかというお考えの人がもしかしたらいるかもしれません。

 

確かにその「統計」自体が直接そのまま我々の生活に影響を与えるわけではありません。

しかしながら、「基幹統計」と言われるだけあって、立法や行政の運用をするにあたり最も参照されていると言ってもいいのがこの勤労統計調査なのです。

ですので、仮にこの勤労統計調査が改ざんされているなんてことになればその改ざんが始まってから今日に至るまでの行政がおかしくなることを意味します。

 

勤労統計改ざんの概要

さて、そのにわかには信じがたい勤労統計の改ざんがあったというのが本日取り上げているトピックスになります。

第一報は中日新聞だったでしょうか。おそらくこの記事だったと記憶しています。

賃金や労働時間の動向を把握する厚生労働省の「毎月勤労統計調査」について、全数調査が必要な対象事業所の一部を調べない不適切な調査が二〇〇四年から行われていたことが分かった。担当者間で十五年間引き継がれてきた可能性があり、データを正しく装うため改変ソフトも作成していた。統計を基に算定する雇用保険などが過少に給付されていたことも判明し、厚労省は不足分を支払うことを検討する。

『勤労統計で偽装ソフト 厚労省、04年から不適切調査』中日新聞 2019年1月10日

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019011002000072.html

厚労省が2004年から毎月勤労統計調査において不適切調査を行なっていたと中日新聞は報じています。

そして、改ざんを正しく装うためのソフトも作成していたと衝撃的なことも書かれています。

 

また、この統計調査をもとに算出されていた雇用保険の支払いなどが実際に支払われるべき金額よりも過少に支払われていたことも判明しています。

控えめにいっても行政自体がこの勤労統計調査の改ざんにより歪められていたのです。

 

今後過少支給などのケースでは差額分を支給するという対応を取るそうですが、その金額は相当なものとなります。(産経新聞と読売新聞の調査では誤差はあるもののいずれも五百億円以上と推定)

 

 

さらに驚くべきは毎日新聞の続報です。

実はその改ざん行為は2004年よりもさらに前からあったというのです。

平成8年ですから少なくとも20年以上にもわたって勤労統計が歪められてきたと毎日新聞は報じています。

賃金や労働時間の動向を把握する厚生労働省の「毎月勤労統計」の調査が不適切だった問題で、不適切調査は平成8年から行われていたことが12日、分かった。さらに、500人以上の規模の事業所を全調査しなければならないものを、厚労省は東京都分に加え、昨年6月、大阪、愛知、神奈川の3府県に「抽出」とする不適切調査を要請していたことも判明。統計に対する厚労省のずさんな対応が浮き彫りになっている。

『勤労統計不正、23年前から ずさん対応浮き彫り』産経新聞 2019年1月12日

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190112-00000544-san-soci

また、毎日はその期間が実際には20年以上だったということに加えて、本来厚労省自体が発表している調査方法通り調査していなかったという点も新たに指摘しています。

 

他にも各種メディアがこの勤労統計調査が報じていますが、朝日、毎日、読売、産経の全方向から指摘されているということで事態の深刻さはこれからさらに明らかになっていくのは避けられません。

 

ところでこの勤労統計調査は各種手当の支払い額決定の際に参照されるだけでなく、GDPなどの「景気判断」指標の元にもなっています。

GDPが増えたら「経済が好調」「経済が成長した」と一般的には言われますが、仮に勤労統計調査が改ざんされていたとなるとこのGDP自体もかなり怪しくなってくるのです。

 

これと直接関係があるかはわかりませんが、実はすでに2018年11月の段階で日銀が政府統計に対して疑義を唱えていました。

日本の現状を映す統計を巡り、内閣府と日銀が綱引きしている。国内総生産(GDP)など基幹統計の信頼性に日銀が不信を募らせ、独自に算出しようと元データの提供を迫っているのだ。内閣府は業務負担などを理由に一部拒否しているが、統計の精度をどう高めるかは、日本経済の行く末にも響きかねない大きな問題をはらんでいる。

『政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど日銀が不信感 経済』日経デジタル2018/11/13

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37675170S8A111C1EA1000/

日銀が独自に算出しようと元データの提供を迫ったところ「内閣府は業務負担などを理由に一部拒否」したようでこの記事だけ読んだらこれも完全にクロとしか思えません。

 

再度調査しろといって「手間がかかるので」はわかりますが、「データをよこせ。あとはこっちでやるから」と言われて拒否するって相当やましいことがあるでしょう笑

 

基礎統計がおかしいのでおそらくGDPに限らず他にもおかしな指数があるでしょう。

 

 

中国の統計にケチをつける資格がない

さて、これがどのくらい異常なことかわかりますでしょうか。

基幹統計が改ざんされていたということはこれまでの少なくとも20年に渡る各種指標や各種行政施策を全て見直す必要が出るのです。

 

正しいと思っていたことが誤っている、誤っていると思っていたことが正しいと評価がひっくり返ることがいくつも出てくることが予想されるのです。

 

ところで、よく「愛国者」を気取る方々は中国がGDPや経済成長率を発表すると「あんなものはあてにならない」「デタラメでしょう」などと意気揚々とこれまでぶっ叩いてきました。

「日本の基礎統計も怪しい」と私が申し上げたのはもう2年ほど前ですが、この度その通りになりました。

中国の統計調査に全くケチなどつけられるレベルではないことを暴露しました。

北朝鮮や中国にマウントを取っている場合ではなかったというのが我が国の実態だったのです。

 

 

厚労省に関しては昨年このこと以外にも働き方改革関連法案においてデータ捏造をしていましたので、もしかするとこの程度の改ざんは朝飯前だったのかもしれません。

 

厚労省に限りません。昨年だけでも財務省も改ざんをしましたし、年末には法務省もデータを捏造していました。

 

 

民主主義というのは国民による権力の監視がなければ、腐敗する運命にあります。

 

今日本は「国家に都合のいいことであれば犯罪行為が合法化されている時代」といってもよくこのまま放置し続ければ他でもない我々にいずれそのつけが降りかかってきます。

 

今求められるのは政治に対して少しでも関心を持つことです。

 

エリートはその頭の良さを「全体の奉仕者」として使用しなくなりました。

左翼か右翼かとかそういうレベル以前のことがここ最近常態化しています。

であれば、我々庶民が監視をするしかありません。

議論を進めるために、君が大量虐殺組織の従順な道具となったのは、ひとえに君の不運のためだったと仮定してみよう。その場合にもなお、君が大量虐殺の政策を実行し、それゆえ積極的に支持したという事実は変わらない。というのは、政治とは子供の遊び場ではないからだ。政治においては服従と支持は同じものなのだ。

『イェルサレムのアイヒマンー悪の陳腐さについての報告ー』ハンナ・アーレント(2017)みすず書房

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