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時事

「野党がだらしないので早く仕事をしろ」という指摘は正しいのか。

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今、国会が非常に「くだらない話題」で持ちきりなのをご存知でしょうか。

 

「桜を見る会」という内閣府および首相が音頭をとって開催するイベントについてです。

 

 

「桜を見る会」というのは、ご存知のない方のために簡単に補足すると「今年活躍した功労者」を呼ぶものです。オリンピックのメダリストとかノーベル賞受賞者とかがよく呼ばれています。

 

しかし、その公的なイベントを首相およびその周辺の人物が私物化していたのではないかというのが今話題になっている理由です。(これは共産党田村議員の質疑から始まったものと思われる)

 

 

元々は首相が地元の後援会の人を大量に招待していたというところから追求が始まったのですが、掘り下げていくとそこにとどまらない疑惑がいくつも出てくるようになったのです。

 

 

いくつかあげると、反社会的勢力の方が招待されていたのではないかという事、行政処分を受けたジャパンライフの経営者がその翌年に首相枠で呼ばれていたのではないかという事、そのイベントに付随して開催された前夜祭で後援会のメンバーの参加費を一部安倍事務所が補填したのではないかという事などそのほかにもたくさん出てきています。

 

 

しかも、そのあとの政府の対応がさらに疑義を深める展開となっています。

問題があまりに多いので野党が参加者の名簿を出すようにといったら「シュレッダーで破棄した」という「証拠隠滅」としか思えないような答弁を菅官房長官が行ったのです。

 

政府側はなんとか時間を稼いで逃げ切りを図ろうとしているのだと思われますが、ここで「また」よくわからない考えをする層が現れました。

その層とはこういった政府の対応を批判するのではなく、「野党がだらしない」というおきまりのテンプレートを発動する方々のことです。

 

 

結論から言うと野党がだらしないのではなく、もちろん自民党議員および高級官僚がだらしないのですが、なぜそうなのかについて猿でもわかるように記事を書かせていただきました。

 

「野党がだらしない」論を掲げる人の世界観

まず、このような政府および高級官僚のデタラメな答弁を前にして「野党がだらしない」と考える人の考えを補足します。

 

色々な方向性からこの「野党がだらしない」というフレーズは愛好されていのですが、この後によく続けられる「ほかに議論をすることがあるだろう」という言葉と「野党もブーメラン」という二つの言葉がその意図することをほとんど物語っています。

 

「ほかに議論する事がある」という考えは法の支配の否定

この「野党がだらしない」ということを述べている人々の発言を追いかけていくと、

 

「北朝鮮がミサイルを発射しており安全保障についての議論が急務、こんなことをしている場合ではない」

「激動の世界情勢の中では憲法改正の議論が急務」

「一日何億円も人件費がかかる国会で一回5000万円のイベントに時間を費やすべきではない」

 

という既視感のあるテンプレートが並んでいます。森友の時と同じです。

 

 

さて、この考え方を許容するとなると法の支配が終了します。

何故なのかわかるように猿でもわかる例を挙げます。

 

 

例えば1万円万引きした人がいたとしましょう。

それを捕まえようと警察官を出動させるとそれを超える人件費が発生する可能性が極めて高くなります。

仮に10分以内に捕まえても取り調べの時間や調書の作成をする時間などを考えれば1万円では全くペイしません。

 

そこで、警察官が「ほかに追いかけるべき案件があるので逮捕するのをやめよう」「万引き犯を追いかける奴らはだらしないなあ」「盗まれた店の店主に一万円渡してなだめてこい」と言い始めたらどうなるでしょうか。

 

 

警官の残業が減って人件費が多少抑制できるのかもしれませんが、少なくとも軽犯罪のほぼ全てが取り締まれなくなります。

 

そうすれば、秩序が崩壊し、犯罪し放題の世の中になるのは想像に難くありません。

また、「どこまでなら悪いことをやっても取り締まられない」という悪徳を栄させることにもなるでしょう。

 

 

今「ほかに議論をする事があるだろう」と言っている面々は、言葉は悪いですがこれほどまでに低レベルのことを言っているのです。

 

「野党はブーメラン」も法の支配の否定

続いての「野党がだらしない」論についてくるのが「野党もブーメラン」というものです。

 

この桜を見る会についていうと、追求当初からネットでは「民主党時代も〜」「野党の〜議員も過去に家族を呼んだりしていた・・」といった言葉とともに「野党もブーメラン」という得意げなネットユーザーが散見されます。

