今、炎上中の企業にWeworkという企業があります。連日メディアで報道されていますから名前くらいは知っているのではないでしょうか。
少し前まではGAFA以上のポテンシャルともいわれ時価総額4兆~5兆ともいわれていました。
しかしながら、IPOを目前にしてとりやめになったり、CEOであるアダムニューマンが辞職することになったりと最近はどうも企業の体をなしていないようなニュースが度々クローズアップされているのです。
WeWorkをとてつもないユニコーン企業だと持ち上げてきたエコノミストや経営者などは反省会を開いている頃だと思います。
さて、この話題のWeWorkという企業ですが、何がやばいのかご存知でしょうか。調べていくとあることに気づきます。
そして、WeWorkのやばいところがクリアになるにつれて、日本も無関係ではないことがわかるのです。
本日は、WeWorkのどこがやばいのかを簡単にですが、まとめさせていただきました。
Contents
WeWorkという会社について
まず、WeWorkという企業がどういう企業なのかということについて簡単にですがご紹介します。
こちらの企業は簡単に言うとシェアオフィス、レンタルオフィス、コワーキングスペースなどというカテゴリーに属する企業です。
何を今更という感じもしますが、フリーランスやスタートアップなどが増加傾向にあるアメリカにおいてニーズをつかんで急拡大することに成功したのです。
実際、今回の炎上が始まるまでは、格付け会社が4兆円〜5兆円ともいわれる時価同額をつけていたのです。
これがどれくらいすごいかというとアマゾンなどの上場のときよりも高い評価がついていたといえば十分でしょう。
日本でも「スーパー経営者」と呼び声高いソフトバンクの孫さんが多額の資金をWeWorkに投下しており銘柄として相当市場の期待値は高かったのです。
WeWorkはどこがやばいのか
さて、このWeWorkがとてつもなくやばい企業なのではないかという疑惑が持ち上がったのが今回の炎上のきっかけです。
どこがまずいのかを3つの観点から簡単に記載しました。
溶ける時価総額
まず一つ目がありえない勢いで下がる時価総額です。
具体的には、炎上前騒がれた推定時価総額は冒頭に触れた通り4兆円や5兆円ともいわれていたのですが、先月の日経の報道では半分しかないと報道されていました。
『「WeWork」の想定時価総額、予想の半分に 2兆円規模』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49486640W9A900C1000000/
他の記事では数千億円しかないという投資家もいれば、某メガテックの元CEOなどは価値はゼロだと述べていたのです。
推定した価格が一瞬のうちに数十分の1や数百分の1しかないということは、よっぽど分析する側の見る目がなかったか出資詐欺をする意図があったかしか考えられないのです。
アダム・ニューマンは詐欺師か
私の主観では、後者の出資詐欺の方が信憑性が高いと考えています。(もちろん分析する側も見る目もなかったのですが。)
それは社長の行動からわかります。
同社の社長が上場を前にして株を売り払うという行動や自分が保有する不動産をWeWorkに貸し出し巨額の利益を得るといった背任行為をしていた疑惑が出てきているのです。
ここではあくまで「疑惑」と書くにとどめていますが、ここまで多くのメディアが報じていることやCEO自体が解雇されていることなどからかなり信憑性が高いと思われます。
アダム・ニューマンは少し前まではカリスマ経営者でしたが、今や世の中の評価は「詐欺師」なのです。
なぜなら、時価総額の下がり具合などを鑑みても彼がしたことは「これから値段が上がりますよお。今が買いときですよお」と叫びながらも、その実本人は逃げようとしていたわけですからね。
ずっと赤字で改善の気配なし
そして、やばいと言われている極め付けが赤字を脱却できそうにないPLです。経営者がクソでも時価総額が水増しだったとしても黒字なら問題ありません。
しかし、下記にもあるようにWeWorkの売上自体は伸び続けているのですが、それに連動して一貫して赤字も増え続けているのです。
“オフィスシェア事業を手掛け、海外を中心に業務拡大を続けている米ウィーワークが25日発表した2018年の売上高は前年から2倍余り増えた。だが、それと歩調を合わせるように赤字も2倍超となった。”
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-26/POYH9H6K50XS01
この傾向は2019年になっても止まっていません。
第二四半期までで1500億円程度の売り上げを記録しながら営業上生じた赤字が1400億円程度です。
完全に破産会社です。
