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経済

我々の生活が苦しい2つの理由

更新日:

「アベノミクスで株価が民主党政権時代の3倍に!」

「大企業は過去最高益を更新」

「GDPは2020年に600兆円を突破の見込みに!」

「全国で初めて求人倍率がすべて1倍を超えました」

 

安倍総理及びその親衛隊から語られる景気のいいニュース

あなたも上のいずれかは聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

先日私が使っているNewspicksでバズっていたニュースに下記があるのですが、麻生財務大臣によればこれほどいい数字が並んでいるのに生活が苦しいというのは会社としての経営能力不足だとのことです。

 政権の安定があったからこそ、これまでの経済成長がずっと継続性を持たせられたのは間違いない事実であって、5年前より今の方が悪いという人は、よほど運がなかったか、経営能力に難があるか、なにかですよ。ほとんどの(経済統計の)数字は上がってますから。

『経済成長感じない人は「よほど運がない」 麻生氏』2018年4月17日22時01分 朝日新聞デジタルより

確かにトヨタ自動車を筆頭に円安の恩恵により過去最高益を出した会社が安倍政権の中でかなり出ました。

そういう側面がゼロとは言えないでしょうね。

 

しかしながら、経済と言う言葉の語源である「経世済民」という観点から見たときに国民の生活が苦しい状況になっていると私は考えています。

 

例えば、家計の消費は安倍政権以降の2015年に過去最低を更新しました。2017年はその時と比べて100.5%増と微増しているものの根本的な上昇トレンドとは言いがたい状況です。(誤差の範囲)

 

また前に話題になりましたが「貯蓄ゼロ世帯」が安倍政権以降増大し続けています。

山本太郎委員が提出したデータによれば20代に至っては6割近くが貯蓄ゼロとかなり悲惨になっています。

http://twiggy-twiggy.com/post/1628

 

いろいろと前置きをしましたが、要するに「あなたの生活が苦しい(苦しくなっている)」とすればその感覚は間違っていないという立場を私は取ります。

景気のいいニュースがいくら飛ばされようとニュースの方が間違っているということを各種データを参照しながら今日は話しできればと思います。

 

■経済的「豊かさ」で我々が見るべき指標

「経済的豊かさ」と一口に言っても精神的なものも含め多面的な「豊かさ」の尺度があります。

先に述べた株価、GDP、求人倍率、就業者数、名目賃金、家計の消費支出などなどたくさんあります。

 

どれをみれば我々の生活が豊かであるか苦しいと考えるべきかが見えにくい方も多いのではないでしょうか。

私もそうでした。

 

ただ、経済というものは「より多くの人の生活水準を高めるために論じられるべき」という前提に立つようにすることで、どういう指数に着目すべきかが見えてくると考えるようになりました。それは「個人の実質的な購買力」に関わるものです。

 

もちろんそれに関連して見るべき指数は複数あります。

ただ、まずもって見るべきは「個人の実質的な購買力を指し示す指数」です。

 

つまり、この「購買力」に関する数値が改善されれば「生活が豊かになっている」だと私は考え、悪化すれば「生活が苦しいものになっている」と考えます。

 

さて、「購買力」は二つの側面から規定されます。

一つが「月収30万円で買い物を一ヶ月した時にどれくらいのものが買えるか」といった形で見る物価の側面です。

二つ目が、「月収30万円のうち税金などで強制徴収された後、自由に使える金額がどれほどあるか」という可処分所得の側面です。

 

結論から述べれば安倍政権以降は両側面で悪化していることを示す指標がずらっと並んでおり一部の富裕層や大企業の人にとっては有益な部分がありますが、広く多くの市井の人々にとっては最悪の経済政策です。

 

さて、ここから順を追って安倍政権がひた隠しする経済の実態を見ていきましょう。

 

目次にもどる

■生活が苦しい理由①ーインフレによる実質購買力の低下ー

まず1点目が「物価の側面」です。

安倍政権は経済政策の最大のスローガンとして何を掲げているかご存知でしょうか。

それは「デフレからの脱却」です。

 

