そういえばいろんな形でおすすめの本を本ブログでは書いてきましたが、実はおすすめの哲学書という形での本のご紹介をしておりませんでした。
哲学をメインで扱っているブログでありながら情けない限りです。
というわけで本日は今すぐにでも読むべきおすすめの哲学書をご紹介しようと思います。
Contents
おすすめの哲学本①ープラトン『メノンー徳とは何かー』ー
まず最初は、プラトンの哲学書から。
プラトンは『ソクラテスの弁明』、『プロタゴラス』、『国家』、『饗宴』を始め、数多くの名著を出しましたのでどれにしようか迷いましたが、『メノンー徳とは何かー』をおすすめの本としてあげます。
予備知識を少しだけ書きますとプラトンの書物の大半は彼が師とあおいだソクラテスについての記録です。
つまり、プラトンの作品を読むということは「ソクラテスを理解する」ということであると言ってもいいほどです。
(実はソクラテス自体は書いた作品はありません。)
このソクラテスという人物は世界史でも聞いたことがあると思いますが、歴史上の位置付けとしては最も古い哲学者です。
そういう意味では、ソクラテスこそが「哲学」というジャンルを世に送り出した人物ともいえます。
ですから、「哲学」を学んでみたいと思っている人がソクラテスを読まないわけにはいきません。
サッカーで言えばずっとオフサイドゾーンにいるようなものです。
この後に紹介する全ての人がソクラテスの影響を少なから受けており、まずはこれから読んでくださいと言ってもいい本です。
おすすめの哲学本②ーアウグスティヌス『告白』ー
続いては、アウグスティヌスです。
アウグスティヌスという人物はこの中では知名度が低い方かもしれませんが、それはそれはすごい方です。
「キリスト教」と聞いた時に何を思い浮かべますか?
十字架などはもちろん思い浮かべるでしょうが、いくつかあげていけばおそらくほとんどの人が「教会」を思い出すのではないでしょうか。
その「教会」という文化をキリスト教にもたらす思想的起源がアウグスティヌスの思想から来ていると言われています。
「じゃあ俺らみたいなキリスト教国にいない人には関係ねえじゃん」となるかもしれません。
表面的にはおっしゃる通りです。
しかし、もう少しだけお付き合いを。
アウグスティヌスが生涯どういう考えをしていたかを辿ることで、なぜ「教会」が生まれたかがわかるとともに、「教会」というものが単なる神を拝む場所ではなく、「バラバラな個人をつなぎ合わせ社会に安定をもたらしていた」というコミュニティの源泉が見つかるのです。
コミュニティはなぜ必要か。
コミュニティはどうしたら生まれるのか。
コミュニティを維持するには何が必要か。
こう言った哲学的な難題に対して思考をする機会を『告白』という哲学書はもたらしてくれるのです。
社会が分断され、コミュニティが崩壊して言っているというニュースが目覚ましい日本において非常に有益な本です。
おすすめの哲学本③ートマス・ホッブズ『リヴァイアサン』ー
今のアウグスティヌスの延長で読んでいただきたいおすすめの本がトマス・ホッブズの『リヴァイアサン』です。
近代哲学の初手と言ってもいい人で、近代以降の哲学者のほとんどがホッブズを土台に議論をしたと言われています。
影響を受けていないという人にも大いに影響を与えるくらいかなり秀逸な哲学書です。
おなじみホッブズは『万人の万人に対する戦い』というキャッチフレーズが教科書でも取り扱われるくらい有名ですが、この哲学書の読みどころは「グローバル化を進めるとどうなるか」ということを予言している本でもあります。
また、グローバル化を肯定的に捉える人々の根っこにある思想がこのトマス・ホッブズの『リヴァイアサン』であることは読んだ人は気づくに違いありません。
ソクラテスは哲学全体の土台でしたが、ホッブズはその上で近代というものの哲学的議論の土台です。
おすすめの哲学本④ーデービット・ヒューム『人性論』ー
4冊目のオススメの哲学書はデービッド・ヒューム『人性論』です。
こちらについては以前別記事でも取り上げました。
この本もまた多くの人の考えに無意識レベルで影響を与えている名著です。
デービット・ヒューム『人性論』の読みどころは今我々が当たり前のように生きている「国家」の成り立ちを「人間がどういう生き物だから」というところまで辿り提示しているところです。
「近代保守思想」のネタになった人とも言われており、未だに哲学をかじった人には根強い人気を誇ります。
おすすめの哲学本⑤ージャンジャック・ルソー『社会契約論』ー
続いては、こちらも教科書で出るほど有名な哲学書であるルソーの『社会契約論』です。
こちらの書物はフランス革命という世界で最大規模の市民革命を誘引したとも言われるほどの影響力を持った哲学書です。
ある種人間を性善説の観点から描いた書籍で、それゆえに民意を絶対視する極端な「民主主義」者から大いに支持されました。
もちろんルソー自体はそういう意図はなかったのは読んでいただければわかるのですが、本人が意図するとせざるとにかかわらず、「民主主義」というイデオロギーを生み出すきっかけになった本です。
ホッブズ批判を叩き台にしているので、『リヴァイアサン』を読んでからこちらを読むことをお勧めします。
おすすめの哲学本⑥ーエマニュエル・カント『純粋理性批判』ー
