最近話題の「統計改ざん」ですが、また新たな疑惑が湧き上がってきました。
偶然にしては重なりすぎと言わざるを得ませんが、今回も深刻なものと思われます。
それは「貯蓄ゼロ世帯」に関して記録する統計への偽造疑惑です。
おそらくほぼほぼ間違いなく数値の捏造が行われていると思われます。
本日はこの「貯蓄ゼロ世帯」統計の偽装について書かせていただきました。
「貯蓄ゼロ世帯」の推移がアベノミクスの泣き所だった
今回なぜ「貯蓄ゼロ世帯」統計が偽装されているという疑惑が立ったのか。
それは、政権側が反論し難い推移をしていたこのデータが2018年のわずか一年で大幅な改善を見せたからです。
山本太郎氏などの安倍政権批判を見ている方はご納得いただけるかと思いますが、アベノミクス批判は「実質賃金の大幅な下落」と「貯蓄ゼロ世帯の大幅増加」というところが2大柱と言っていいほど度重ねて指摘されている箇所です。
このうち一つ目の「実質賃金」指数については下記記事で述べたようにほぼほぼ改ざんの疑いが濃厚になりました。
厚労省も一部認めています。
今回のニュースが示しているのは、アベノミクスの泣き所であるもう一つの「貯蓄ゼロ世帯」に関する統計も偽造されているのではないかという話なのです。
つまり、アベノミクスの泣き所として2大柱とも言える両者に改ざんもしくは偽造の疑いがあるわけです。
もはや先進国を自称することすら恥ずかしい国に日本はなってきたと思わざるを得ません。
スクープ元は最近いい仕事続きの日刊ゲンダイです。
「毎月勤労統計」の賃金偽装やGDPかさ上げなど、統計のインチキが相次いでいるが、まだまだ怪しい統計があった。安倍政権になって急増した「貯蓄ゼロ世帯」が、なぜか昨年、大幅に改善しているのだ。もちろんアベノミクスの成果ではない。
『また怪統計か 2018年「貯蓄ゼロ世帯」大幅改善のカラクリ』日刊ゲンダイ 2019/02/18
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/247738
安倍政権になって急増した「貯蓄ゼロ世帯」が、なぜか昨年のたった一年で大幅に改善とゲンダイも指摘しています。
続いての章でこの偽造疑惑が具体的にどのようなものかを見て行きましょう。
「貯蓄ゼロ世帯」の数値が大幅に改善した理由
まず、大前提としてですが、大和総研が出しているレポートにある通り日本人の「貯蓄ゼロ世帯」は経年で増加し続けていると言われています。
日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会では、毎年、「家計の金融行動に関する世論調 査」と題するアンケート調査を行っている。このうち、「金融資産を持っていない」と回答する 金融資産非保有世帯、いわゆる「貯蓄ゼロ世帯」が増えている(図表 1)。
『今を生きる「貯蓄ゼロ」世帯 世代間、世代内格差の拡大と今の生活を重視する傾向』土屋 貴裕研究員作成 DIR
https://www.dir.co.jp/report/research/capital-mkt/asset/20180402_020032.pdf
グローバル化の影響なのか、その原因については諸説あります。
ただ、本記事では一旦脇に置いておきます。
単純にこのデータが教えてくれることとして、小泉政権時代よりは民主党政権は悪化しており、民主党政権よりは安倍政権が悪化しているということです。
それゆえにもちろん民主党時代を褒めたり野党に肩入れする気もさらさらありません。
しかしながら、その民主党政権より安倍政権はさらに悪化させているのです。
貯蓄ゼロ世帯が歴代で最も多い政権だといっていしまってもいいでしょう。
アベノミクスでいくら景気がいいと叫ぼうがこのグラフの数値は非常に重いものがあります。
金融資産を持てない人が増えているというのをなかなか好意的に解釈するのは難しいですからね。
安倍政権側もこれを言われるとうまく反論ができないのでしょう。
山本太郎氏を筆頭にこの点を指摘した時に、「若者の就職率は大幅に改善した」と言った全く関係ないコンテンツで論点をすり替えていることが度々あっただけです。(のちに引用するゲンダイの指摘も同じ趣旨ですが、、)まともな反論を私自身見たことがありません。
前置きが長くなりましたがここからがようやく本題です。
この戦後最も「貯蓄ゼロ世帯」を増やしたという汚名を被っている安倍政権がその指数を2018年に改善させることに成功したのです。
それも少しではなく大幅にです。(*DIRの上のグラフは2017年までのものですので読み取れません)
