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経済

なぜある種の人は規制緩和すれば世の中が万事良くなると考えてるのか?

投稿日:

「日本の停滞は現状の規制緩和ではぬるい。」

「自由貿易協定に参加しなければ世界の孤児になる。規制緩和をして開国しよう」

「日本は解雇規制が厳しすぎる。規制緩和して人材流動性を高めよう」

 

 ここ10年か20年くらいでしょうか。

 

 

日本の閉鎖性への批判とともに、規制緩和を求める「自由化」への動きが多方面から見られます。

 

 

しかし、現実はどうでしょうか。

 

そのような規制緩和を進めて日本国民は幸せになったのでしょうか。

 

政権を問わず、実質賃金の下落や金融資産ゼロ世帯の更なる増加が進んだだけだと言えます。問題点だらけです。

 

おそらく、ここ数十年で日本が豊かになったと極めてごく少数の人たちだけです。

 

 

すると、自由化路線は少なくとも正しくはなかったと考えられます。

 

 

しかし、自由化によって日本がさらに貧しくなっているという現状を目にしても、この考え方は改められることがありません。

 

 

なぜでしょうか。

 

 

それは、規制緩和こそが最善の道だとする背景を考えることで見えてきます。

 

 

その背景を知るうえでお勧めの一冊があります。

 

 

フリードリヒ・ハイエクの『隷属への道』です。

 

ハイエクはノーベル経済学賞を受賞した20世紀を代表する経済学者なのですが、

 

彼こそが現代社会で自由化(規制緩和)を主張する理論的支柱と言われています。彼もまたあらゆる人為的な「計画」を嫌いました。

ハイエクが「自由」を叫び続けた理由❶ー国家の暴走の時代ー

ハイエクが「自由化」(規制緩和)を主張したのは当時の時代背景が関係しています。

 

同著は1944年に出版されたのですが、時代は丁度第二次大戦が終わる頃です。

 

 

当時は国家の暴走により桁違いに多くの人が犠牲となりました。

 

その代表がナチスドイツやスターリンのロシアです。

 

 

ハイエクはこういう社会主義国家や共産主義国家が多くの誤解や過ちにより悲劇を生み出していたことに着目しました。

 

 

例えば、これらの国は近代民主主義の原理である「法の支配」を悪用しました。

 

ハイエクの考える「法の支配」は立法者に対する立法行為の制限を意味します。

法の支配とは、政府のあらゆる行為があらかじめ定められ公表されたルールに縛られることを意味する。

『隷従への道』フリードリヒ・ハイエク(2016)日経BPクラシックス

 

 

 しかし、当時は全世界的にハイエクとは逆の意味で「法の支配」が行われました。

 

「法の支配」を、立法者が作成した法律にいついかなる場合でも忠実であることと解釈されたのです。

今日のように法の支配が重大な脅威にさらされたことは、ここ数世紀ほどは絶えてなかったのである。立法者の権力に制限はないという考えが出現したのは、たしかに国民主権と民主主義政体に一因がある。さらに、国家の行為に法律の裏付けがある限り、法の支配は維持されるという思い込みがこれに拍車をかけた。だがこの思い込みは、法の支配の意味を完全に誤解している。

『隷従への道』フリードリヒ・ハイエク(2016)日経BPクラシックス

 我々もつい「法の支配」を「我々自身が法令を遵守しなければならない」という意味で捉えがちです。

 

 

しかし、「法の支配」の本意は国民を縛ることではなく、あくまで統治権力を縛るためにあるとハイエクは言っいるのです。

 

法の支配は、万事が法で規制されることを意味するのではない。むしろ逆である。法の支配とは、国家の強制力の行使が、あらかじめ法律で定められた場合に限って予測可能な方法でなされることを意味する。

『隷従への道』フリードリヒ・ハイエク(2016)日経BPクラシックス

 

