最近ソフトバンクのネタについて記事を書くとネットで拡散したり、記事を広く読んでいただけているようです。
多くの人がソフトバンクという企業に関心が高いのでしょう。
直近は会社自体の存続危機や出資会社であるWeWorkなどについて取り上げて来ましたが、本日は今話題にもなっている同社の「法人税ゼロ」というトピックについて取り上げたいと思います。
日本でトヨタの次に時価総額が大きく、営業利益が先の記事でも書いたように1兆円を超える決算を発表しておきながら法人税を払っていないというのは庶民の我々からすると違和感満載とも言えます。
本日はソフトバンクの法人税ゼロが成り立つカラクリについてご紹介いたします。
ソフトバンクが法人税を払っていないのは違法ではない
まず、ソフトバンクが法人税を払っていないという噂が事実なのかどうかですがこれは「事実」です。
例えば、日経新聞は下記のように報じています。
ソフトバンクグループ(SBG)が2018年3月期に巨額の税務上の欠損金を計上し、日本国内で法人税を支払っていなかったことが明らかになった。会計上の純利益が1兆円を超える企業が、税務上は赤字となる税法の盲点は何だったのか。
『ソフトバンクG、法人税ナシ 税法の盲点は』 日本経済新聞 2019年6月21日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46385970R20C19A6EA2000/
会計上は1兆円を超える利益がでていたが特殊損失を計上することでその利益を相殺し「利益が出てなかったことした」ということです。
(なぜなら法人税は利益に対して課税される税制だから)
これを見るとおそらく厳しい経営の中でも真面目に税金を払っている中小企業の社長さんは「ふざけるな」と思うことでしょう。
もちろん、多少の節税というのはどの企業でもやっていることでしょう。
しかしながら、1兆円の利益を「無かったことにする」というとんでもないことを「合法的に」完遂したのがソフトバンクなのです。
ソフトバンクが法人税をゼロにできているカラクリ
では、そのようなこと(法人税ゼロ)を可能にしたカラクリはなんだったのでしょうか。
これはいくつかの記事を掘り下げていくと見えるのですが「ARM」という企業の巨額買収が関わっています。
少し前にイギリスの大手半導体関連企業のソフトバンクによる巨額買収はニュースにもかなりなったことはご記憶の方が多いかと思います。
当時の買収価格は3兆を超えるとも言われる規模で日本企業が行なった最大の買収とも言われました。
このARM社の株式をうまく使うことで法人税をゼロにできたのです。
カラクリとしては、ソフトバンクグループとして持っていたARMの株式をソフトバンクヴィジョンファンド(SVF)というグループ会社に移管することで、「会計上」ソフトバンクグループから巨額の欠損(正確には不明だが営業利益以上の金額)がでたということにしたわけです。
もちろんソフトバンクグループとソフトバンクヴィジョンファンドは親子関係ですから実際の損失が出たわけではありません。
単に株式をグループ間で転がしただけです。
しかしながら、これによって不思議なことに数千億はあるであろう法人税がゼロになったのです。
普通このくらいの規模の会社であれば虎視眈々と国税が狙っているでしょうから、下手な課税逃れなどしようとはしないでしょう。
おそらく非常に優秀な会計士を雇っているのだと思います。結果的に、摘発されない範囲で抜け穴をつくことに成功しています。
簡単に言えば、買収した企業の株を社内で売り買いして作った損を計上して、課税利益を作らないようにしている。法の抜け道を利用する形で、公表利益と税務利益がかけ離れた、数字の「マジック」を作り上げたのだ。
『純利益1兆円のソフトバンク「法人税ゼロ」を許していいのか? 孫さんは「日本は後進国」と言いますが…』livedoor news 2019年9月30日
実は多くの大企業が法人税をまともに払ってない
ところで、この一件をもってソフトバンクがとんでも無くダメな企業だということが私の主張ではありません。
実は、ソフトバンクが法人税ゼロというのは極端なものの多くの大企業が税率通りに払っていません。
前参議院議員の山本太郎氏や共産党の議員が国会での質疑で度々明らかにしていますが、例えば以下のような企業を税率通りどころかそれとは著しく乖離した低い税率であることが明らかになっています。
参議院決算委員会で共産党 井上哲士議員の質疑によると、大企業数社について、税引き前利益に対して過去6年間実際どれくらい税負担したか、と各社決算書を元に試算すると、法人税実効税率「35%」どころか、
三菱商事 6.2%
キャノン 27.8%
本田技研 18%
日産自動車 10.9%
☆☆☆☆☆☆
あれ?法人税実効税率って「35%」だったよね?!
*上記のブログは2014年のもののため「35%」となっています。
巨額の利益が出ている大企業がとても低い税率になっているのです。
もちろんそれが「脱税」とはなっていません。
これはもう「法律がおかしい」と言わざるを得ません。
もしかすると、共産党や山本太郎に対して「アレルギー」を持つ人が多いため、「彼らの言っていることと逆にしたら正しい」とか「彼らの言っていることと同じことをやったら共産主義国家になる」とかそう言った考えの人は多いかもしれません。
しかしながら、「誰が言っているか」では無く、「何を言っているか」で判断すれば、現状の大企業にとって抜け穴が大量に用意されている税制の方がおかしいでしょう。
それを決めているのはもちろん政治家です。特に自民党の。
自民党はなぜここまで大企業に優遇とも言える法整備をしているのでしょうか。
それは、スポンサーとして支援してもらっているからです。
総務省は30日、政党や総務相所管の政治団体の2017年分政治資金収支報告書を公表しました。それによると、自民党が同年に企業や業界団体から集めた政治献金は23億9182万円で、第2次安倍政権(12年12月末発足)直前の約13億円からほぼ倍増。政権復帰後5年目にあたる今回の献金は最多額となりました。消費税増税、法人税減税、大企業優遇税制など財界「要望」を進めた見返りに献金を求めるという、安倍自民党と財界との癒着ぶりが資金面で浮き彫りになりました。
『安倍政権下で企業献金倍増』しんぶん赤旗 2018年12月1日
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-12-01/2018120101_01_1.html
献金が民主党時代と比較して二倍になっているとあります。
党活動費にはお金がかかりますから自民党としては相当助かっているのは間違いありません。
そんなスポンサーに牙を剥くことなどしたくないと思うものです。
ここまで、自民党が劣化した以上、国民が選挙で議席を減らさせるしかありません。
いつその時が来るかはわかりませんが、その時が来なければ私も含めた庶民はその肩代わりに消費税増税をされて今以上に貧乏になるでしょう。