「金融資産を保有していない」“貯蓄ゼロ世帯”は別表の通り。民主党政権から安倍政権になって以降、2人以上世帯、単身世帯とも激増。単身世帯では半分近くが貯蓄ゼロだ。安倍首相は、雇用創出により、総雇用者所得が増えたと喧伝するが、貯蓄ゼロ世帯の増加は、家計が苦しくて仕事に出ても、貯蓄ができない庶民の生活を物語っている。
ところが、2018年になると貯蓄ゼロ世帯の数値が大幅に「改善」されている。2人以上世帯で8.5ポイント、単身世帯で7.8ポイントも前年より激減しているのだ。
『また怪統計か 2018年「貯蓄ゼロ世帯」大幅改善のカラクリ』日刊ゲンダイ 2019/02/18
日刊ゲンダイによると二人以上の世帯で8.5ポイント、単身世帯でも7.8ポイント改善したとのこと。
これがどのくらい大きな数値かを私なりにグラフを作って見ました。
『金融広報中央委員会』調査データより作成
見てもらうとわかりますが、2018年のたった一年で政権交代直後の民主党政権時代の初期である2010年と同水準に改善したのです。
ようやくアベノミクスの効果がでたのか?と思いたい方もいるかもしれませんが、残念ながらそれは全くそれは違います。
これまた賃金統計の偽装と同じく「統計の取得方法変更」により大幅な指数の改善という結果が生み出されたのです。
ゲンダイの取材を見ると事務局が「2018年より質問方法を変更した」という裏は取れているようです。
18年から質問方法を変更したことがひとつの要因です。金融資産は、将来に備えた預貯金だけでなく、株の運用や掛け捨てでない保険、例えば、学資保険、養老保険、傷害保険なども含まれます。17年までの質問方法では、預貯金以外の金融資産がある人の一部も、『保有しない』に回答していたと考えられ、内部で検討した結果、質問方法を変更しました。変更は発表資料にも明記しています。質問方法が変わったので、過去の数値との比較はあまりできないですね
『また怪統計か 2018年「貯蓄ゼロ世帯」大幅改善のカラクリ』日刊ゲンダイ 2019/02/18
面白いのが事務局自体も質問方法が変わり統計として非連続になっているのでもうこれまでの統計と比べるのは適切ではないと述べているところです。厚労省などより正直なだけまだましですね。
ただ、この統計手法の変更を行ったことで、「貯蓄ゼロ世帯」の統計は殺されたと言ってもいいでしょう。
と言いますのもデータの取り方を見るに遡及改訂ができるタイプのものではないからです。
これから発表される「貯蓄ゼロ世帯」の数字はこれまでと永遠に比較ができなくなったのです。
今の自民党は民主党と比べるレベルでもない
民主党の肩を持つ気はさらさらないのですが、「貯蓄ゼロ世帯」を大幅に増やした自民党は多くの人の貧困を加速させたという意味において「民主党以下」です。
ただ、それだけならば単なる手腕不足のラインで止まるので今となっては可愛いものです。
今目の前にしていることはその不都合な事実を前にして「統計手法の変更」と称して偽装された可能性があるということです。
もうこれは民主党と比較する以前の話になってきます。
まあ本件に関しては内閣及び官僚が「我々が改ざんをした」などと自白することなど考えられませんし、のらりくらりと逃げ回ることでしょう。
しかしながら、2018年という年に実質賃金同様に統計の算出手法の改訂という名目のもと現体制に都合のいいように統計が改変されたというのはそのおきた結果において「何かあるのではないか」と思うのが普通でしょう。
繰り返し書いてきましたが、アベノミクスの泣き所は「実質賃金の推移」と「貯蓄ゼロ世帯の推移」です。
その二つが2018年に統計手法を変更したら大幅に改善したんです。
プロセスはともかくおきた結果だけを見ればおかしいことこの上ないんです。
野党議員の皆様方には徹底的にこの「貯蓄ゼロ世帯」統計についても追求してもらいたいものです。
例えば、地下鉄があるのはモスクヴァだけだという主張が嘘であるのは、ボルシェヴィキーが他のすべての地下鉄を破壊する権力を持たない間だけのことでしかない。したがって、それ固有の事実無視と結びついた予言というプロパガンダの方法は、他の全体主義プロパガンダのトリックのどれにも増して、地球支配こそ全体主義運動の必然的な最終目標であることを暴露している。なぜなら、世界を余すところなく監視支配するときにのみ、全体主義的独裁は一切の事実を無視し、すべての嘘を現実に転化し、あらゆる予言を的中させることができるからである。
『全体主義の起源3』ハンナ・アーレント(1994)みすず書房p78