興味深いのは繰り返しになりますが、2016年から毎年2倍ずつくらい売り上げは伸びているものの、赤字も同じペースで増えている点です。
確かに、テック企業(日本でいえば、ラインやメルカリなど)であれば、立ち上げ時の赤字に関しては目をつむろうという考えは存在します。
それゆえに、赤字の全てが否定されるべきでもありません。
なぜなら、特にテック企業はユーザー獲得が増えれば、急に収益化することが可能だからです。
しかしながら、WeWorkの場合はそうではありません。
同社はユニコーン企業で典型的な固定費をあまり持たないテック企業とは異なり、むしろ固定費の高い不動産を仕入れてそれを小売りにして貸すというかなり前時代的なビジネスモデルです。
それゆえに、売り上げを拡大しようとすると必然的に巨額の借金をしたり赤字を出したりする必要が生じやすくPLの改善が容易ではないのです。
実際、先行投資に対してリターンが全く間に合っていないというところは、下記のサイトからPLを見れば素人でも分ります。
会社として経営が成り立っていません。
https://www.businessinsider.jp/post-197644
WeWorkとソフトバンク
ここまでをまとめると、時価総額を膨らませ、社長が上場前に株を売り抜けようとし、赤字を垂れ流すダメ企業というのがWeWorkの正体だということでした。相当やばい企業だというのは十分お分りいただけたでしょう。
さて、このWeWork問題ですが遠く離れたアメリカで起きていることだと他人事の方も多いかもしれません。
しかし、そうはいかないというのがここから述べたいことになります。
実は、こんなダメ企業に日本の時価総額でもトップクラスにでかいソフトバンクグループがこのWeWorkに多額の資金を突っ込んでいるのです。
しかも、ロイターの報道では今回の炎上騒ぎの後、15億ドル追加出資を発表した結果、ソフトバンクグループはWeWorkの最大出資者となったのです。
“FTによると、ソフトバンクはウィーワークが新規株式公開(IPO)を延期する前にワラントに関する契約を結んでおり、クラスA株と引き換えに15億ドルを出資する計画だった。ソフトバンクはこの契約の条件を変更して出資額を引き上げることを検討しており、ウィーワークは来年4月に資金を受け取る権利を得ることになるという。
合意済みの15億ドルを含めると、ソフトバンクと傘下投資ファンドのビジョン・ファンドはウィーワークに100億ドル超を投じており、最大の出資者。
” https://jp.reuters.com/article/wework-ipo-softbank-group-raise-idJPKBN1WB0CL
このことが何を意味するかといえば、WeWorkがこのまま燃え続ければ、ソフトバンクも共倒れする可能性があるということなのです。
実は、ここ数年のソフトバンクというのはWeWorkに限らず、大型投資のほとんどがうまくいっていません。
「スプリント」という会社を覚えていますでしょうか。ソフトバンクが巨額の資金を投入したものの負担にしかなっていないのです。
“米携帯電話サービス大手のスプリントとTモバイルUSの合併計画の行方によって最大の影響を受けるのは、ソフトバンクグループとその創業者の孫正義氏だ。
スプリント経営陣は規制当局に対し、Tモバイルによる買収が阻止されれば「深刻な問題」に直面すると述べている。同社は約10年赤字続きだった。合併計画がとん挫すればスプリントに190億ドル(約2兆1000億円)相当を出資しているソフトバンクの負担は大きい。“
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-05-06/PR2G066JTSE801
孫さんというと信者もたくさんおり日本で最強の経営者という認識をおもちの方も多いかもしれません。
それゆえに、今回も仮にピンチであろうと乗り切るだろうとお考えの方もいるでしょう。
しかしながら、WeWorkという詐欺まがいの企業に巨額の資金を突っ込んだり、スプリントやARMなどが鳴かず飛ばずの企業ばかり傘下に入れているのを見ると、数年後同氏の評価は大きく変わる可能性すらあるのです。
実はソフトバンクグループ自体は今だしている巨額の利益の半分近くが株の含み益だと言われています。ということは、それはある種「幻想」のBLであり、仮に株価が何らかの拍子に暴落するとリーマンブラザーズのように倒産する可能性もあるのです。
日本を代表する会社が倒産するわけないだろうという方は、ぜひリーマンショック時に何が起きたかを調べてみてください。
メリルリンチ、ゴールドマンサックス、リーマンブラザーズなど特Aクラスの金融業者がバタバタとゾンビ化したのです。
ソフトバンクも投資会社ですから同じようにならないと誰が言えるでしょうか。