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世の中一般について

公平さとは何を意味するのか?

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公平であること

 

おそらく多くの人がそうありたいと願い、社会もそうであってほしいと願うのでは無いでしょうか。

しかしながらその一方で、「公平さ」が現実において具体的にどういう意味を持ち得るのかということについては意見が分かれることでしょう。

 

現代社会においてもこの「公平さ」に対する見方の違いが意見の相違を生み出しています。

 

さらに踏み込んでいうならば、単なる意見の相違にとどまらず社会というもののあり方すらをも方向付けてしまっています。

 

本記事では、ヴォルフガング・シュトレークの『時間稼ぎの資本主義』を参照しつつ、社会にある二つの「公平さ」について手短についてご紹介できればと思います。

 

2つの公平性ー市場的公平性と社会的公平性ー

シュトレークは「公平さ」の議論を大きく二つの角度から整理することが可能だと述べています。

 

それは市場的公平性と社会的公平性です。

両者についてそれぞれ見て行きましょう。

 

まず一つ目は、「市場的公平性」です。

著書の中でこの概念についてシュトレークは以下のように述べています。

市場的公平性とは、市場参加者の個人的実績を市場が相対価格による表現を通じてどのように評価したかを基準にして、生産の成果を分配するという原則だ。

『時間稼ぎの資本主義ーーいつまで危機を先送りできるか』ヴォルフガング・シュトレーク(2016)みすず書房

ここで書かれていることは端的に言いますと、我々の生み出したものを「市場」を媒介にして査定するするのが「市場的公平性」だということです。

 

ですので、あるくだらないものに高い価値がつき、偉大なものに価値がつかないなどということはこの公平さの観点から見た場合に許されないのです。(何をもってそれを判断するねんという話はさておき)

 

 

続いて、「社会的公平性」についてです。

著者はこの言葉について次のように著書の中で説明します。

社会的公平性は、公平性、妥当性、相互性についての集合的な観念に従い、経済的実績や活動能力とは無関係に生活維持のための最低基準についての要求を認める。それはまた健康、社会的安心、地域共同体への関与、雇用保護、労働組合の結成等々についての市民権や人権を認める。

『時間稼ぎの資本主義ーーいつまで危機を先送りできるか』ヴォルフガング・シュトレーク(2016)みすず書房

まずポイントは、「市場的公平性」とは異なり、経済的実績や交換価値の高いアウトプットができる云々を完全に無視をするとまでは言わないがそこがゴールではないというところです。

 

(構成員の)『生活維持のための最低基準についての要求を認める』社会こそが「社会的公平性」が目指す社会なのです。

 

ものや事よりも「人」を見ているといえばわかりやすいかもしれません。

 

それゆえに「社会的公平性」は市場原理のような特定の利害に固執するのではなく、より多くの構成員の多様な利害を実質化することを狙います。

 

「公平さ」という言葉の意味の変遷

さて「公平さ」には二種類あるということをここまで書きました。

ここで誤解して欲しくないことについて書かせていただきます。

 

 

それは両者が相対立する位置関係の概念だと考えることです。

つまり、「市場的公平性」と「社会的公平性」が互いに競い合い覇権争いをしているというイメージを持つことは不適切だということです。

 

 

何故ならば、あくまで「社会的公平性」の中の一つが「市場的公平性」だからです。(多様な利害を調整しようとするその「利害」の一つが市場的な価値基準ということ。)

 

著書ではこのことについて次のように述べられています。

市場的公平性は標準経済学的理論の助けを借りてみずからを社会法則ではなく自然法則であるかのように表明している。しかし、それもまた社会的公平性の一種であることに変わりはない。

『時間稼ぎの資本主義ーーいつまで危機を先送りできるか』ヴォルフガング・シュトレーク(2016)みすず書房

シュトレークはあくまで「市場的公平性」は自然界に存在するかのようにある種の人は認識しているが、「社会的公平性」の一種なのだと強調しています。

 

ところで、「市場的公平性」が「社会的公平性」と比肩するようなものであると考えてしまう背景はなんなのでしょうか。

何かしらのそう思わせる外的要因があるはずです。

 

 

これについて答えると、時代の大きな流れとして「市場的公平性」を「公平性」一般とみなしてしまう社会状況を上げなくてはなりません。

それは「グローバル化」と呼ばれたり「新自由主義」と呼ばれたりするものです。

 

 