それに向けて各種政策に取り組んでいるのです。

「デフレ」こそが国民の生活が苦しい最大の理由だと安倍さんは考えているわけです。

 

実はこの「デフレ悪玉論」というのは安倍さんの独自の発想ではありません。

経済学では常識とされています。おそらくジョン・メイナード・ケインズの考えに基づいているのでしょうか。

 

ただ、「インフレ=善、デフレ=悪」というのは大嘘です。

こんな当たり前のことを書かないといけないのかと思うくらい当たり前のことを今から述べます。

インフレには良いものも確かにあるが悪いものもごまんとあり、一方でデフレは悪いものも確かにあるが良いものもごまんとあります。

 

こんなことは勉強しなくても「常識」に頼るだけでわかります。

ただ、経済学を勉強すると「常識」がなくなるんですね。

 

その筆頭例が「エリート中のエリート」である黒田日銀総裁です。

彼は、「インフレ=善」と考えているので物価目標を立てていました。

そしてそれが達成できなかったある年の総括で下記のように述べたのです。

「このところ原油価格も大幅に下落しており、物価の下押し要因として作用している。短期的とはいえ物価下押し圧力が残る場合、着実に進んできたデフレ心理の転換が遅れるリスクがある」

『原油価格の下落を嘆く黒田総裁を貴方は支持できるか?』
小笠原誠治 2014年11月05日 14:17

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL27HDP_X20C15A2000000/

「原油安のせいでデフレ脱却できないじゃん」と黒田さんは嘆いているのですが、これを見て「黒田さんがんばれ」と思いますか?

 

「アホか」となるのではないでしょうか。

自分たちが産油国ならまだしも石油の99%以上を輸入していてかつそれが電気、工場稼働、食物生産などクリティカルな箇所の何もかもに使用しているにもかかわらずその「コスト低減」を嘆いているのです。

 

私はたまに「経済学を勉強しろ」と絡まれることがあるのですが、こんな非常識な人間になるなら経済学など絶対に勉強するものかといつも思うばかりです。

 

 

少し長くなりましたが、今の黒田総裁の例で本当にいいたいことは黒田総裁がダメ人間だと叩くことではありません。

私がいいたいことは日本で経済についていちばん詳しいと言われる人がなると言ってもいい日銀総裁の脳髄を侵食するほどに「インフレ=善、デフレ=悪」が強力な思想として蔓延しているという現実です。

 

これほど非常識な黒田総裁ですが、政権に近いエコノミストや大学教授からは持ち上げられています。これがどれほどの狂気かおわかりいただけるでしょうか。

 

さてこの黒田総裁ですが、そんな非常識な思想に汚染されているせいで我々の生活を苦しいものにしている張本人になっています。

まずは下記のグラフをご覧ください。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/27/27p/dl/sankou27p.pdf

平成24年2010年の12月(ほぼ平成25年)から始まった第二次安倍政権以降明確なトレンドの変化が見られるのではないでしょうか。

それは消費者物価指数の急上昇と購買力を示す実質賃金の急落です。

 

安倍政権が何かをしたからこの結果になっているという思考はかなり妥当だと言えるほどにくっきりトレンドが変化しています。さてその原因ですが、金融緩和による円安です。 下記を見てください。円安と消費者物価指数にはかなり強い相関性が見られます。

 

さて基本のおさらいですが、「実質賃金」とは国民の購買を示す指数です。

つまりこれが悪くなると「生活が苦しいものになっている」のです。

安倍政権の金融緩和による円安誘導以降これが急落しました。

 

つまり、安倍政権による異次元の金融緩和は我々の購買力を弱体化させたのです。

なおこの「実質賃金の低下」の話をするとエコノミストや教授が今となっては見苦しい言い訳にしか見えないのですが、教訓とするために一例を見てみましょう。

実質賃金ガー。経済オンチだから経済理論を勉強すべし。実質賃金がいいと喜んで就業者数が減っていいのかねえ。雇用理論では最初実質賃金が下がるから就業者数が増える。そして就業者数が増えて完全雇用に近づくと名目賃金が急上昇し実質賃金も上がり出す。まあ、今はこのあたりだな

