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保守思想を学べるおすすめの本5冊

更新日:

完全に独り言ですが、最近日本がおかしいなあという気持ちが加速度的に進んでいます。

だからそういう記事をたくさん書いています。私の肌感では何もかも腐り始めています。

今日もそんな調子で一筆書いていきます。

 

 

社会が腐っている原因を考えていくと一つ共通項があることをふと今日気づきました。

それは、一言で言えば、思想が腐ってるんです。

思想がおかしいから行動や判断がおかしくなるということです。

やることなすことロクデモナイのは根元が腐っているからなのだということですね。

 

 

実は、私がこのブログで言いたいことは畢竟それだけだったのかもと今日思いました。

 

思想が腐ってなければ多少の過ちを応援するくらいのことはできるでしょうけども、根元が腐ってたら何をやっても批判せざるをえません。もちろん結果が大事なんですけどね。

 

 

 

しかしながら、私の感覚とは裏腹に今の世の中はどうも「思想」というものの影響力を軽んじている人が多いです。

思想を学んでいるというと「それが金になるのか」「そんなことをしても時間の無駄」という顔つきで私の方を見てくる人が多いこと多いこと。

 

「思想とか言ってる奴は胡散臭い」という趣旨のことを言われたことすらあります。

 

 

 

彼ら・彼女らは自らを「客観的」な立場と叫び、自らが何らかの思想の奴隷であることを自覚していません。

これが相当タチが悪い。

 

まあそこまで得意げになっていられるのは、自称「客観的な」人間たちを「かっこいい」「頭がいい」とみなす風潮が世の中にもあるからなんですね。

 

ですから、多くの人々がその真似をし、思想について格好が悪いと考え学びをやめてしまったと。

そして自称「客観的」な人間の思想に染まってしまうのです。これは非常に危ういんです。

 

ケインズという人の有名な言葉がありますので、我田引水させてください。

経済学者や政治哲学者の思想は、それが正しい場合にも間違っている場合にも、一般に考えられているよりもはるかに強力である。事実、世界を支配するものはそれ以外にはないのである。どのような知的影響とも無縁であると自ら信じている実際家たちも、過去のある経済学者の奴隷であるのが普通である。権力の座にあって天声を聞くと称する狂人たちも、数年前のある三文学者から彼らの気違い染みた考えを引き出しているのである。私は、既得権益の力は思想の漸次的な浸透に比べて著しく誇張されていると思う。もちろん、思想の浸透は直ちにではなく、ある時間をおいた後に行われるものである。なぜなら、経済哲学および政治哲学の分野では、二五歳ないし三十歳以後になって新しい理論の影響を受ける人は多くはなく、したがって官僚や政治家やさらには煽動家でさえも、現在の事態に適用する思想はおそらく最新のものではないからである。しかし、遅かれ早かれ、良かれ悪しかれ危険なものは、既得権益ではなくて思想である。

『雇用、利子及び貨幣の一般理論』ジョン・M・ケインズ(2008)岩波文庫

ここに書かれていることを要約しますと、どんなに中立を気取っているものも過去の何らかの思想の奴隷であるということです。

そして、その思想の影響力を軽視する人ほど危険であるということをケインズは語っているわけです。

 

 

さて、今多くの人を汚染していながらなおも無自覚な思想とは何か?

これは新保守主義(ネオコン)と呼ばれたり新自由主義(グローバリズムの根拠となる)と言われるものだと私は考えています。

 

「保守」と聞くと「伝統的な文化や慣習を重んじる」というイメージを持つ方が多いかもしれませんが、実はそれはイギリス的なものです。

 

このネオコン(ネオコンサーバティブ)という立場を生み出したアメリカ発と言われる保守主義はまったく逆の立場をとります。

とにかく政治をはじめとする公的な関与を嫌悪し、個人にやりたい放題やらせることが最大公約数として、結果的に社会が良くなるという発想を含蓄している思想です。その意味で、イギリス的な「保守」とは対極で革新派(左翼と呼ばれることもある)と非常に親和性の高い思想となっています。マルクス主義も既存の秩序の解体を行いますからね。