6冊目はエマニュエル・カントが描いた『純粋理性批判』という哲学書です。
おそらくこの中では、ハイデガーの『存在と時間』と同等かそれ以上に最も長い哲学書で、最初に読むとなんのこっちゃわからず挫折する可能性が非常に高い本です。
しかしながら、カントの文章が下手なのではなく、あくまでカントが「考えようとしたこと」自体が難しかったというのが私の見方です。
少しだけ紹介するとカントは「認識」、つまり「我々の世界の見方」、には何種類かカテゴリー分けができると考えた人物です。
この「認識」のカテゴリーを十把一絡げに捉えてきたこれまでの哲学全てを批判していたのです。
この話をすると「そんなの俺には関係ないし」と思う方も多いでしょう。
ただ、物事にはどういう捉え方があるかが複数あることを知ると間違いなく物事に対する判断力が桁違いに上がります。
かくいう私が2度ほど挫折してようやく今年完読したのですが、おそらく今年読んだ本の中で一番おすすめと言ってもいいです。
それくらい自分の物事の価値判断の基準や判断力に変化がもたらされます。
*純粋理性批判は前半部分が難しいので、光文社であれば4か5から、岩波文庫であれば中から読むことをおすすめします。
おすすめの哲学本⑦ーカール・シュミット『現代議会主義の精神史的状況』
7冊目はカール・シュミットの短編です。
何やら小難しいタイトルがついていますが、非常におすすめの哲学書です。
シュミットの思想的立場は民主主義の危機に警鐘を鳴らしたというのがある程度的を得た回答かと私は自負しているのですが、この書籍は当時のドイツを分析しているものでありながら、今日の日本社会を見ているかのような感覚がくるような本です。
民主主義はどういうことがきっかけで破綻するかについて非常にシンプルにまとめている本です。
なお先に挙げたルソーの『社会契約論』を読んだ上でご覧いただくことをおすすめします。
シュミットはルソーの『社会契約論』を土台に話を進めているからですね。
ただ、シュミット自体はナチスに心酔したという笑えないオチが現実ではあったわけですが、、、、笑
どんな頭のいい人でもとんでもないものに騙されるということを学ぶという角度で読んでみるのもおすすめの本だったりします。
おすすめの哲学本⑧ーマルティン・ハイデッガー『存在と時間』
8冊目が、20世紀で最大の哲学書と言われるマルティン・ハイデッガー『存在と時間』を挙げます。
こちらもカントに並びなかなか手厚い哲学書ですが、哲学を学んで見たいという人たるものハイデッガーを読まずして通り抜けることは許されないでしょう。
それくらい大切な本です。
ハイデッガーの『存在と時間』がなぜそこまで持ち上げられているかというと、ここまでの流れを汲んでいうと近代哲学というものの前提をひっくり返しにいったからです。
デカルト以降の全ての哲学者の議論を全てひっくり返しに行くという「ちゃぶ台返し」を披露したのがハイデッガーなのです。
詳細はぜひ読んでいただければと思いますが、「自己」と「他者」という見方なども全て哲学として恣意的な前提であるとハイデッガーは述べました。
ではハイデッガー自体はどう考えたかというと、かなり思い切ったまとめ方で恐縮ですが、「人間は長い歴史の中で主体性など存在せず、抗いがたい世界からの働きかけにただ流されて行くしかない」というものです。
のちに存在するアーレントはこのハイデッガーの哲学を「意志しない意志」という形で表現したのですが、全ての人間の主体性を無意味と彼は考えたのです。
なおシュミット同様にハイデッガーもナチスにどハマりした哲学者で、良いところは吸収しつつ反面教師的に読むのが肝要かもしれません。
おすすめの哲学本⑨ーハンナ・アーレント『人間の条件』ー
最後がハンナ・アーレントです。
おそらく歴代最高の女性思想家であるとともに、これからの哲学に大いに影響を与えた人に違いない方です。
その彼女の代表作である『人間の条件』は非常におすすめです。
こちらも詳細は読んでいただければと思いますが、アーレントは人間の内面ではなく「行為」を分析することで人間とは何かを考えるという立場をとりました。
内省を重視するデカルト以降の哲学に対して彼女もまたハイデッガー同様違ったアプローチの必要性を感じていた中でのこの取り組みなのです。
具体的には労働、仕事、活動という分類で人間を条件づけました。
大枠としては、昔は活動>仕事>労働という価値基準だったのが、労働>仕事>活動になっているということを彼女は描きます。
この批評を通して彼女が何をしようとしたかは色々あるのですが、「ソクラテス」に哲学を原点回帰させようとしたと私は考えています。
原点回帰というやつですね。
一周回ったという感じでしょうか。
一周回ったからこそそれぞれの思想家も冷静に見れるし、それを糧に一歩踏み出せるとアーレントは考えていたように思います。
私の愛読書で、非常にオススメの一冊です。
終わりに
以上、9冊おすすめの哲学書を上げてきました。
こういった優れた本を読むことは「生き方」すら変えてくれるものだと自分自身読んだ中で強く思うことです。
もちろん読むたびに発見があり「理解した」などとは到底今の段階でも言えるものではないですが、哲学をしてみたいという方向けに何かしら一助となれば幸いです。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。