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時事

ロスジェネ世代の叫びは「自己責任」で片づけられるか?

更新日:

ここ最近「ロスジェネ」という言葉を頻繁に聞くようになりました。

 

「氷河期世代」ともいうようですが、その意味するところは就職が難しかった社会情勢のあおりをもろに受けて不遇にある人たちを指す言葉のようです。

 

なぜここ最近話題になっているのでしょうか。

 

一つには今年の5月ごろから政府が氷河期支援というのを打ち出したことが大きいでしょう。

就職氷河期世代」とされる30代半ばから40代半ばの世代が安定した仕事につくための支援策を29日、厚生労働省がとりまとめた。今後3年間を集中的な支援期間とし、正社員として雇った企業への助成金の拡充や企業や自治体と連携しての職業訓練などが柱。政府は今夏にまとめる「骨太の方針」に盛り込み、数値目標を設けて達成をめざす。

『就職氷河期世代、国が就業支援 不安定な仕事から脱却を』朝日新聞デジタル 2019年5月30日

https://www.asahi.com/articles/ASM5Y6W70M5YULFA018.html

例えば、この記事では、30代半ばから40代半ばくらいの方をロスジェネ世代と定義し、その世代で安定した職に就くことができていない方々を対象に職業訓練やそれらの層を採用した会社に金銭的補助を与えるなどの支援策が言及されています。

 

 

さて、こういった支援に対して「自己責任なのだから支援など不要」という言葉が飛び出すことが少なくありません。

 

特に、新自由主義(ネオコン)にまとわりつかれている人や自分がそうではないことを過剰に一般化してしまう「生存バイアス」を行使する人に特有の現象です。

 

しかしながら、「政治」の役目はより多くの人に幸福な状態を届けることが役目です。

 

ですので、政府までもがそういったロスジェネを切り捨ててしまうようなことがあればそれは「政府」とはいえません。

単なる職務放棄放棄です。

 

 

ただし、このロスジェネにまつわる議論は批判する側にも少々問題点があるというのがわたくしの考えです。

 

 

本日は、現在話題のロスジェネにまつわる議論の問題点を指摘しつつ、政府が用意する解決策が空転するであろうということを述べさせていただきました。

 

ロスジェネ世代が他の世代より不遇であるという事実はない

まず、予め断っておきますと私はロスジェネ世代で社会的に不遇にある人を切り捨てるべきだとも思いませんし、むしろ救済すべきであると考えています。

 

しかしながら、その上でですが、ロスジェネ世代という枠を作ってその世代を過度に特別視するということは不適切であると考えています。

その理由についてここでは触れたいと思います。

 

まず、一般的にロスジェネ世代を説明するにあたってどういうことが言われているかについて言及しますと、「日本のような新卒一括採用の国では、その新卒のタイミングでうまく就職できなかった場合、生涯に渡ってそれが付いて回る。その悪いタイミングがロスジェネ世代と重なっており、ロスジェネ世代は他の世代に比べても長期フリーターや非正規雇用に甘んじることを強いられている。」というものです。

 

つまり、「ロスジェネ世代がバブル崩壊後に就職活動を迫られたがゆえに、そのような他の世代以上に不遇な状況に陥らざるを得なかった」というのが社会一般で広く信じられているわけだということです。

 

しかしながら、これは本当にそうなのかというとそうではありません。

下記の総務省が抽出している『労働力調査』を見るとそれはクリアです。

ここからの話はリンク先のp10を見ればすべて確認が取れますので、気になる方はぜひ直接確認ください。

https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index.pdf

 

まず、2013年から2018年の毎年の正規雇用率をグラフ化するとこうです。

これを見てわかるのが、ロスジェネ世代(グラフでいうと黄色)が何か特別著しく不遇であるようなことは読み取れません。

仮にロスジェネ世代が著しく不遇な状況であったならば、黄色のグラフがその他世代より著しく低くなるはずです。(赤や緑のグラフよりは少なくとも)