 

なお、ネオコン思想には共通点があります。

 

とにかく「規制緩和」「民営化」を絶賛します。

具体例としては今の安倍政権支持者ですね。

 

TPP、種子法廃止、移民受け入れ、水道事業民営化の検討、、、、、

どう考えても既存の秩序を破壊するものばかりです。その政権を「保守」と呼ばれる論壇人が応援しているわけですが、「伝統的な秩序や慣習を重んじる」という考えの対極に位置するものを支援しているのですから、アメリカ的な保守でしかありません。

 

ちなみに彼らが絶賛する理由は公権力が関与すると非効率で市場に任せた方が基本的にうまくいくからというところから来ています。

 

 

確かに、この思想にも見所はあります。

ただこれが絶対視されることが、本当に多くの人のためになるのかどうかというところが考えるべきポイントです。0か100かではありません。

 

今はネオコンが強まった結果、世界中で悲惨な格差が出来上がり社会不安が起きています。

それゆえに考え直すべきタイミングが来ているのです。

 

 

 

ところで、こういう話をしているとおそらく下記のように思われる方がいることでしょう。

 

「お前も中立気取りじゃないか」

「お前は神にでもなったつもりか」と。

 

 

それは誤解です。そのようなことは思っていません。

 

私もまた「正しい」思想とは何かについて主観的に定義しています。

良い思想の定義とは、先ほど触れましたが、「より多くの人が政治的・経済的に豊かに過ごせること」を根元に持っていることです。それゆえに特定の人だけが得をしたりといった思想をダメな思想と申し上げています。

 

この観点から見たとき現在格差を増大させる要因となっているネオコンは最悪です。

 

そういう状況ですから、アメリカ的な意味での保守ではない保守が再評価されるべきという立場を私は取っています。

特に日本が近代国家に移行する時点で学びを得たとされるイギリスの保守思想は大いにみどころがあると考えています。

そういうわけで、今日はイギリス保守思想の重鎮としておすすめの本をご紹介いたします。

 

■目次

エドマンド・バーク『フランス革命の省察』
デービット・ヒューム『人性論』
ウォルター・バジョット『イギリス憲正論』
サミュエル・T・コールリッジ『方法の原理』
マイケル・オークショット『政治における合理主義』

■エドマンド・バーク『フランス革命の省察』

「「保守」と聞いて思い出す本をあげてください」という質問を読書家の知り合いに聞いてみてください。5人名前を挙げさせれば、このエドマンド・バークをあげない人はいないと思います。

 

それくらい保守思想の大家と言われている人物(だそう)です。

代表作がここでおすすめの本としてあげている『フランス革命の省察』ですが、これは、『フランス革命』という既存の秩序の解体を試みた市民達の成れの果てをバークがいち早く予言した書物です。

 

彼は、フランス革命で王制を打倒し盛り上がる市民を見た段階で次のように予想したのです。

これから内輪もめに入り最終的には強力な軍事独裁が完成すると。

 

 

もちろんこの後については有名なところですがロベスピエールが出てきて恐怖政治が始ま流だけでなく、内輪もめがおこり最後にはナポレオンが出てきます。

 

 

バークはナポレオン帝政が誕生する前に死んでいる人物ですが、ナポレオンのような軍事独裁が完成する事を予言していました。ここが歴史がバークを偉大とする理由です。

 

では、バークがなぜそこまで未来を予測できたのかという理由ですが彼が「保守」的だったからです。

政治体制を新しく構築するにあたり、物事を単純明快にすることを目指したと自慢する連中は、政治の何たるかを少しもわかっていないか、でなければおよそ怠慢なのだ。単純な政府とは、控えめに言っても機能不全を運命付けられた代物に過ぎない。