 

突っ込んでるのは共産党がメインなので「ブーメランではない」というのはさておき、この「野党もブーメラン」論もまた法の支配の否定であると言わなくてはなりません。

 

その理由をまた猿でもわかるように例を挙げて説明します。

 

ある人が1万円を万引きしました。

そして、あえなく警官に取り押さえられます。

 

そこで「〇〇というやつも万引きしていた」と言い出したら警官はなんというでしょうか。

「そうかしゃあないな。じゃあお前も許してあげよう」というのでしょうか。

 

ありえません。

 

「そうか。その人についても調べるけど、まあとりあえず後の話は署で伺います。」と言われて終わりでしょう。

 

例にして見るとこんな馬鹿げたこともないものですが、「野党がだらしない」という言葉が大好物の面々はこのような小学生以下の論理に乗っかっているのです。

 

 

「野党がだらしない」のではなく、与党に問題があると言える根拠

ここまで、森友の時と似たような記事を書いてます。

 

ただ、これは私に芸がないというよりも、反省していないので、結局同じことが繰り返し起きているということなのです。

 

 

少なくとも言えるのは、「野党がだらしない」にしても自民党と関係する官僚よりはマシです。

自民党がだらしないのです。

 

その根拠は日本国憲法からも言えます。

第66条の3項には下記のような記述があります。

内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

日本国憲法 第66条3項

 

内閣は国会に対して自らの仕事について責任があるということをここでは述べているのです。

 

つまり、内閣は国会の呼びもとめに応じて自らの業務について説明を求められれば国会に出向いて説明をしなければならないのです。

だからこそ、国会議員ではない官僚がしばしば国会で答弁しているのです。

 

「野党がだらしない」論というのは、日本国憲法に記された立法府と行政の関係性について確信犯的に無視しているか知らないのかのどちらかでなければでてこない考えなのです。

 

よく「野党は疑うなら証拠をだせ」という意見も飛び出すのですが、これもすでに引用済みの日本国憲法を全く無視した意見です。

立法府と行政の関係性においては、「行政の側に説明の義務」があるのです。

 

今回については、行政のイベントである「桜を見る会」が色々と疑わしいので説明をしろ、名簿を出せと言われて「プライバシーがあり・・」「シュレッダーにかけたので・・・」「反社の定義は流動的・・・」という支離滅裂な答弁を首相・官房長官・官僚がしているのです。

 

どちらがだらしないかはいうまでもありません。

 

泥棒と変わらない連中に防犯対策はできない

しかも行政の側は今回の件についていえば、虚偽答弁の連続です。

詳細は下記の記事に預けますが、首相は「とりまとめに関与していない」と言いながらのちに「意見を言うことはあった」と述べました。

菅官房長官は1万5000人の招待者は国会議員関係者であると述べながら、のちに総理夫人枠があったことが明らかになりました。

 

『野党、「虚偽答弁」「私物化」に重点 桜を見る会、攻勢に拍車』時事ドットコム 2019年11月21日

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019112001080&g=pol

 

他にも担当官僚が嘘をつくなどもあり、正直ここまで嘘をついている時点で内閣総辞職ものです。

 

 

安倍政権はなぜか外交が上手だと言われていますが、ここまで嘘をついているのであれば、「成果」とされているものも虚偽の可能性がありますし、全ての信用について回ります。

 

あからさまに嘘をつく総理大臣に「ほかのことを議論させる意味があるのか」という話でもあります。

 

事態を理解すればするほど「野党がだらしない」というレベルの話ではなく、「確信犯的に嘘をつく集団が権力の中枢にいてもいいのか」「求められた資料を急に破棄するような連中が信用できるのか」といったレベルの話です。

 

 

泥棒に防犯対策をさせてもいいというのであればもちろん安倍政権はこのままでよく「ほかに議論することがあるだろう」で一蹴すればいいでしょう。しかしながら、そんなかたは多くないと私は思っています。

 

 

「野党がだらしない」論はアーレントの言葉を借りれば「自己欺瞞」でしかありません。

つねづね秘密や故意の欺瞞が幅を利かせている政治の領域では、自己欺瞞は一段と危険である。自己欺瞞を犯している欺瞞者は、自分の聴衆との間のつながりばかりでなく、現実の世界との接触も全て失ってしまう。

『暴力について』ハンナ・アーレント(2000)みすずライブラリー

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