ここ数年、一つの巨大金融機関が倒産するだの破綻寸前でやばいだのと言われているのをご存知でしょうか。
それがタイトルにある農林中央金庫です。JAバンクとか農林中金とか言われたりもしてるお馴染みの企業ですね。
かなり巨大な規模の資金を保有しているわけで、仮に農林中央金庫が倒産ということになれば相当なパニックになります。
本日は、すでにご承知の方も多いかもしれませんが、改めて農林中央金庫がやばいと叫ばれているその理由をご紹介します。
あらかじめ補足しておくと農林中金がやばいと呼ばれる理由は他の金融機関にも当てはまるところがあり、一企業の倒産問題だけにとどまらなところがあります。
農林中央金庫(JAバンク)がやばいと言われている理由
さて、早速ですが、農林中央金庫がやばいと言われる理由を述べます。
これはすでにご承知の方も多いかと存じますが、端的に言えば「ハイリスクで元本割れのある金融商品を大量保有している」ところが挙げられます。
その中でも今話題のCLO(collateralized loan obligation)という高利回りだがリスクが高い金融商品を農林中央金庫は世界で一番保有してると言われているのです。
9月末時点の発表では8兆円弱(7兆9000億円)も保有しています。
日本は特にたくさん保有しておりUFJとゆうちょを合わせると世界全体のCLO15%に及ぶと東京新聞では報じられています。
九月末時点の国内のCLOの保有額は、農林中央金庫(農林中金)が突出しており、七兆九千億円。三菱UFJフィナンシャル・グループが二兆四千七百三十三億円で続き、ゆうちょ銀行も一兆五千二百四十一億円に上る。この三つの金融機関の保有分が国内の残高の大半を占める。
三社を中心に国内金融機関のCLO保有額はここ数年で膨らんでいる。日銀が十月に公表した「金融システムリポート」によると、二〇一八年度は三年前の二・五倍以上の約十二兆七千億円で、世界全体の15%に達する。
『「リーマン」類似、投資急増 農林中金など3社 CLO、計12兆円』2019年11月27日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201911/CK2019112702000149.html
こんなにリスクが高いものを買い込んでいる理由はなんなのでしょうか。
これは、世界的にも発生している低金利が原因です。
具体的には、日銀の異次元の金融緩和で極限まで金利が下がったことが大きいでしょう。
多くの銀行においてこれまでの本業であった融資や住宅ローンをはじめとする事業領域で収益を生み出せなくなり別の収益源が必要となりました。
その思考の中で手に取ったのがCLOという「高利回りだけど元本割れリスクのあるジャンク債」なのです。
CLOとCDSは違うから大丈夫だという反論について
さて、このCLOですが、すでに暴落する規模にまで膨らんでいると多くの方々が指摘しております。
そして、そのCLOを大量保有する農林中央金庫の倒産は避けられないとまで述べる人もちらほら。
これは実際のところどうなのでしょうか。
どちらかというとネットでは農林中央金庫の倒産という方にベットする人が多いのですが、そうでないという考えもあるようです。
ここでは少しそれについて書くことで冷静な議論にしたいと思います。
CLOが大丈夫だという根拠として筆頭に来るのはリーマンショックの引き金となったCDS(credit default swap)とは似て日なるものだというのが多いかもしれません。
リーマンショックについて少しフォローしておくと、当時の全世界的な連鎖金融危機は今のべたCDSという商品が生み出したとされています。
このCDSというのは低所得者向けの住宅ローンの債権をかき集めてパッケージにしたようなものだと認識してもらえれば問題ないと思います。
言い換えれば、リーマンブラザーズ社を筆頭に「本来かしてはいけない人」に住宅を借金して買わせたということですね。
なぜこれをリーマンブラザーズ社含めた金融機関がけしかけたかというと彼ら自体は取引手数料を取るのがメインなので、とにかく取引自体が活発になればいいからです。(結果的には倒産しましたが。)
しかし、この後先考えない金融商品の拡販が結果的には凄まじい規模での焦げ付きを生みCDSは暴落、そして全世界での金融危機となりました。
ここで話を戻します。
このCDSとCLOは似て非なるものだということを楽観論者は述べていると私は指摘しました。
どう違うのかをCLOを説明することでクリアにしたいと思います。
CLOというのは個人向け住宅ローン債権を原資とするのではありません。こちらは信用力の低い「企業」に貸し出した債権を複数混ぜ合わせて作られた金融商品です。
違うのは企業であるというところと不動産向け住宅ローンではなく、融資であるという点ですね。
あとは農林中央金庫の経営者がCLOのリスクを指摘された時に「格付け会社がいい格付けをしている」という点をCDSとの違いとして述べていました。
金融機関倒産の法則
ここまで色々書いてきましたが、私の持論を少し書かせていただきます。
結論から言うと農林中央金庫が倒産する可能性はそれなりにあります。
最大の理由は、CLOの本質がジャンク債という信用度合いが低い人への貸し出したという構造が根本的に同じだからです。
もちろん、個人よりも企業の方が資金的に豊富だったり、いくら信用がないと言っても個人よりはマシな可能性はあるため、多少時間の遅延はあるとは思います。しかし、信用度合いが低い以上いつこけてもおかしくないという根本は何も変わりません。
また格付けがいいからという論理も安心にはつながりません。
それはリーマンブラザーズ自体がAAAの格付けをもらってたのに一瞬で倒産したからです。
また、別の切り口で言えば、CLOはAAAを格付けとしてもらっていますが、その格付けをつけている集団が「金融商品を売りたい人」によってランク付けさせられているものだということを忘れてはなりません。
言い換えれば、「売りたい商品」の格付けが高くなるのです。(おそらく金融側からしても手数料が高いのでしょう)
日本はリーマンショック時はそこまでこの手のジャンク債に手を出していなかったため、痛みをもう忘れつつあるのかもしれません。
しかし、当時はグレディスイスとかAIGとかゴールドマンサックスとかと言ったエリート金融機関が倒産状態に入ったのです。(税金で救済)
ここが大事で大企業だから潰れないということはありません。冒頭に挙げた農林中央金庫に限らずゆうちょだってやばいのです。
加えていうと、前回以上にバブルの規模が大きいので、破裂時の衝撃は前回以上の可能性も高いと言われています。
何れにしても最後に伝えたいことがあります。
少し前話題にしたソフトバンクにせよこの農林中金にせよ今は勝手に爆弾を買い込んでいる状態です。(投資銀行にそそのかされて)
もちろん、爆発して勝手に潰れてくれる分には一向にいいのですが、その時には我々庶民も巻き込むというのがこの問題の困ったポイントです。
もう今回の爆発は避けられませんが、今後について言えば、私も含めた多くの庶民がエリートにもう少し怒りを持ち大衆の側からエリートに変革を迫らなければまた同じことになるでしょう。
農林中央金庫には健全な心を取り戻してもらいたいものです。