高橋洋一嘉悦大学教授 twitterより 2015年12月20日

高橋洋一氏は実質賃金が一時的に下がるのは悪いことではないと述べています。

そして、彼の博識な「雇用理論」によれば、「完全雇用に近づくと名目賃金が急上昇し実質賃金も上がりだす」のだそう。

 

現在はアベノミクス信者こそ認めるように「完全雇用」に近い状態です。

『労働力調査より』

http://www.garbagenews.net/archives/2229177.html

さて高橋氏の先ほどのツイートは2015年時点野ものですが、現在は2018年です。

3年もあればさぞ、名目は急上昇し、実質も上がりだしていることでしょう。

 

 

調べてみました。厚労省のだしている資料に勤労統計というものがあります。

この資料は事業所ごとに調査をしているもので、ここで挙げている名目及び実質賃金などが見れます。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/30/3002r/3002r.html

 

さて高橋大先生の予想は当たっているのでしょうか。

高橋大先生のツイートをした2015年を100とした場合の名目賃金の推移は下記です。

2015年 100

2016年 100.6

2017年 101

 

一応名目賃金の指数が1上がっています。

この1がすごいのかどうかを考えてみましょう。彼が述べた「名目賃金が急上昇し」に値するのか。

 

結論から言いますとそれはありえません。下記資料を見るとわかるのですが、2010年のあの「悪夢と言われた民主党政権時代」を100としたデータで2015年は名目で99です。

つまり、2015年を100とした時に2017年に101ということは名目で民主党時代の水準と同程度に戻った程度でしかないのです。要するに「安倍政権が民主党より優れている」ということはできないのです。少なくとも民主党政権時代を「悪夢」と呼べるほどの差は全くありません。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/27/27p/dl/sankou27p.pdf

 

もしかしたら実質では上がっているかもしれないと思い実質の方も見てみました。

2015年 100

2016年 100.7

2017年 100.5

 

こちらは1どころか0.5しか伸びていません。

しかも2010年を100とした場合2015年は下記によると94.6ポイントですから0.5程度上がったところであまり足しにならないレベルです。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/27/27p/dl/sankou27p.pdf

 

ここから見えてくるのは安倍政権は(何もしなかった)民主党と比べ物にならないくらい経済政策が下手くそだということになります。

 

 

さて少しめんどくさい数字講釈になりましたのでまとめます。

まず、端的に言うと、安倍政権以降、名目値では民主党時代と同等ながら金融緩和による円安の結果、物価が上昇し実質賃金の大幅悪化が起こりました。要するに民主党時代よりも生活が苦しい状況になっているということです。

 

これに対し、高橋氏を筆頭に「就業者数が増える過程で実質賃金が下がるがいずれ名目の急上昇とともに実質も上がりだす」という擁護が政権発足後一貫してみられてきたものを紹介しました。

 

しかしながら、5年も政権運営をして名目も上がらなければ実質に至って大幅下落しているということで全くもって教授の言った通りになっていないということをお伝えさせていただきました。通常理論通りなら失業率の低下が進むのに相関してもうトレンドが変わっていないといけません。

 

つまり、高橋氏の理論は外れたかもしくは変化があったとは言えないほどのものだったのです。

 

*なおこのような理論の破綻が起こる背景に著名なエコノミストである水野忠夫氏や中原圭介氏が指摘していますが「経済のパラダイムが変わっている」ことに気づいていないことが挙げられます。その変化するパラダイムの兆候とは今までは名目と実質は連動していたのですが、ここで示したように実質と名目が全く連動していないというものです。

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■生活が苦しい理由②ー増税による可処分所得の低下ー

さて、もう一つの生活が苦しい理由の方に行きましょう。

二つ目は可処分所得の低下です。

 