『フランス革命の省察』エドマンド・バーク(2011)PHP研究所

バークのように過去から徹底的に学んだ人物というのはある種未来を予測できるところまでたどり着けるかもしれない、、、、そんな思いを抱かせてくれる一冊です。

そして、これを読めば何を間違っても安倍政権が「保守」政権などという寝言は言わなくなるでしょう。

 

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■デービット・ヒューム『人性論』

冒頭で自称「私は客観的だ」という人物をこき下ろしましたが、そういう人のいかがわしさを教えてくれるイギリス経験論の大家がこのデービット・ヒュームです。

デービット・ヒュームの『人性論』は彼の代表作としておすすめの著作となります。

 

この著書は大まかに言って「AによってBが起きている」という命題に対して「〜によって」は「客観的」に決まるのではなく、「主観的」なものでしかないということを伝えています。

 

それをむずかしーく言ってるのが下記の文章です笑

・・・自然のすべてのものは個別的であるということは、哲学で一般に受け入れられている原則である。例えば、辺及び角のきっかりした割合いを持たぬ三角形が実際に存在すると想定するのは、全く不合理だというわけである。そうすると、こうしたことがもし事実において、現実において不合理なら、観念においても不合理であるはずである。そういうわけで、抽象観念は、その表現作用では一般的となりうるとしても、それ自体としては個別的なものなのである。

『人性論』デービット・ヒューム(2010)中公クラシックス

 

ネオコン思想は「AによってBが起きる」という切り口で物事を語るのが好きなのですが、彼らは大学教授や会社経営者の言葉を我田引水しながら次のようなものを流します。

例をあげましょう。

 

・「アベノミクスによって賃金がアップした」

・「アベノミクスで雇用が増えた」

・「アベノミクスでGDPが増えた」とか

 

有名な大学教授などがいうので「そうなのかな」と思ってしまいますが、因果関係については主観的なものですからよくよく吟味しなければなりません。ちなみに私の「主観」ではこれは「嘘」だと考えているのですが、あなたにとってはどう見えるでしょうか。

 

デカルトという哲学者は因果関係を把握する能力を人間の偉大な能力と考えたわけですが、それが思考停止を呼び込むとヒュームは考えたのだと私は解釈しています。

 

世の中で当たり前のように組み込まれている方程式を疑うのが「保守」の真髄だとヒュームから学べるかもしれません。(なんか偉そうにすいません)

 

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■ウォルター・バジョット『イギリス憲正論』

続いてあげるおすすめの保守に絡めた本はバジョットの『イギリス憲正論』という本です。

バジョットはあまり知名度が高い方ではありませんが、イギリスの保守思想において多大な業績のある方です。

 

この本は一言で言えば、日本と政治制度が近似しているイギリスの政治制度がどうして現状のようなものになっているのかということを書いている本です。そして安定的な国家運営にはどういったものが必須かを書いています。

 

バジョットの下記の言葉を見てみましょう。

以上の諸条件によって、選挙政治を行うことのできる範囲は、厳しく限定されるのである。しかし議院内閣制となると、その上に一層厳しい必要条件が課せられるのである。議院内閣制の存立には、上記の諸条件が必要であるばかりか、同時に優秀な立法部、すなわち有能な行政部を選出できる立法部が存在しているかどうかが問題となるのである。

『イギリス憲正論』ウォルター・バジョット(2011)

議院内閣制がまともに運営されるためには、有能な行政部とそれを選出できるための優秀な立法部がないといけないと言っていますが、今の日本はこれに当てはまっているとはとても言えませんね。

 

「私は立法府の長」と言い始める総理大臣に、「憲法を法案に合わせていく」と言う防衛大臣が権力を握っているのです。

 

その異常さはバジョットの保守思想に触れることでより鮮明なものとなるに違いありません。

 

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■サミュエル・T・コールリッジ『方法の原理』

サミュエル・テイラー・コールリッジはイギリスのロマン派「詩人」として著名な方です。

ただ、あまり有名でないのですが、実は彼はエッセーのようなものも書いています。

そのうちの一冊でもあるこの『方法の原理』は名だたる保守思想の大家におとらないお勧めできる本です。

 