念のため非正規雇用率の方も見て見ました。

ロスジェネ世代が該当する黄色のグラフが著しく高くなっているといったことは読み取れません。

何が言いたいかというとロスジェネ世代が「その他の世代と比べて著しく不遇にある」というのはちょっと違うよねという話です。

もちろんだからと言って自己責任だから助けなくていいとか支援が不要という意図はありません。

 

 

強いてこのグラフから読み取れることいえば「終身雇用」という割には若手から中堅くらいまでは確かに安定雇用だが、年齢をおうごとに正規雇用でいることが難しくなるということではないでしょうか。

 

 

政府のロスジェネ支援策は効果を生まない可能性が高い

ここで話を本題に戻します。

 

改めてですが、今年政府は「ロスジェネ世代支援策」を打ち出しました。

そんななか、安倍首相は4月10日におこなわれた経済財政諮問会議において、民間議員からの提言を受け「氷河期世代への対応は国の将来に関わる重要な課題だ」と宣言。就職支援強化を関係閣僚に指示したのだ。

『安倍政権の選挙狙い「就職氷河期世代」支援が酷い!「人生再設計世代」と言い換え、劣悪労働押し付け、派遣会社への利益誘導も』exciteニュース 2019年6月1日

https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_4746/

しかしながら、これらは統計データに優位な成果を生み出す結果でないもたらさないのは今からでも目に見えています。

 

何故ならば、すでに指摘の通り「ロスジェネがその他世代に比べて著しく不遇であると述べるに足る論拠はない」からです。

 

 

 

案の定ですが、政府が取り組む具体的な政策というのは全く期待のできないラインナップになっています。

肝心の「対策の柱」というのは、人材不足となっている運輸や建設、農業などの業界団体等に委託するかたちで資格習得などをおこなう訓練コースの創設なるもの。また、〈人手不足業種との職場見学会付き面接会の開催〉などによって正社員就職を促進するとし、職業訓練やキャリア教育を人材派遣会社などに委託。また、正社員に採用した企業に1年限り最大60万円を支給している制度を拡充させるという。

同上

元から成果を出す気がないと思わざるを得ないことばかり書かれています。

 

例えば、正社員採用してたった60万円1年間だけ払うというのは拍子抜けもいいところでしょう。

それで「よし積極的にロスジェネ世代を正社員にしよう」などと思うでしょうか。

 

ロスジェネ世代に寄り添うといいつつ、この世代はもちろん企業の方々をも舐めてるとしか言いようがありません。

 

 

 

しかも、案の定ですがキャリア教育や職業訓練を人材派遣会社に任せるとあります。

 

人材派遣会社といえば「あの方」の顔を多くの方が思い浮かべるでしょうが、結局「ロスジェネ世代」という言葉は本丸を隠すために利用されただけなのです。

 

 

政府は「就職氷河期世代」を「人生再設計世代」と言い換えるようにしたようですが、この辺りだけを見ても舐めてるというのは明らかです。

「ロスジェネ世代」という言葉を使って無駄金をどこかに横流しするといった発想しかないんでしょう。

 

国も会社もあてにはならない

ここまで色々と書いてきましたが、最後に少しだけまとめを。

 

 

私はネオリベとは一線を画する立場ではありますが、現状を見ていくと回り回って同じような結論に現時点ではたどり着かざるを得ません。

 

それは国も企業も最終的にはあてにならないということです。

 

 

まあ、企業自体は元から慣行として50代あたりから肩をたたくような国なので、今更何か言ってもという感じなのは否めません。

一方で、福祉国家としての責務を果たす気がない行政の現状は目に余るものがあります。

 

 

最後の防波堤であるはずの政府が「助ける」と称してまともなことをしようとしないのは途中で触れた政府の支援骨子から明らかです。

 

国がここまで国民を軽視していていつまで成り立つのでしょうか。

私には今後のさらなる日本の薄暗さしか見えてきません。

 

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