 立憲主義などの歴史を考えると、ハイエクの主張は理にかなっています。国民がどのような時に権力を行使されるのかわからない場合、それは法治国家ではなく人治国家となります。

 

絶対王政時代では法律は意味を成さず、人治国家だったことを考えれば良いでしょう。

 

 

ハイエクが「自由」を叫び続けた理由❷ー自生的秩序を評価ー

 ハイエクが「自由化」(規制緩和)を主張したのにはもう一つの理由があります。

 

 

それは余計な計画を立てずに「自生的秩序」によって我々は大いに進歩できると考えていたからです。

 

 

彼は「組織」や「計画」に対立する概念としてこの「自生的秩序」という概念を使用しました。

 

近代社会の構造が、計画的な組織が達成しえたものをはるかに超えるあの複雑さの程度を達成しえたのは、それが組織に依存していたからでなく、自生的秩序として成長してきたからである。

『隷従への道』フリードリヒ・ハイエク(2016)日経BPクラシックス

 

 

 「自生的秩序」とは人為的に作られた仕組みではなく、伝統などを通して無意識的に生成された秩序を指します。英語版では” spontaneous order”(直訳は自発的秩序)と表記されており、我々が意識的に作る秩序とは対立する概念です。

 

 

仮に人為的なものが入ると、それは「自生的秩序」ではなくなり、誰かの「計画」になるというのがハイエクの考えです。

 

 

 「自生的秩序」に彼がこだわる理由は、人為的な「計画」や「組織」は少数者の目的になることが避けられないからです。

 

法律を制定する時点で特定の効果が予想されている場合には、法律は国民に活用される手段ではなく、立法者が国民に目的を押し付ける手段となる。

『隷従への道』フリードリヒ・ハイエク(2016)日経BPクラシックス

 

とにかく人間が全てをコントロールしようとすると、いずれ誰かの卑しい目的に従属せざるを得なくなるというのが、ヒトラーなどを見て出した彼の結論なのでしょう。

 ハイエクの思想を悪用する人たち

 

ここまでハイエクの思想の一端を見てきました。

 

冒頭の規制緩和を喧伝する人たちは、ハイエク(もしくはフリードマン)の影響を少なからず受けています。

 

例えば、政府が何かをやろうとすると「既得権益ができるだけ」「天下り先を官僚が探すだけ」と反射的になる人はその典型例です。誰かが人為的に介入するとロクなことが起きないというのはハイエクの思想そのものです。

 

 

しかし、問題点は、ハイエクの考えに感化された人たちが本当にハイエクの思想に忠実なのか怪しいところです。

私はハイエクの思想それ自体は黒でも白でもないと思います。

 

その思想を使う人たちが黒か白かでハイエクの思想の色も決まるのです。

例えば、国内外を問わず、「自由化をせよ」「規制緩和が足りない」という人たちが何をしているか調べてみてください。

 

皮肉にも立法形成過程に関与し、自ら及び自らが所属する団体への利益誘導を当たり前のように行なっています。

 

 

こういう方々は「ロビイスト」と呼ばれるわけですが、我々が想像する以上の金額を取引することで社会を都合のいいように捻じ曲げようとしています。例えば、下記のサイトはアメリカにおけるロビイング活動のランキングを発表したサイトです。

 

見れば歴然ですが、業界団体や大企業による多額の献金が並んでいます。「自生的秩序」を願う者たちの行動でないことは明らかでしょう。https://www.opensecrets.org/lobby/top.php?showYear=2018&indexType=s

 

 

日本についてはここでは言及しませんが、アメリカと状況は同じです。当たり前のように政策会合に利害関係者が同席しています。

T氏やN氏は有名でしょう。

 

ハイエクの思想に感化されるにせよ、彼の思想を知った上で、この思想を喧伝する人たちが取る行動を我々は注意深く見る必要があります。

 

「規制緩和」の問題点は、既存の秩序をそれを叫ぶ人たちが略奪するためにしばしば叫ばられる言葉だということです。

 

こくち

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