コールリッジは少なからず先に書いたヒュームの影響を受けているということがわかるのですが、一般的に言われる「真理」(客観的なもの、揺るがないものとされている)というものの定義がおかしいと彼は述べます。

真理とは、私たちの知的特性にふさわしい目標でありまた知性と徳性とが合一する点でもあって、それ故私たちに理解しうる形で、外界から精神へと反映される前に、まず内面に見出されるべきものであり、貧しい者も豊かな者も、人間的「存在」の正しい形成の導き手及び目標として、宗教的敬意を払わなければならないものなのです。

『方法の原理ー知識の統合を求めて』サミュエル・T・コールリッジ(2004)法政大学出版局

彼は何を言いたいのか。

それは、いくら頭のいい人が「これが真理です」と目の前に叩きつけようとも、精神が「これが真理だ」と思わない限り疑えということです。

 

つまり、安易に「これが正解」と思っちゃいけないし、厳しく分析し続けることがまずもって重要であると私はこの著書のメッセージとして受け取りました。

 

まさに保守思想において中核をなすものをコールリッジもまた受け継いでいるわけです。コールリッジの作品の読みどころは他の保守思想の方に比べ著書の中でシェイクスピアをはじめとした文学系の引用をすることが大きな特徴で一風変わった角度から保守思想を学べるため文学が好きな方だととっつきやすく感じるかもしれません。

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■マイケル・オークショット『政治における合理主義』

最後は20世紀最大の保守思想家とも言われるオークショットをあげたいと思います。

こちらおすすめの本は『政治における合理主義』という著書で、こちらオークショットの作品がいくつか入った作品を集めたものになっています。

 

それゆえにこちらの書籍だけでオークショットが生み出した思想の大まかな部分については知れると考えています。

 

オークショットの政治における「合理」とは保守的であること、つまり既存のものを最大限尊重しようという立場ですので、タイトルはメタファーに富んだものと言っても良いかもしれません。

 

 

合理的というとスピード感のあるものをイメージしてしまいがちですが、オークショットは政治にスピードなんていらないと思ってるんですね。じっくりと吟味し議論することこそが合理的だということです。

私が立っている見解に従えば、ヨーロッパ諸国の通常の政治実践は、合理主義の悪徳にとらわれてしまっており、・・・・それの失敗の多くは、実際には、合理主義的性格が物事をコントロールする場合のその欠陥から生じるのであり、・・・我々は、苦境からの迅速な救済を期待してはならないのである。患者にとって、彼の病気はほとんど彼と同じくらい古く、その結果それをすぐ直す治療法はない、と告げられるのは、常に気の滅入るものだが、・・普通はそうなのである。

『政治における合理主義』マイケル・オークショット

最近はネオコン思想が主流的となりとにかくスピードやカリスマリーダーによる既存の秩序の破壊運動が次々に起こっています。

  • 農協への攻撃
  • 水道事業民営化の検討
  • 電気事業の民営化
  • 郵政民営化

これらが効率が良くなり「良いもの」のように見える方はぜひオークショットを読んでみてもらいたいところです。

今現に日本がやっていることですが、海外ではすでにこの手の公共インフラの民営化で多大な問題が起きており国営に戻すという流れができています。それを逆走しているのが日本なわけです。

 

民営化の全てを否定するわけではありませんが、民営化で万事解決すると考えている時の民営化は基本現状がさらにひどくなることがほとんどです。民営化って悪く言えば責任放棄ですからね。

 

 

裏を返せば保守というのは責任をとるという覚悟や勇気がなくては持てない思想であるということがおわかりいただけるかもしれません。

 

以上、保守思想においておすすめな本を僭越ながらご紹介してまいりました。

一筋縄ではいかない書物が多く私も未だ理解及ばずなところもありますので、私の解釈はあくまで参考程度に読んでいただければ幸いです。

 

ぜひ実際に読んでみてください。

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