10月から我々の生活に大きな影響をもたらすニュースをご存知でしょうか。
それは消費税の増税です。8%から10%になるのです。
どんなに政治に関心がなかろうがお金を持っていなかろうが関係ありません。
日本でモノやサービスを購入するすべての人が影響を受けるニュースなのです。
さて、この消費税が上がるのは安倍政権になってから2回目ですが、消費税が上がる理由についてはご存知でしょうか?
本日は引き上げが直前に迫るということもあり、改めて消費税が上がる理由について書かせていただきました。
消費税が上がる表向きの理由
「消費税が上がる理由はなんでしょうか?」と聞かれてあなたはどのように答えるでしょうか。
おそらく多くの人が少子高齢化が進む中で社会保障の財源(医療費など)が必要となるからだと答える人が多いのではないでしょうか。
実際、税金を取り立てる機関でもある財務省は公式ホームページで消費税が上がる理由について次のように紹介しています。
なぜ所得税や法人税ではなく、消費税の引上げを行うのでしょうか?
ご質問にお答えいたします。
今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます。
財務省:『消費税引き上げの理由』より
ここでは多くの人が認識の通り現役世代が減少していくという状況を鑑みて社会保障の安定財源として消費税を上げる必要があると述べられています。
では、消費税という徴税手段がなぜ「安定財源」なのかがきになるところでしょう。
それについては上記サイトにおいて説明があります。
具体的には所得税や法人税などは不景気の時に減少するのに対して、消費税の場合は景気に関係無く同程度の税収が常に得られているからだとのことです。
「ならお財布としては痛むけど消費税が上がるのは仕方ないよね」
こうして、多くの人が消費税が上がることに納得しているのが現状です。
実際、直近の日経デジタル9月1日付記事を見ると賛成の方がやや高いという結果が得られています。
『10月の消費税増税、賛成49% 反対44%を上回る』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49277830R00C19A9PE8000/
一方で反対の割合の調査もあり、東京新聞は6割近くが反対です。
ただ、反対の指数が高く出やすい東京新聞でさえも記事をよく見ると4割弱くらいは賛成しています。
『消費増税、反対60% 全国世論調査 景気対策も反対61%』
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019060902000135.html
媒体によって賛否は偏るもののそれなりの数の人が消費税が上がることについて理解を示しているということがここで押さえて欲しいポイントです。
消費税が上がる本当の理由
しかし、世論の少なくとも4割前後が消費税が上がることに納得しているというのは私からしたらなかなか衝撃的です。
なぜならば、消費税が上がる理由は「社会保障」を充実させるための安定財源ではないからです。
実は、この「社会保障を充実させるために消費税が上がる」という説明には二重の嘘があります。
まず、一つ目の嘘は消費税が上がる本当の理由が法人税の税率を下げるところにあるからです。
実際、財務省の公式サイトを見て見ると、偶然にしては出来過ぎなくらい過去の消費税増税のタイミングでは法人税減税が行われています。(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c01.htm)
消費税を増税することで法人税減税の穴埋めをしていると申し上げて問題ないでしょう。
さて、ここで基本的なおさらいをします。
法人税は所得の多い人が多く払う税金であるのに対して、消費税は誰もが平等に同じ税率で支払う税金です。
この特性をおさえた上で、後者を引き上げて、前者を引き上げるということが何を意味するか考えて見てください。
あからさまな金持ち優遇です。
社会保障云々とは全く関係がありません。
金持ちから取る税金を減らして、庶民から多く取るということです。
続いて二つ目の嘘にうつりましょう。
それは、消費税が上がる理由として社会保障の充実といわれていますが、そもそもこれまでの増税では社会保障の充実に使われていないというところです。
これは、山本太郎前参議院議員が再三指摘していたことなので、私から紹介するのも今更感がありますが重要なのでこちらにも掲載します。
前回の消費税が5%から8%に上がった時に社会保障の充実に「全額」使うと政府は見解を示したのですが、実際は極めて少ない割合しか使われていなかったのです。下記は山本太郎の国会での質疑です。
資料の一、政府広報、消費税増税三%分について。あっ、出さないんですか。済みません、パネル。消費税は全て社会保障の充実に使いますって書いてあるんですよ。パネルがないんですね。はい、済みません。
・・・・・資料の二、増税分何に使ったか。赤い部分が充実に使った額、初年度の二〇一四年、三%分の税収、これ五兆円だった。しかし、うち社会保障の充実に使われたのはたった五千億円です。つまり、たったの一割。二〇一七年度は、八・二兆円のうち一・三五兆円、たった一・六割。はっきり言って詐欺ですよ。
『2018.3.28 予算委員会「消費税、全額社会保障のサギ」』
氏の質疑によれば、消費税増税分を「全て」社会保障の充実に使うと政府作成のポスターにあると指摘をした上で、実際にはその増税した税収5兆円のうちわずか5000億円しか社会保障にあてられなかった指摘しています。
実際、私の方でも拝見しました。
山本太郎という政治家が嫌いかどうかは関係ありません。
紛れもなく政府のポスターに「全額」とでかでかと書かれていましたし、1割程度しか使われていませんでした。(詳細は上記ページより参照)
なお、興味深いのは、この消費税増税以降には社会保障が充実させられているどころかむしろ削減されているところです。
資料の三、削減された社会保障費。全額使うとうそをついた上に、五年総額で三・四五兆円の社会保障費削減している。やっていること、むちゃくちゃじゃないですか、安倍内閣。
『2018.3.28 予算委員会「消費税、全額社会保障のサギ」』
ここまでだけでも、嘘が多すぎて何個嘘があるか数えられないほどに嘘がつかれていると気づいていただけたのではないでしょうか。
これは山本太郎が資料を捏造したのでもなければ、印象操作をしているのでもありません。
政府から出されている資料を並べたら大ウソなのです。
徴税権に着目することで誰のための政治をしているかがわかる
長くなりましたのでまとめます。
「消費税が上がる理由は社会保障の安定化のため」という広く浸透している認識ですが、幾重にもおかしいということを指摘させていただきました。
まず、消費税が上がるのと合わせて法人税が連動して下がっていることから社会保障の充実ではなく、法人税減税の穴埋めというのが本当の理由だということです。
そして、そもそも実績として消費税増税分のうちその1割程度しか社会保障に回されていなかったということも押さえておきたいところです。
さらに付け加えるならば、社会保障自体はむしろ削減されているのです。
10月から10%に上がる消費税も社会保障の充実に使われるということは考えにくいでしょう。
これまでの流れで言えば、法人税を減税し、その穴埋めに使われることは避けれません。
最後に本トピックに絡めておすすめの書籍を紹介します。
国家権力が何を目的として動いているかを見定めるために「徴税権」に着目することを推奨した人物がいるのです。
拙著でもご紹介をしましたが、イマニュエル・ウォーラステインです。
彼は『史的システムとしての資本主義』という著書の中で徴税権という国家権力の最大の源泉に着目する重要性を繰り返し訴えました。
なぜならば、腐敗した国家においては、徴税権は「所得の再分配」ではなく、むしろ「所得格差の不平等拡大」のために使われてきたという今の日本に通ずる指摘をしているからです。
平成のはじめに消費税が始まって以降、消費税を上げるタイミングで法人税を引き下げるということが常に行われてきました。
左翼や右翼といったイデオロギー闘争で政治を見る方がいまだにあとを絶ちませんが、ここ20〜30年は庶民とグローバル資本家との闘争の時代です。そういう意味では、自分がどちらの側にいるかを認識した上で、政治権力がどちらのために政治活動を行なっているのかを一人でも多くの人が改めて見る必要があるでしょう。