可処分所得とは先に述べましたが、税金や保険料などの自動的にひかれるものを除いた「自由に使えるお金」のことを言います。

こちらも物価側面からの購買力とは異なる形で購買力に影響力を与える重要な指数です。

 

つまり、可処分所得が増えれば生活は豊かになり減れば生活が苦しいものとなるのです。

さて、我々国民の可処分所得はここ最近どうなっているか。

 

これに対する結論は可処分所得は各方面から厳しい状況が伺えます。

 

その最大の原因は何かと言うと少子高齢化です。

少子高齢化による社会保険料の増大や年金保険料の増大、給与所得控除の縮小などで我々の可処分所得は圧迫されているのです。

 

まず、給与所得控除ですがその縮小具合が国税庁の下記のページを見るとわかります。

https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1410.htm

現在のところ1000万円以下の人は控除縮小とはなっていませんが、1000万円以上の方は控除縮小で実質的には増税になっています。

 

2012年段階では「1000万円以上1200万円以下」の層、「1200万円以上1500万円以下」の層、「1500万円以上」の層はすべて収入金額の5%に170万円を足したものでした。

 

しかしながら、2013年に「1500万円以上」の層に245万円と言う上限が設定されたことを皮切りに2017年は1000万円以上の層すべてに220万円の控除上限が設けられています。

 

他の例としては厚生年金保険料及び健康保険料の上昇推移について下記のように述べています。

会社員が入る厚生年金の保険料率は2004年1月に給与の13.58%でしたが、最後の引き上げとされる2017年9月には18.3%まで上昇しています。年金制度とは関係ないものの、同じ期間の健康保険の保険料率も9.31%から11.5%にまで上昇しています。

『日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業』中原圭介(2017)講談社現代新書

 

要するに給与の所得税控除枠は狭められる傾向にある一方で、厚生年金保険料及び健康保険料の引き上げという双方からの可処分所得の縮小が進んでいるということなのです。

 

介護保険なども最近値上げが発表されたり消費税増税も計画通り行われると言われていますからもう生活が苦しいという流れは止まりそうもありません。

 

 

源泉徴収という形を取られると手取りの前に引かれていますのでいまいち増税実感が鈍いように思います。ただ、経年で見て行った時、今は昔に比べかなり生活が苦しいという指数が山のように出てくるのです。

 

以上長くなりましたが、我々の生活が苦しい理由について見てきました。

冒頭で「株価が三倍」「求人倍率が一倍」「GDPが600兆円達成見込み」といった「なんとなく景気のいいニュース」が消し飛ぶくらい悲観的な実態が見えてきませんか?

 

政府は第二次大戦中の大本営発表のように基本的に行けるところまでごまかそうというつもりだと思われます。

 

例えば、首相官邸のホームページは悪意まみれで「賃金引き上げ」というのはソース元を明かしていませんが、おそらく経団連加盟企業という全体の1%以下のかつ大企業の身を抽出したものを掲載していると思われます。

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/sanbonnoya.html

 

そこに含まれない国民の生活というのは「賃上げ」に含まれていないのですが、そんなことどこ吹く風です。

 

そういった政府が信頼できない中で、我々がすべきことは政府の発表を全て疑ってかかることです。

政府のいう数字が全てはありません。

その通りだと思って見ていたら「日本が戦争に勝っている」と勘違いしていた昔から何一つ国民は成熟していないということになります。

 

悲観的なことが溢れている内容でしたが、現実を見ないでおこうとしてもそのツケが後で回るだけです。

 

よく「批判するなら対案を出せ」と言われるのですが、ここまで絶望的だとポチッとボタンを押せば何もかもが変わる特効薬などありません。

 

いかにダメージを軽減するか。

少しでも前へ進めるのにどうするかを「真面目」に考えてみるのが大切だと思います。

 

以上我々の生活が苦しい理由でした。

参考になれば幸いです。

 

参照したテキストは下記です。

これらの本もまた批判するべきところはたくさんあるのですが、既存の経済学とは決別することにチャレンジしている勇気ある書籍ばかりです。

オススメです。

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