何れにしても、社会における「公平さ」の議論の中で、市場原理を強めることこそがその理念の達成につながるという考えが多くの人の潜在意識にあることが問題だということがここで押さえておきたいことです。

 

 

実は、シュトレークの主張の核心もこれに準ずるものです。

彼も「公平性」という概念の揺らぎ(「社会的」なものから「市場」の方へと大きく傾いている)は非常に社会へ危機をもたらしている事の大きなサインだと述べているのです。

 

 

わかりやすい例をいくつか上げましょう。

一例としては、現在の日本では貧困が拡大し続けていますが、「自己責任」「自分で資産運用しろ」「俺は努力したから成功している」などと投げかける人がいます。

 

 

これはまさに「市場的公平性」を「公平性」の全てと誤認している典型的なパターンではないでしょうか。

そうでなければ社会の公平さという角度から見たときに、このひとでなし発言を正当化することなどできません。

 

ほかにめぼしい例を挙げるならば、このような格差が広がる社会システムに対して疑問を投げかけたり、再分配施策を強化するべきだという考えがでれば次のような反応をする人たちがあります。

  • 「共産主義国家にする気か」
  • 「現実味がないことを言うな」
  • 「社会に活力が失われる」
  • 「経営者が海外に行ってしまう」など

 

このような市場原理主義的ユートピアに思考を支配された人たちの特徴について次のようにシュトレークはまとめてくれています。

政治的意思形成の制度が経済的に中立化される中で、市場的公平性の支配に屈しようとしない人々に対して今日浴びせられているのは、ちょうど一九七〇年代に議会外反対派と呼ばれた人々に投げかけられたのと同じ言葉だ。情緒的、非合理的、断片的、無責任。それはまさに、人々が利害関心を表現し、選考を明確化するための民主主義的通路が塞がれた時に出現せざるをえないものだ。人々がこうした閉塞感をもつのは、そこから出てくる答えがいつも同じであり、あるいは出てくるものが「市場」の答えとなんら変わらないからだ。

『時間稼ぎの資本主義ーーいつまで危機を先送りできるか』ヴォルフガング・シュトレーク(2016)みすず書房

 

市場的合理性を「公平性」の概念として受け入れないものには「非合理的」や「無責任」といった罵声が浴びせられると。

そして、常に「答え」は「市場」が用意しているのだからそれに身を委ねよというのです。

 

これは他ならぬ今の日本で「成功者」を自称する人物の片っ端から出てくる考えなのはいうに及びません。

このような思想が世の中を捻じ曲げてしまっているのです。

現代社会で求められる「公平さ」

最後に、こういった状況を受けて彼がどう結論したかを見て行きます。

 

もちろん、概念的には「市場的公平性」に傾き、制度的荒廃が進む世の中を変える重要性を訴えました。

でなければ、民主主義を維持することは困難であるというのも彼が繰り返し述べているところです。

 

では、具体的にどうすることがそのような「市場的公平性」に傾く社会を修正できるとしたのでしょうか。

 

まずはすでに述べた部分ともかぶりますが、「市場的公平性」が暗黙に前提としている『経済成長によって社会的な平和を作り出す』という考えや『格差拡大に目をつぶって社会的平和を達成する』(トリクルダウン的な)という考えの放棄をするところから始めるべきだと言います。(レジームチェンジというやつ)

 

市場的公平性をある程度犠牲にしなければ社会的公平性は担保できないのです。

今の時代は市場的公平性の議論ありきで、プラスαとして別のことを議論するというのが常態化しています。

 

だからこそ、日本にしても長らく停滞や貧困が蔓延しているのです。

 

 

こういった誤った前提から議論を始め続ける背景には「エリート」と言われる人がこのような考えを煽動していることを上げなくてはなりません。

例えば、東大を出たり、外資系コンサルタント会社出身であったり、起業していたりするいわゆる「エリート」たちは好んで「市場的公平性」を「公平性」と同一視しています。

 

しかし、「市場的公平性」により恩恵を受けるごく一部の人で我々がないならば「市場」というものを『もう一度社会的監督下に置くことのできる制度を確立する』考えに同調する必要があります。

 

それが社会主義や共産主義に聞こえようともです。

 

その意味で、まずはこの「エリート」により壊されてきたここ20〜30年の歴史を一人でも多くの人が振り返り、彼らに対して批判的な思考を育むことから始めなくてはなりません。

 

その一助としてまずは下記の書籍はご覧になっていただければなと思います。

 

こくち

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